【社説】ハンギョレ新聞
荒波の朝鮮半島、再び「金大中路線」から答えを探そう
今年は、金大中(キム・デジュン)元大統領の生誕100年になる年だ。金元大統領は1924年1月に新安(シナン)荷衣島(ハイド)で生まれ、民主主義と人権のために闘争した「行動する良心」として生涯を過ごし、2009年8月に逝去した。全世界を二つに分ける「新冷戦」と殺伐とした南北対立で、故人が思い描いた「正義が川のように流れ、統一に対する希望が虹のように浮び上がる国」(1998年大統領就任の辞)の夢はますます遠ざかっているようにみえる。金元大統領の遺志を受け継ぐ私たちは、対話と相互尊重の精神を通じて米中と南北が共存する「平和な東アジア」を作ることができるという確信を持ち、軋轢(あつれき)と対立を止める契機を作らなければならない。
イム・ドンウォン元統一部長官は21日、ソウルプレスセンターで開かれた「金大中誕生100周年記念フォーラム-荒波の朝鮮半島、大韓民国の進むべき道を問う」(ハンギョレ新聞社主催、金大中平和センターなど主管)で、「平和に向けた金元大統領の努力は、我々が直面している今日の難関を克服するための道しるべになるだろう」と述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対しては、「光復節記念祝辞で示した統一論は、平和ではなく吸収統一を進めるという意味だ」としたうえで、「戦争につながる危険性を排除できないため、決して受け入れてはならない」と語った。
金元大統領は冷戦時代、戦争抑止のための「周辺4大国(米国、ソ連、中国、日本)安全保障論」(1971)と、南北が平和共存と交流を経て統一に進むべきだという「3段階統一論」(1973)を主張した。朝鮮半島の平和と統一のためには「周辺国の協力」が必要であることをよく知っていたのだ。朝鮮半島の平和における最大の障害物である北朝鮮の核問題についても、「朝米敵対関係の産物」であるため、この問題に決着を付けなければ解決できないと考えた。金元大統領の確固たる方針は、ついにビル・クリントン米大統領を突き動かし、太陽政策に弾みをつけた。
不幸にも、2010年代に入ってから、「浮上する中国」と「核開発を継続する北朝鮮」に対抗するためには、歴史問題は後回しにして韓米日軍事協力を進めるべきと主張する反動の流れが続いてきた。尹錫悦政権は日本の安倍晋三元首相が主導したこの流れを盲目的に踏襲している。「金大中精神」は薄れ、力で相手を屈服させるという「安倍路線」が時代を支配している。これを止めるためには、11月に選出される新しい米大統領を説得し、米中、朝米の対話の牽引役を担わなければならない。簡単ではないが、決して諦められないことだ。