マーシャル諸島のアバッカ・アンジャイン・マディソン元上院議員は、水爆実験を行った米国が、特にロンゲラップ島民をモルモットのように調査したと指摘。

2024-08-04 10:04:58 | しらなかった

2024年8月4日(日)

核なくし核戦争の危険止めよう

原水爆禁止2024年世界大会・国際会議

 原水爆禁止2024年世界大会・国際会議が3日、広島市内で始まりました。第1セッション「被ばく者の声を世界に」、第2セッション「核兵器のない平和で公正な世界を」で、海外代表や被爆者らが核被害の告発、大軍拡が進む世界情勢と核兵器廃絶に向けた取り組みを交流しました。

第1セッション 被ばく者の声を世界に

隠ぺいも差別も許さぬ

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(写真)「黒い雨」の降雨地図を示しながら発言する高東征二「黒い雨」被害者を支援する会事務局長=3日、広島市中区

 第1セッション「被ばく者の声を世界に」では、日韓の被爆者や「黒い雨」被害者、核実験被害者らが被害の実相とたたかいを訴え、国際法の専門家が核被害者支援の課題について報告しました。

 日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市(すえいち)事務局長は「今、核戦争が起こされるのではないかという恐怖にかられている」と切り出しました。長崎での被爆体験を語り「原爆は人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許さない兵器だ」とのべ、「核抑止」論は「核脅し」論以外の何物でもないと批判しました。

 広島で被爆した韓国原爆被害者協会釜山(プサン)支部の朴貞順(パク・ジョンスン)さんは、村が全滅し「地獄だった」と告発。韓国に逃れたものの、日本で生まれた朴さんには見知らぬ国で言葉もできず、両親は病気がちに。「原爆じゃなかったら」との思いが募ると語り、「核兵器を世界からなくしてほしい」と訴えました。

分断を告発

 広島の「『黒い雨』被害者を支援する会」の高東征二事務局長は、「黒い雨」被害者が被爆者健康手帳の交付を求めて提訴し、広島高裁で勝訴をかちとるまでのたたかいを報告。原告46人が第2次訴訟を進めているとのべ「内部被ばくを無視して、被害を小さく見せようとしていることを許すことはできない」と強調しました。

 長崎総合科学大学の大矢正人名誉教授は、「黒い雨」広島高裁判決の立場に立てば、長崎の「被爆体験者」も「被爆者」であることは明白だと指摘。「政府・厚労省による広島と長崎の分断を許すことはできない」と訴えました。

 マーシャル諸島のアバッカ・アンジャイン・マディソン元上院議員は、水爆実験を行った米国が、特にロンゲラップ島民をモルモットのように調査したと指摘。マーシャル諸島島民の多くが死に、がんにかかり、今後もがんと診断される人は増えるだろうと話し、「手をとりあい、将来の世代と地球のために、核兵器の存在そのものを廃絶しよう」と呼びかけました。

条約を力に

 高知の「太平洋核被災支援センター」の橋元陽一副代表は、ビキニ事件で放射能に汚染されたマグロを放棄した漁船は1000隻に及び、3分の1が高知県の船だと指摘。1万人を超えるマグロ漁船員の健康調査や救済が見捨てられ、被ばくの実態が隠ぺいされてきたとのべ、元漁船員らが裁判をたたかっていると報告しました。

 オーストリアのトーマス・ハイノッチ大使は、核兵器禁止条約の第6条の被害者援助と環境修復、第7条の国際協力と支援について詳述。第6条第1項は、被害者への援助が十分で差別のないものでなければならず、「黒い雨」被害者のような特定グループに対する差別は許されないとしていると指摘しました。

第2セッション 核兵器のない平和で公正な世界を

世論と運動がカギ握る

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(写真)核兵器のない平和で公正な世界にむけ、活発な議論が交わされた国際会議第2セッション=3日、広島市中区

 第2セッションで、米国の平和・軍縮・共通安全保障キャンペーンのジョゼフ・ガーソン議長は、ウクライナやガザの二つの戦争や台湾、南・東シナ海、朝鮮半島などの対立が「核戦争に発展する危険がある」と警告し、「現瞬間は1950年代の歯止めない核軍拡競争の時代を思い起こさせる」と指摘しました。バイデン現政権やトランプ前大統領も核軍拡の路線を持つ中で、米国では核軍拡の悪循環の脱却を求める「瀬戸際から引き返せ」キャンペーンへの支持が広がり、全米市長会議が核兵器廃絶の声明を出すなど「突破口」も開かれていると報告しました。

若者が活動

 英国の核軍縮運動(CND)のケイト・ハドソン事務局長は、NATO首脳会議で、▽米長距離ミサイルのドイツ配備▽ウクライナによるロシア国内の標的への攻撃承認―を決めたことで「第3次世界大戦の危険が迫っている」と警告。政権交代で生まれた労働党政権も「NATO、核兵器、戦争、軍事費増大を熱心に進めようとしている」と批判しました。一方でガザの平和を求める若者の活動が広がり、米国が新型核兵器を持ち込もうとするレイクンヒース空軍基地での抗議活動は大きな支持を集めたと報告しました。

 スペインから参加した核軍縮同盟のマリベル・エルナンデス氏は、1966年に核爆弾を搭載した米軍機がスペインで事故を起こし、核汚染が発生した事件に言及。当時の独裁政権下で、事故の真相究明が置き去りにされたと指摘しました。今の政府も核兵器禁止条約に背を向けているなか、昨年、スペインの諸団体63団体が結集し、核軍縮を求め、政府に核兵器禁止条約調印を迫るために「核軍縮同盟」を発足させたことを紹介。6月には、バルセロナなど100都市で禁止条約支持と政府に条約調印を求める決議を上げさせる成果も達成しました。

署名を推進

 韓国の韓信大学客員研究員の李俊揆(イ・ジュンギュ)氏は、北朝鮮が「核武力の高度化」と先制攻撃の方針を打ち出し、米の先制攻撃戦略とぶつかり合う構図が生まれていると警告。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、韓米同盟に基づく核の傘=拡大抑止の強化を進めていると指摘しました。朝鮮半島では「敵対的」な関係から「平和と共存の二国間関係」への変革に取り組み、「この地域で対話・協力のための多国間の国際的枠組みが求められている」と述べました。

 日本原水協の安井正和事務局長は、日米軍事同盟の大変質が進む中で、「カギを握るのは世論と運動だ」として、来年の被爆80年に向けて、「非核日本キャンペーン」を進めていると述べました。来年8月末まで、核兵器禁止条約加盟を求める署名活動や、核被害の実相を伝える活動に取り組もうと訴えました。

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