山本一力 【あかね空】 文藝春秋 H13年
2002年の直木賞受賞作。
背景となる年代は江戸中期寛政の改革の頃。
京都の豆腐屋で修業のあと、江戸深川で豆腐屋を開業する永吉とその妻、子どもたち、家族を取り巻く事件や家族を支える人々を描いた人情物語。
家族間の愛憎やそれぞれの心の葛藤が温かみのある視点で表現されている。
市井の人々の暮らしを描いた時代小説はあまり読んだ経験がないので、この小説は新鮮な読後感をもたらした。
現代小説では、日本人の心の深層に流れる「人情」という情調を描くことはなかなか難しい。
時代小説だからこそ、貧しい暮らしの中で他人に金銭を施したり、困っている人に無償で力を貸すことなどの、人としての自然の営みをおおらかに描くことが出来るのではないだろうか。
この物語の中にも、そのような気の良い人物が数多く登場する。
もちろん親切な大家さんや長屋の店子も........
ということで『夫VSたな子』の物語のその後。
古びた実家を『ゼロゼロ物件(敷金・礼金無し)』で貸家にしたところ、やっと我らのチェックにパスして入居することになったたな子嬢。
しかし早一ヶ月目から家賃が支払われず困惑したことは既に書いた。
参考→【夫の苦悩】【春の嵐】
なんとたな子嬢、約束通り給料日に一ヶ月分入金してきて、ひとまず我らは胸をなで下ろした。
しかし前家賃制なので、まだ一ヶ月分が未払いのままだ。
たな子嬢の月収では、家賃二ヶ月分を一気に支払うことがいかに困難なことかは推測できるが、何としても今月中に未回収分を回収しなくてはならない。
どうしたらよいだろうと考えていたら......夫が突然
「このままではたな子も大変だろうから、前家賃制を破棄する!」
と言い出し、さっそくたな子に電話をかけた。
確かにたな子嬢はとても楽になる......。
夫のこの裁量を、優しい大家の人情深い行為と見るか?
または戦わずして白旗をあげた大家の権利の放棄と見るか?
電話口のたな子嬢は、この申し出に一瞬息を呑んだ。
しかし、このたな子嬢は案外立派な店子である。
「心配かけてすみません。遅れている家賃は必ず今月中に払います。」
と夫の申し出を断ったのだ。
そして、今まで狭いアパートで苦労してきたが、現在は子どもたちに独立した子ども部屋を与えることが出来、みんなのびのびと快適に暮らしていると、夫が一番喜ぶことを言ってくれたのである。
そして.......数日前、たな子嬢は約束を守り残りの家賃を入金した。
※ご心配をおかけしました。今月はなんとかクリアしました。
我らの心も『あかね空』です。
良きお付き合いが続きますように。
『あかね空』・・私はあまり人情物を読んだことがないのですが、時代物で人情物というと落語を想像しますね。ある程度nihaoさんの情報で読んだ気になってますが、一度私も読んでみようかと思ってます。楽しいのが好きです。
人情は人情を呼ぶ、という事でしょうか。
普通なら夫さまの「前家賃を廃する」という申し出に飛びつくところでしょうが、約束通りに入金してくれたとは
大家と店子の良い関係を築いていけそうで良かったですね。
きっと、ご主人の思い切った行動に、相手の方もこんな良い貸家をでてはもったいないと思ったかも・・・ね。
ここまで我慢したご主人が粘り勝ち?かしら?
私はnihaoさんのギャラリーを見損ねて、少し残念な気分ですが・・・。ふふっ。
このまま順調に続く事を祈りたいです。
一人の時は毎晩本を読んでいたのに、ここずっと読めません。
主人も同じ事言ってました。
それに困った事に二人共、体重が増えてしまいました。
私も人情ものはほとんど読みません。
人情より殺伐とした刃傷小説専門です(笑)
でも単純なストーリーの中に、忘れていた人の世の機微のようなものを見つけてホッとしました。
こまめさんの仰る通り古典落語に通じる世界だと思います。
引っ越しでお金を使って身動きとれなかったのかもしれませんが、それなら正直に言ってくれればいいのにね。
「前家賃を廃する」という申し出を断ったのは意外でしたが、家賃を払う気持ちはあると解釈したいです。
確かにそうだと思います。
夫は昔から我慢強いところがあるから(笑)
私なら騒ぎすぎて、解決するものもしなくなってしまいそうです。
でもたな子嬢のお子さんたちが、のびのび快適に暮らしてくれていると知り、これは何より嬉しい言葉でした。
婆婆も喜んでくれていると思います。
今後も順調にいくことを願うのみです。
すずめさん、ご主人が戻ってこられて、毎日食卓に豪華手料理が並びすぎているのではありませんか?
今までの不憫さを取り戻すかのように、最初のうちは、つい張りきってしまいますものね。
ウチもそうでした......。
体重増加にご用心!
ところで店子問題、気になっていました。
とりあえずは解決してよかったですね。
たな子嬢もきっと心苦しく思っていたのではないでしょうか・・・
その方を知らないのでうかつなことを言っては叱られそうですが、そう思いたいです。
でも、さすがnihaoさんですね。
ゆっかりんさんのコメントのお返事にある
「私なら騒ぎすぎて、解決するものもしなくなってしまいそうです」
って、さりげなく夫をたてるできた嫁という感じ♪ (^。^)
子供を育てながら働き、自分で生計立てているなんて本当に豪いですね。私の職場にもけっこういます。ついつい、親切心が出るのも確かですね。何はともあれ無事解決でよかったですね。