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マダムnihaoのフレッシュ搾りたてブログ。お気軽にお立ち寄りください。

長いタイトル

2013-11-12 21:26:00 | 読書
          

 忘れた頃にやってくるもの。それは天災ばかりではありません。
図書館に予約していた村上春樹の最新作『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年
待ち本も忘れた頃にやってきます。四ヶ月待たされましたが早い方だと思います。
本に賞味期限はないとは言え、ニュースにもなった話題作なので今さらのブックレビューはちょっと恥ずかしい。

 村上作品は、平易な名文で入り口(とっかかり)は簡単ですが、読み進むにつれ難度が増し出口を見失うことがよくあります。
しかしこの作品は、迷うことなく最後までたどり着ける作品でした。
現実世界に焦点を置いた自己の喪失から再生に至る物語です。

 ご承知のようにタイトルが長い。
その昔「主なる登場人物」のページから、その作品のあらすじを推理するゲームが流行りました。
いえ、流行ったと言ったってnihaoのひとり遊び。私ひとりがハマっていただけのことですが。
しかしこの作品なら、タイトルからあらすじを推理することができそうです。
問題は「色彩を持たない」の解釈だけです。

 ・・・ある日突然、自分という存在の輝きを見失った(色彩を持たない)田崎つくるが、1年かけて自分探しの旅(巡礼の年)に出る物語・・・こんな感じ?

 私の予想はさほどずれてはいませんでしたが「色彩を持たない」の本当の意味を知ってギャフン。
正解は・・・田崎つくるを取り巻く友人たちが、松、海、根、埜、田のように皆色彩を持っている名前なのに、彼の名前だけが色彩を持っていないということです。
そのことにどれほど重要な意味が隠されているのか、私の頭では最後まで理解することは出来ませんでした。

 改めて簡単にあらすじを述べると
・・・かって親友であった色彩を持つ名前の友人たちから、一方的に友情関係を絶たれた田崎つくるが、その本当の理由を知るために友人たちのもとを尋ねる物語・・・です。

 巡礼とは、自らの「色」を取り戻すための田崎つくるの旅(闘い)のことなのでしょう。
いろいろな読み方が出来る作品ですが、悩み多き若い読者にはセラピー効果があると思います。
私は村上作品の、言葉が紡ぐ音楽と非日常的なメタファーの世界を楽しむために読みます。


 ところで歌野晶午さんも『ジェシカが駆け抜けた七年間について』や『葉桜の季節に君を想うということ』など、タイトルの長い作品が多い作家です。
これらは長いけれども予測のつかない謎に満ちていて、しかもそこはかとなく美しい日本語の余韻を感じさせます。
歌野晶午さんはnihaoの中ではタイトル名人です。もちろん作品もタイトル以上に面白い。

 世界で一番長いタイトルとして有名な小説は、イギリスの作家デフォーの『ロビンソン・クルーソー』です。
正式なタイトルは
自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述

 タイトルが作品のダイジェストを兼ねているので、読まなくても読んだような気分にさせてくれます。

 そう言えば最近AKB48のなが~い新曲のタイトルが話題になりました。
鈴懸(すずかけ)の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの

 ここまでくると奇をてらっているのか話題作りかのどちらかなのでしょう。
この何か意味ありそうで全くないラノベ風のもったいぶったタイトル、私はくすぐったいような違和感しか感じません。









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6 コメント

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長い・・・ (すずめ)
2013-11-13 17:08:05
タイトル?なのと思うくらい長いですね。
タイトルだけで内容がわかるくらい。

最近のテレビ番組にもものすごく長~い番組名がありますね、見なくても内容がわかるような。

孫ちゃんのお洋服を作ったり、読書したり、充実した毎日ですね。
私は・・・なんだか落ち着かなくて、時間はあるのに。
あれやろうかな、これやろうかなと思うだけで一日過ぎてゆきます。
なんかやらねば、と思う気持ちばかりで、最近はちょっと焦り気味。
せっかく賃貸だけど気にせず居れる家ができたというのに。
困ったものです。
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すずめさんへ (nihao)
2013-11-13 20:32:54
自分のブログ記事にタイトルをつけるのに、やたら苦労することありませんか?
私はどうもタイトルをつけるのが苦手です。
タイトルが先にうまく決まると本文の方も結構スラスラと出てくるのですが・・・

>充実した毎日ですね
う~ん、そうでもないです。
今年は読書の時間を減らして手仕事の時間を増やそうと考えていたのですが
増えたのは昼寝の時間ばかりです(笑)

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Unknown (およよ)
2013-11-14 08:22:11
>タイトルをつけるのが苦手
わたしも苦手です。学校の作文なんかも…

村上作品は読まない(読めない?)ので「色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年」このタイトルは
色盲の人が48か所巡りっぽいことをして開眼して行く話だとばっかり・・・アハっ(*^。^*)

ところで急に寒くなりましたね。
読書に、縫製にコン詰めすぎて風邪など召されませんように

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およよさんへ (nihao)
2013-11-14 18:13:30
学校の作文の時間すごくイヤでした。
原稿用紙に名前だけは書くもの、いつまでたってもタイトルと本文が浮かばず
どんどん時間が過ぎて行き・・・作文は学校の悪夢のひとつです。

>色盲の人が48か所巡り
あはっ、ストレートな予想ですね。
お洒落な村上春樹もおよよさんには適わない(笑)
村上作品は北京の書店でもベストセラーになっていましたよ。
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Unknown (うらら)
2013-11-15 13:34:04
>入り口は簡単だけれど、読み進むにつれ難度が増し出口を見失う
村上作品について、分かりやすい上手い表現ですね。

“鈴懸(すずかけ)の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの”
こんな長いタイトルの歌が出たのですか!
とても覚えられません。

すずめさんのコメント「充実した毎日ですね」に、「う~ん、そうでもないです」と返してらっしゃいますが、私もnihaoさんの毎日は充実しているように思ったのですが。
読書に手仕事に、もちろん主婦としての家事もこなして。
案外nihaoさんは欲が深いのでしょうか。

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うららさんへ (nihao)
2013-11-15 17:23:10
このところ雫井 脩介さんの本を集中的に読んでいますがなかなか面白いです。

充実した生活を送るために、決してしてはならない悪習慣
●だらだらとテレビを見る ●目的のないネットサーフィン ●昼寝 ●衝動買い
とかありまして、私はほとんど当てはまっていて、良き人生を過ごしている実感はとても持てません。
充実した生活というのは、何かをすることではなくもっと精神的というか心の有り様に関わることなのかもしれませんね。
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