2月6日公開
1月30日、政権2年目の施政方針を示す一般教書演説を行ったトランプ大統領。議会本会議場で上下両院の議員などを前に行った1時間以上にわたる演説で、税制改革などを就任後1年の成果として訴えるとともに、公正な貿易やインフラ投資の実現を目指す考えを強調。外交・安全保障面では北朝鮮の核ミサイルの脅威や人道上の問題を強調して非難し、北朝鮮への対応に重点的に取り組む姿勢を示しました。ことし11月に政権への審判が下される議会の中間選挙が控えていることから、政権の実績や公約の実現を目指す姿勢をアピールしたと見られます。
一般教書演説を、要旨や日本語訳・英語全文で掲載。演説に対する反応や解説も。
一教書演説 要旨でザッと内容把握
貿易問題 中国念頭に「公正な貿易を実現」
貿易問題について「アメリカは何十年もの間、われわれの繁栄や雇用を奪ってきた不公正な通商政策をついに転換した。経済的に屈する時代は終わった」と述べ、中国による知的財産の侵害をめぐる問題を取り上げて、公正な貿易を実現する考えを強調。
一方、TPP=環太平洋パートナーシップ協定についてトランプ大統領は、1月下旬にスイスで開かれたダボス会議では、再交渉を前提に復帰する可能性について言及していたが、一般教書演説では触れず。
米国内投資 トヨタとマツダに言及
「トヨタ自動車とマツダはアラバマ州に工場を建設する」と述べ、日本の自動車メーカーを例に挙げて、アメリカ国内への投資が活発になっていると強調。
安全保障 「核戦力を近代化して再建」
外交・安全保障政策をめぐっては、「われわれはならず者国家、テロリスト集団、そして、われわれの国益や経済、価値に挑む中国やロシアといったライバルに直面している」と述べ、中国とロシアを名指ししてアメリカの競合勢力だと指摘。
そのうえで「これらの危機に立ち向かっていく中で弱さが紛争へとつながり、比類なき力が最も確実な防衛の手段となることをわれわれは知っている」として、軍事力の強化に取り組む姿勢を強調した。
中でも「核戦力を近代化し再建しなければならない」と述べて、老朽化が進むアメリカの核戦力の近代化を促進し、強化していく必要があると主張。
対ISの成果「誇り」 グアンタナモ閉鎖せず
最優先課題の1つに掲げてきた過激派組織IS=イスラミックステートへの対策について、「1年がたってイラクやシリアなどでISが支配してきた地域の100%近くを解放したと報告できることを誇りに思う」と成果を訴え、壊滅に向けた対策を続ける方針を強調。
ISの指導者バグダディ容疑者が、かつてイラクでアメリカ軍が運営していた収容所に一時拘束されていたことを念頭に、「われわれは過去にバグダディを含む多くの危険なテロリストを愚かにも釈放してきた」と述べた。
そのうえで、テロ組織と関係があるとされる外国人を拘束してきたキューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ収容所について、「たった今、マティス国防長官に、グアンタナモの収容所の使用を続けることを指示する大統領令に署名した」と述べ、閉鎖の考えはないと強調。収容所の閉鎖を目指したオバマ前政権との違いを鮮明にした。
エルサレム問題 決定に反対した国々をけん制
中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めたことにも言及。去年12月に国連総会で、エルサレムの地位の変更は無効だとする決議が賛成多数で採択されたことについて、「賛成した国の中には多額の援助がアメリカ国民の税金から送られているところがあるが、援助はアメリカの敵に送るべきではない」と、みずからの決定に反対した国々に対し援助の停止をちらつかせてけん制。
イランとの核合意 改めて非難
イランで一時広がった反政府デモについて、「イランの人々が汚職にまみれた独裁による犯罪に対して立ち上がったとき、私は黙っていなかった」と述べ、反政府デモを支持する考えを強調。さらに「議会にはひどいイラン核合意の根本的な欠陥に取り組んでほしい」と述べ、オバマ前政権がヨーロッパなどの国とともに結んだ核合意を非難し、イランに敵対する姿勢を改めて示した。
不法移民対策強化の必要性訴える
移民政策について「何十年もの間、麻薬やギャングがわれわれのぜい弱な地域社会に入り込むのを許してきた」と指摘。不法移民対策を強化する必要性を訴えた。
メキシコなどから子どもの時に親に連れられてアメリカに不法入国した若者らおよそ180万人については、強制送還せずに救済し市民権を付与する一方、メキシコとの国境沿いに壁を建設するほか、希望者が抽選でビザを取得できるプログラムは廃止すべきだとして、与野党に必要な法案を可決するよう求めた。
内政 オバマケア見直しで成果強調
本来は鎮痛剤として使われる「オピオイド」と呼ばれる薬物を乱用して中毒となる人がアメリカで後を絶たないことから、対策に取り組む考えを示した。
オバマ前政権が導入した医療保険制度、いわゆるオバマケアについては、税制改革に併せて一部を見直し、個人の保険加入の義務を廃止したと訴え、みずからの成果として強調。
一般教書演説 全文日本語訳で読み込む
下院議長、副大統領、議員の皆様、大統領夫人、そして国民の皆様。
私がこの荘厳な議場の、この演壇に立ち、アメリカ国民を代表して国民の皆様が抱える懸念、希望、夢について語ってからほぼ1年になります。演説をしたあの夜の時点で発足したての政権は、既に迅速な行動を起こしていました。それまでなかった楽観主義が全米に広がり始めていました。
その日から、私たちは、すべての国民のためにアメリカを再び偉大な国にするために明確なビジョンと公正な使命感をもって、日々、前進してきました。
この1年で、今の政権は信じられないほど大きく前進し、驚くべき成功を収めました。予期した課題と想像もつかなかった課題の両方に直面しました。私たちは勝利の高揚感を分かち合い、苦難の痛みを分かち合いました。洪水、火災、嵐を耐え抜いてきました。そうした経験を通じて、私たちは国民の気高い精神と気概を目の当たりにしました。
アメリカが試練に直面するたびに英雄が生まれ、アメリカ国民として、われわれは何ができるかを考えさせられました。
壊滅的被害をもたらしたハリケーンに襲われた後、ルイジアナ州では、船の所有者たちによるボランティア団が、住民の救助にあたりました。
ラスベガスの乱射事件では、銃弾が降り注ぐ中、見知らぬ人同士がみずからの体を盾にして互いに守りあいました。
また、沿岸警備隊下士官のアシュリー・レパートさんの話も聞いています。アシュリーさんは(妻の)メラニアと一緒にこの議場にいます。アシュリーさんは、ハリケーン・ハービーが襲来した際、ヒューストンに向かった第1陣のヘリコプターに搭乗していました。アシュリーさんは、18時間もの間、風や雨、電気が流れる電線や深い水に阻まれながら40人もの住民を救出しました。アシュリーさん、私たちは全員、あなたに感謝しています。本当にありがとうございました。
消防士のデービッド・ダールバーグさんのことも聞きました。デービッドさんもこの議場にいます。カリフォルニアで、サマーキャンプに参加していた60人近くの子どもたちが山火事によって身動きがとれなくなった時、デービッドさんは燃え盛る炎に屈することなく、子どもたちを救出しました。
今もハリケーン被害の復興の途中にあるテキサス、フロリダ、ルイジアナ、プエルトリコ、バージン諸島の皆様、私たちはあなた方とともにあります。力を合わせれば、必ず難局を乗り切ることができます。
デービッドさん、そしてカリフォルニアの勇敢なみなさん、ありがとうございました。デービッドさん、ありがとうございました。すばらしい働きぶりでした。
この議場もこの1年、試練にあいました。今、この議場には最も強靭な精神を持つ議員が、来ています。体に銃弾を受け、瀕死のけがを負いながら3か月半後には職務に復帰しました。その議員とは、今や伝説的な存在となったルイジアナ州選出のスティーブ・スカリス下院議員です。スティーブさん、皆さんあなたが大好きなようですよ。
スカリス議員をはじめ、多くの命を救ってくれた議会警察、アレクサンドリア市警察、医師、看護師、救急隊員のみなさんに深く感謝しています。今、議場にはあの場にいた人たちもいます。
あの恐ろしい発砲事件の後、私たちは団結しました。民主党議員や共和党議員としてではなく、国民を代表する議員として団結しました。しかしながら、悲劇が起きた時だけに団結するだけでは不十分です。私は今夜この場で、党派の違いを超えて共通項を見つけて団結し、公約を果たそうではないかと訴えたい。それが重要です。ここにいる議員たちは、国民のために働くために選出されたのです。
この1年で、国際社会は、われわれアメリカ人が世界で最も勇敢で、大胆不敵で、固い決意を持った人たちだということを知ったと思います。アメリカ人はそこに山があれば登ります。辺境があれば、横断します。困難に直面すれば、克服します。チャンスがあれば、つかみます。
まず、今夜は、何をおいても、アメリカ国民の団結が強いのと同じように、アメリカ合衆国の団結も強固であるということを認識しましょう。そして、私たちは力を合わせて、安全で強く、誇り高いアメリカを作っています。
雇用創出 税制改革
大統領選挙以降、私たちは240万人の雇用を創出しました。製造業の分野だけで、20万人の雇用を創出しました。とてつもなく大きな数字です。長い間、賃金が伸び悩んでいましたが、ようやく、賃金が上がってきています。
失業保険の申請は、45年ぶりの低水準にあります。私は、それを誇りに思っています。アフリカ系アメリカ人の失業率は、これまでで最も低い水準にあります。ヒスパニック系アメリカ人の失業も、最も低い水準にあります。
中小企業の景況感は、最高水準に達しています。株式市場は、最高値を更新し続け、わずか1年で時価総額が8兆ドルも増えました。確定拠出年金401k、退職、年金、大学進学のための貯蓄口座も大きく伸びています。
11か月前にこの演壇に立ってアメリカ国民に約束したように、私たちは、アメリカ史上最大の税制改革を実施しました。
私たちが実施した大規模減税により、中間層と中小企業は大きな恩恵を受けます。勤勉に働く国民の税負担を減らすために、私たちは納税者の基礎控除を2倍にしました。減税によって、夫婦の所得の合計のうち、最初の2万4000ドルは非課税となりました。年収7万5000ドルの平均的な4人世帯では、納税額は2000ドル減って半分になります。
旧来の破綻した税制のもとで確定申告をするのは、今年4月で最後になります。多くの納税者の手取り収入は来月から増えることになります。さらに増えるのです。私たちは、主に年収5万ドルの納税者が払わされていた過酷な税を廃止しました。これは、政府が決めた医療保険制度に加入しないという理由で払わされていた膨大な罰金のことです。私たちは、破滅的だったオバマケアの核心部分について、撤廃しました。個人が強制的に加入する医療保険はもうないのです。
私たちは、法人税を35%から一気に21%まで引き下げました。これによってアメリカの企業は国際競争を勝ち抜くことができるようになりました。こうした一連の改革だけで平均的な世帯収入が4000ドル以上増えます。大きな金額ですよ。
中小企業も大幅な減税の恩恵を受けることになり、新しい税制のもとで事業所得から20%の控除が認められました。
さて、今夜はここに、小さいがすばらしい、オハイオ州の企業「スタウブ製造社」のスティーブ・スタウブさんとサンディ・ケプリンガーさんも来ています。創設から20年になるこの会社はこの1年間、過去最高の業績を上げることができました。税制改革の恩恵を受けて賃上げを実施、新たに14人の従業員を雇ったうえ、会社の建物も増築したのです。すばらしいことですね。
この会社の社員であるコーリー・アダムズさんにも今夜、きていただいています。コーリーさんは、典型的なアメリカの労働者です。彼は働きながら高校を出たものの、2008年の景気後退で職を失いました。その後、スタウブさんに雇われて、研修を受けて溶接職人になりました。多くの勤勉なアメリカ人労働者と同じように、コーリーさんは減税で得た金を新しい家と2人の娘の教育に使う計画です。さあ、コーリーさんお立ちください。彼は立派な溶接職人ですよ。経営者からすばらしい仕事ぶりだと聞いていますよ。よかったですね、コーリーさん。
税制改革法案が可決してから、およそ300万人の労働者が既に数千ドル規模の減税の恩恵を受けています。状況は月を追うごとに、週を追うごとに、よくなっています。アップルは、国内に総額3500億ドルを投資して新たに2万人を雇い入れる計画を発表したところです。そして、つい先ほど、エクソンモービルがやはり500億ドルを投資すると発表しました。
アメリカは今、新たな時代を迎えました。アメリカンドリームを実現するうえで、今ほど最良の時はないでしょう。
今夜、自宅で、この演説をご覧になっている皆さんに伝えたい。あなたたちがこれまでどこにいようとも、そして、あなたたちがどこから来たにしろ、今こそが、あなたたちの時代なのです。勤勉に働くなら、自分の力を信じるなら、そしてアメリカを信じられるのであれば、どんな夢でも持ち、どんなものにだってなれますし、そして、私たちが力を合わせればどんなことでも実現できます。
今夜は、私たちの将来について、そして、アメリカがどのような国になろうとしているのか、話したいと思います。1つのチームとして、1つの国民として、そして、1つのアメリカの家族として、力を合わせれば不可能なことはありません。
私たちは皆、同じ家、同じ心、同じ運命、そして同じ偉大なアメリカの国旗を共有しています。
私たちは今、手を携えてアメリカの道を再発見する途上にあります。アメリカ人の生活の核心にあるのは信仰と家族であり、政府や官僚機構ではないということを私たちはわかっています。アメリカの信条は、「私たちは神を信じる」です。
私たちは、警察、軍、そしてすばらしい退役軍人を英雄として祝福します。国民は、彼らに全面的かつ揺るぎない支持を与えるべきです。
今夜は、カリフォルニア州レディングから12歳のプレストン・シャープ君に来てもらいました。プレストン君は、「退役軍人の日」であるにもかかわらず、退役軍人の墓地に国旗が飾ってないことに気づいて、これではいけないと考えました。プレストン君は、国旗を集める運動を始め、これまでにアメリカの偉大な英雄である退役軍人の墓地に4万本の国旗を掲げました。プレストン君、立派でしたね。
プレストン君をはじめとする若い愛国者から、私たちはアメリカ国民としての義務を学びます。私は、プレストン君と先ほど会ったところですが、すばらしい少年です。将来を担う人材です。プレストン君ありがとう。
アメリカという国に奉仕した兵士に敬意を表すプレストン君を見ていると、私たちは、国旗に敬礼をする理由、「忠誠の誓い」を暗唱する際に手を胸に当てる理由、そして国歌斉唱の際に誇りをもって起立する理由を思い起こすことができます。
アメリカ人は国を愛しています。政府が国民に対してそれと同じ愛と忠誠心を示すべきなのは当然のことです。この1年間、私たちは国民と政府に信頼という絆を復活させるための努力をしてきました。
最高裁判所判事
私たちは上院と協力して、憲法を原文に忠実に解釈する判事を任命しています。新しく任命した偉大な最高裁判所の判事はそうした判事の1人です。また、過去のどの政権よりも私たちは、多くの控訴裁判所の判事を任命しています。
私たちは、(武器保有の権利を認めた)憲法修正第2条を断固として守っています。そして、信仰の自由を守るために歴史的な措置を講じてきました。
私たちは、勇敢な退役軍人に対する便宜を図っています。退役軍人に医療制度における選択肢を付与しているのもそうした便宜の1つです。去年、議会は画期的な退役軍人責任法案を可決し、私はそれに署名しました。この法律が成立して以降、トランプ政権は退役軍人に当然の医療サービスを提供しなかった退役軍人省の職員1500人を解雇しました。そして、退役軍人を大切にする私たちと同じ考えを持つ有能な人材の採用を進めています。
退役軍人が納得のいく処遇を受けるまで私が止まることはありません。それは、(大統領選挙に立候補した)この偉大な旅路の出発点で、私が退役軍人に公約したことです。
政府は、すべてのアメリカ国民を尊重し、国民に対して義務を果たさなければなりません。それこそ私たちが、すばらしいアメリカの英雄である退役軍人に付与しようとしていることです。ありがとう。
正しい連邦職員にはこれを報い、国民の信頼を裏切ったり、ないがしろにしたりする職員を解雇する権限をすべての省庁の長官に付与することを、今夜、私は議会に求めます。
規制撤廃 工場建設
連邦政府の行政に責任を求めるために、この1年間、私たちは過去のどの政権よりも多くの規制を撤廃しました。
私たちは、エネルギー産業に対する戦争に終止符を打ちました。クリーンな石炭に対する戦争を終わらせました。今や、アメリカは、世界各国にエネルギーを輸出するという誇りある国になりました。
デトロイトでは、政府の規制によって自動車産業に携わる偉大な労働者が辛酸をなめてきましたが、私はその規制を撤廃しました。それによって、自動車の町が息を吹き返すことのできる状況を作りました。デトロイトは、今、復活の途上にあります。多くの自動車会社がアメリカ国内で工場を新設したり、拡張したりしています。何十年もそんなことはありませんでした。クライスラーは、大規模な工場をメキシコからミシガン州に移すことを決めました。トヨタ自動車とマツダはアラバマ州に大規模な工場を建設することになりました。しばらくぶりのことです。工場がアメリカに戻ってくるのです。
近いうちに自動車工場をはじめとするさまざまな工場が全米各地にオープンするでしょう。アメリカ人は、長い間そういうニュースを聞いていません。長い間、企業も雇用もアメリカを出て行く一方でした。今、それが猛烈な勢いで戻ろうとしているのです。企業だって経済活動が活発なところに立地したいのです。アメリカに立地したいのですよ。
アメリカは、日進月歩で進歩しています。画期的な治療法や価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品への入手を迅速化するために、去年、FDA=食品医薬品局は新薬やジェネリック医薬品、そして医療機器をかつてないほど早いペースで承認してきました。
私たちはまた、末期の患者が延命の可能性がある実験的な治療を、すぐにでも受けることができるようにすべきだと考えています。
末期患者が治療のため国から国へと移動を強いられるような状況を許しておくべきではありません。そうした患者に国内でチャンスを与えたいと思っています。議会は、こうしたアメリカの患者たちに、実験的な治療を「試す権利」を与えるべきです。
早急に取り組むべき課題の1つとして、処方薬の価格引き下げがあります。多くの他の国で、こうした薬の値段はアメリカよりずっと安価です。これほど不公正な話はないでしょう。薬の不当な値段の適正化を今年1年の最優先課題の1つにせよと、私が政権のスタッフに指示したのもそういう理由があるからです。これから薬の値段は大幅に下がるでしょう。見ていてください。
通商政策
アメリカは数十年に及んだ不公正な通商政策をついに転換しました。不公正な貿易によって、アメリカの繁栄が犠牲となり、企業は国外に逃げ、雇用と富が消失しました。しかし、私たちは一気にそれを取り戻しています。経済的敗北の時代は完全に終わりました。これからは、公正で互恵的な貿易関係を要求していきます。
私たちは、愚かな通商協定を修正し、新たな協定を結びます。新たな協定は公正で、よいものであるべきです。私たちは、貿易のルールの履行によってアメリカの労働者と知的財産を守ります。
インフラ再建
アメリカの産業の再建と同様に、老朽化したインフラの再建も重要です。
アメリカは建設者の国です。エンパイアステートビルはわずか1年で完成しました。今は、普通の道路を作る許可を得るために10年もかかるなんて恥ずべきことです。民主党、共和党の双方が協力し、安全で信頼性が高く近代的なインフラを提供することを求めます。アメリカの経済は、そうしたインフラが必要であり、国民はそれを享受する権利があります。
今夜、私は議会に対し、少なくとも1兆5000億ドルのインフラ投資法案を提出することを要請します。インフラ整備は喫緊の課題です。連邦政府の支出に応じて、州と自治体も費用を負担すべきです。加えて、民間の投資を活用することによって老朽化したインフラを恒久的に修復するべきです。私たちにはそれを実行する力があります。
いかなる法案も許可と承認に必要なプロセスは2年以内に行われ、できれば1年に効率化しなければなりません。共に取り組めば、これまでの偉大な建造物を再生することができるのです。
私たちは、アメリカ全土に新たな道、橋、高速道路、鉄道、水路を張り巡らします。アメリカ国民の心と手によって、不屈の精神でそれを成し遂げます。
すべてのアメリカ国民に勤勉な労働の尊さを知ってほしいのです。すべての子供が、夜、自宅で安全に過ごしてほしいと思います。私たちは、愛してやまないこの国にすべての国民が誇りを持って欲しいのです。福祉から就労へ、依存から独立へ、そして貧困から繁栄へ、移行することは可能です。
減税によって雇用が生まれます。労働者の能力開発や職業訓練に投資しましょう。これは、必要性が高い分野です。立派な職業訓練校を作って、将来の労働者が技能を学ぶ機会や潜在能力を引き出す機会を提供しましょう。有給の家族休暇によって、働く人たちを支援しましょう。
アメリカが力を取り戻せば、すべての国民にチャンスが広がるはずです。刑期を終え、社会に復帰した人に人生をやり直すチャンスを与えるために、今年、私たちが刑務所改革に取り組むのはそういった理由からです。
移民政策 国境警備
アメリカ人労働者とアメリカ人の家族の利益を重視する移民政策は、困難な状況にあるコミュニティー、特に移民のコミュニティーに恩恵をもたらすでしょう。何十年にもわたって国境警備が不十分だったために麻薬やギャングがアメリカで最も脆弱なコミュニティーに流入し続けました。その結果、何百万人もの低賃金労働者が最貧困層のアメリカ人と職を奪い合うことになりました。罪もない人の命が奪われるという悲劇的な出来事も数多く起こりました。
今夜、この場に2人の父親と2人の母親におこしいただいています。イーブリン・ロドリゲスさん、フレディ・クエバスさん、エリザベス・アルバラードさん、ロバート・ミケンズさんの4人です。それぞれ10代の娘がいました。ケイラ・クエバスさんとニサ・ミケンズさんの2人です。2人はともにロングアイランドに住む親友どうしでした。ところが、2016年の9月、ニサさんの16歳の誕生日の前日、幸せな時を過ごすはずだったのに、2人が帰宅することはありませんでした。2人の大切な少女は、自分の町で一緒に歩いている時に残虐にも殺害されました。
残酷さで知られるギャング集団「MSー13」のメンバー6人がケイラさんとニサさんを殺害した罪で起訴されました。ギャングのメンバーの多くは法律の抜け穴を利用して保護者のいない未成年者としてアメリカに不法入国し、ケイラさんとニサさんが通っていた高校に潜り込みました。
イーブリンさん、エリザベスさん、フレディさん、ロバートさん。今夜、この議場にいるすべての人があなた方のために祈っています。すべてのアメリカ国民があなた方のために祈っています。お立ち下さい。ありがとうございます。3億2000万人の国民が、あなた方のために心を痛めていることを知ってください。私たちは、あなた方を愛しています。ありがとうございます。
あなた方の悲しみの深さを知るすべはありませんが、ほかの家族が同じ苦しみを味わうことのないようにすることはできます。
MSー13などのギャングたちは、法の抜け穴を悪用してアメリカに入国しました。今夜、私は議会に対し、このひどい抜け穴をふさぐことを求めます。私たちは、移民法を修正し、国境警備を支援する新しい法案を既に提出しました。国境警備にあたる人たちもこのような悲惨な出来事を二度と起こさないために危険な状況で奮闘しています。
アメリカは思いやりに富んだ国です。アメリカは、世界中の困っている人たちや苦しんでいる人たち、不当な扱いを受けている人たちにどの国よりも多くの支援をしています。しかし、大統領として私が最も強い忠誠心、同情心、関心を持つのは、アメリカの子供たちと不遇な労働者、そして忘れられたコミュニティーの人々です。私は、アメリカの若者が成長して偉大な業績を達成してほしいと願っています。アメリカの貧しい若者に生活を向上させるチャンスを持ってほしいと願っています。
だからこそ、今夜、私は、あらゆる背景、人種、宗教、そして信条の国民を守るために、民主・共和両党の議員に協力を呼びかけているのです。私の義務、そしてきょう、議場に集まったすべての議員の義務は、アメリカ国民を守り、国民の安全、家族、地域社会、そしてアメリカンドリームを追い求める権利を守ることにあります。なぜなら、アメリカの国民もまた、「夢を持つ人たち」だからです。
今夜、この議場にはアメリカを防衛する活動でリーダーの役割を果たした人がいます。国土安全保障省の特別捜査官、セレスティーノ・マルティネスさんです。マルティネスさんは、「DJ」とか「CJ」と呼ばれています。本人は、どちらで呼んでくれても構わないと言っていますのでここでは、CJと呼ぶことにします。CJは、空軍で15年間働いたあと、国境警備当局の職員になりこれまで15年間、ギャングの暴力と戦い、危険な犯罪者を路上から排除してきました。厳しい仕事です。
ある時、MSー13のリーダーがCJの殺害を命じました。すぐに実行するようにとの指示でした。しかし、CJは、その恐怖にも屈しませんでした。去年5月、CJはロングアイランドでギャングのメンバーを摘発する作戦で指揮を執りました。CJの部隊はメンバー400人近くを逮捕し、このうち220人以上がMSー13のメンバーでした。
そして、国境警備当局は何千人ものMSー13のメンバーを国外に送還したり、アメリカの刑務所に収監したりしたのです。
ここでCJの業績を称えたいと思います。あなたは勇敢な人だ、ありがとう。
「(成功した)秘訣を教えてくれないか」と私がCJに聞いたところ、「私たちの方がギャングよりタフなだけです」という答えが返ってきました。私は、その答えがとても気に入りました。偉大な議会がなすべきことは1つ、早急に人員の増加を認めることです。私たちは、すぐに人員を増加するつもりです。
次の数週間で、下院と上院で、移民改革法案が採決に付されるでしょう。ここ数か月間、私の政権は移民改革に向けて超党派のアプローチを構築するために、民主・共和両党の議員と幅広く協議を重ねてきました。そうした協議を踏まえて、私たちは公正な妥協案として、両党に支持される詳細な法案を議会に提出しました。どちらの側も、希望するすべてを勝ち取ることはできないものの、アメリカに必要な改革をもたらす法案です。
その計画の4つの柱を説明します。第1の柱は、子どもの頃、親に連れられてアメリカに入国した180万人の不法移民に市民権取得への道筋を与えるという寛大な方針です。これによって、前の政権で対象となった人数のほぼ3倍にあたる人が対象になります。私たちの計画では、教育と仕事の面で条件を満たし、かつ人格に問題がなければ、12年後に完全なアメリカ国民になれます。
2つ目の柱は、国境警備の強化です。具体的には、アメリカの南の国境に偉大な壁を築くということです。またコミュニティーの安全を維持するために、CJのような英雄を増員します。犯罪者やテロリストに悪用されアメリカへの不法入国を許しているお粗末な抜け穴をふさぐことも私たちの計画の要点です。また、恐ろしく危険な慣行である不法入国者を捕まえたあとすぐに釈放する「キャッチ・アンド・リリース」を終わらせます。
第3の柱は、くじでビザを与えるのをやめることです。このプログラムは、技術や能力、そしてアメリカ国民の安全を考慮することなく無作為に永住権を与える仕組みです。今こそ、能力に基づく移民制度に移行すべきです。技術を持つ人、働く意欲のある人、アメリカの社会に貢献できる人、そしてアメリカを愛し尊敬する人に永住権を与えるべきです。
第4の最後の柱は、連鎖的な移民を食い止めることで、核になる家族を守るということです。現在の破綻した制度では、1人の移民が事実上無制限に親戚をアメリカに入国させることができます。私たちの計画のもとでは、呼び寄せることができるケースを本人の配偶者と未成年の子どもに限定します。この改革は、アメリカの経済にとどまらず、私たちの安全、そして将来にとって必要不可欠です。
数週間前にニューヨークで起きたテロは、抽せんでビザを取得する制度と、連鎖的な移民によって可能となってしまいました。テロの時代において、こうしたリスクを容認するゆとりはありません。
今こそ、こうした時代遅れの移民規則を改革して、21世紀にふさわしい移民制度を導入するべきです。
これら4つの柱は、民主・共和両党が歩み寄った結果、達成した成果であり、この歩み寄りによって安全かつ近代的で、合法的な移民制度を作ることが可能になるでしょう。
30年にわたって、連邦政府は、移民問題の解決を試みてきましたが、そのつど失敗してきました。この議会によって、それがようやく実現します。
何よりも重要なのは、これら4つの柱から法律が生まれることです。その時には、アメリカ第一主義を後押しする法案に署名するという私の譲れない約束を果たすことができます。さあ、一致団結し、政局をいったん端に置き、この仕事をやり遂げましょう。
薬物対策
こうした一連の改革は、「オピオイド」をはじめとする薬物依存症危機への対応を下支えすることにもなります。薬物依存がこれほどひどかった時代は過去にありません。ひどい状態です。この問題を何とかしなければなりません。アメリカでは、2016年に6万4000人が薬物の過剰摂取で命を落としました。1日につき174人、1時間で7人です。薬物問題に歯止めをかけるためには、密売組織と末端の密売人に対して、もっと厳しい姿勢で臨まねばなりません。
私の政権は、断固とした姿勢で、薬物の蔓延に立ち向かい、治療が必要な人や深く傷ついた人たちが治療を受けることができるように支援の手を差し伸べます。この戦いは、長く困難なものになるでしょうが、アメリカ国民が常にそうであるように、最終的には成功するでしょう。私たちは勝利を収めるでしょう。
今夜、私たちが見てきたように、最も困難な課題が、アメリカ国民から最良のものを引き出します。ニューメキシコ州にお住いのホレッツさんの家族の出来事は、このことを実に良く体現しています。ライアン・ホレッツさんは27歳で、アルブカーク市警の警官です。ライアンさんは、妻のレベッカさんとともにきょう、ここに来ていただいています。ライアンさん、ありがとうございます。
去年、ライアンさんは勤務中に、ホームレスの妊婦がヘロインを注射しようとしているところを目撃しました。「お腹の子供に害がある」と注意すると、妊婦は泣き始めました。妊婦は「行く当てもないが、生まれてくる赤ちゃんのために安全な住まいがほしい」とライアンさんに言いました。
その時、ライアンさんは神の声を聞いたと言います。「あなたはできる。だからやりなさい」という声でした。ライアンさんは、その声を聞いたのです。ライアンさんは、妻と4人の子供の写真を取り出しました。それから自宅に戻り、妻のレベッカさんに事情を説明しました。レベッカさんは、その場で養子縁組に賛成しました。ホレッツさん夫妻は、この新しい娘をホープ(Hope=希望)と名付けました。ライアンさん、レベッカさん、あなた方2人はアメリカの良心を体現しています。ありがとう。ありがとう、ライアンさん、レベッカさん。
私たちが国内で、強さと自信を取り戻すとき、国外でも強さと存在感を取り戻していくことになります。
国防 核戦力 IS
私たちは世界各地で、ならず者国家、テロリスト集団、そしてアメリカの国益や経済、価値観に挑む中国やロシアといった競争相手と対じしています。こうした恐ろしい危機に立ち向かっていく中で、私たちは、弱さが間違いなく紛争へとつながり、比類なき力こそが本当にすぐれた防衛の最も確実な手段となることを知っています。
こうした理由から、私は危険な国防費の削減をやめ、偉大なアメリカ軍に十分な予算をつけることを議会に求めます。
国防の一環として、私たちは核戦力を近代化し、再建しなければなりません。核戦力は決して行使されないことが望ましいですが、きわめて強力なものにすることで、他国やいかなる者からの侵略行為を抑止できます。おそらく将来いつか、世界各国が核兵器を廃絶するために協力する、魔法のような瞬間が訪れるかもしれません。残念ですが、今はその状況ではありません。悲しいことですが。
去年、私は同盟国と過激派組織IS=イスラミックステートを地球上から根絶するとも誓いました。1年が経って、有志連合が、イラクやシリア、そのほかの地域でISの人殺したちに最近まで支配されていた地域の100%近くを解放したことを報告できることを誇りに思います。しかし、まだ多くの課題が残っています。私たちは、ISを打ち負かすまで戦い続けます。
陸軍2等軍曹のジャスティン・ペックさんが今夜来ています。去年11月、(シリア北部の)ラッカ近くで、ジャスティンさんと戦友のケントン・ステイシー2等曹長は、市民が早期に安全に街に戻るため、ISが仕掛けた爆発物を建物から取り除く任務にあたっていました。
病院の2階で爆発物を取り除く作業をしていたときに、爆発によってケントン・ステイシーさんが重傷を負いました。ジャスティンさんは、爆弾が仕掛けられたとても危険な建物に即座に突入し、ひん死のケントンさんを見つけました。彼は傷口を圧迫し、ふさがった気道を確保するため、チューブを挿入しました。地上に運ぶまでの間、心肺蘇生術を20分間続けたほか、緊急手術をする時間も含めて2時間半にわたり、人工呼吸を続けました。
ケントン・ステイシーさんは、戦友であるジャスティンさんの無私の愛がなければ亡くなっていたでしょう。今、ケントンさんはテキサスで回復しつつあります。ラッカは解放されました。そして、ジャスティンさんは「勇気」を意味するVの字が入った青銅星章を身につけています。ペック2等軍曹、すべてのアメリカ国民があなたに敬礼します。
民間病院に爆弾を仕掛けるようなテロリストは悪です。私たちは彼らを壊滅させる以外に選択肢はありません。必要であれば、彼らを拘束して尋問できなければいけません。だが、はっきりさせておかなければならないのは、テロリストは単なる犯罪者ではないということです。彼らは不法な敵戦闘員です。海外で捕らえられた場合、テロリストはテロリストとして扱われるべきです。
過去、私たちは多くの危険なテロリストを愚かにも釈放し、その後戦場で彼らと再び出くわしました。ISの指導者、バグダディもその1人です。
グアンタナモ収容施設
きょう、私はもう1つ約束を守ろうとしています。ここに来る前に、軍の勾留政策を見直し、グアンタナモ湾の収容施設を維持するようにマティス国防長官に指示する大統領令に署名したところです。
ISやアルカイダとの戦いにおいて、拘束した場所を問わず、テロリストを拘束するためのあらゆる権限を持ち続けられるよう議会に求めます。多くの場合、それはグアンタナモ湾になるでしょう。
また、数か月前、アフガニスタンにいるアメリカ軍兵士の交戦規定が一新されました。
英雄的なアフガニスタン軍兵士と連携して戦うアメリカ軍は、人為的に設定された日程に、縛られることはないし、私たちの計画を敵に知らせることもないのです。
エルサレムを首都
私は先月、数か月前に上院で全会一致で承認されたことを実行しました。エルサレムをイスラエルの首都と認めたのです。
直後に、多くの国が国連総会でアメリカが主権国家として行った決定に反対しました。2016年、アメリカの納税者は、これらの国々に200億ドル以上の援助を行いました。
ですから、今夜私は、アメリカの海外援助が常にアメリカの国益にかなうこと、そして援助がアメリカの敵ではなく、友人にだけ届くようにする法案を通過させるよう議会に求めます。
世界各国との友好関係を強化するとともに、敵対国を明らかにします。
イラン核合意
イランの国民が腐敗した独裁政権の犯罪に対して立ち上がった時、私は黙っていませんでした。アメリカは自由を求めて勇敢に闘うイラン国民を支持します。
イランとのひどい核合意の根本的な欠陥に対処するよう議会に求めます。
トランプ政権は、キューバとベネズエラの共産主義・社会主義の独裁政権に対して、厳しい制裁を実施しました。
北朝鮮の核・ミサイル開発
しかし、北朝鮮の残虐な独裁政権ほど自国民を徹底的に容赦なく抑圧してきた体制はありません。北朝鮮は、核・ミサイルを無謀に開発しており、近いうちにアメリカ本土に脅威を与える可能性があります。それを食い止めるために、最大限の圧力をかける取り組みを遂行しています。
私たちは過去の経験から、現状に自己満足し譲歩を重ねることは、攻撃と挑発しか招かないと学びました。非常に危険な状況に置いてしまった過去の政権の過ちは、繰り返しません。
北朝鮮の政権の邪悪な性質に目を向けるだけで、北朝鮮がアメリカと同盟国に突きつける核の脅威の本質を私たちは理解することができます。
オットー・ワームビアさんは、バージニア大学で学ぶ勤勉ですばらしい学生でした。アジア留学の途中、オットーさんは北朝鮮ツアーに参加しました。その結果、このすばらしい若者は国家転覆を企てたとして拘束され、罪に問われました。恥ずべき裁判の結果、独裁政権はオットーさんに、15年の労働教化刑を言い渡しました。その後、去年6月に彼をアメリカに帰国させたときには、オットーさんは重体で、命が危険な状態でした。帰国してわずか数日後にオットーさんは亡くなりました。
オットーさんのすばらしい両親、フレッドさんとシンディー・ワームビアさんが、ここに来てくれています。オットーさんの兄弟、オースティンさんとグレタさんも一緒です。どうぞお立ちください。すばらしい人たちです。あなた方は世界を脅かすものに対する強力な証言者です。ありがとうございます。私たちは今夜、息子さんの記憶をアメリカ全土の決意とともに刻むことを誓います。ありがとうございます。
最後に、北朝鮮体制の不穏な本質を目撃した人がもう1人、ここにいます。彼の名は、チ・ソンホさんです。ソンホさんは1996年、北朝鮮で飢えに苦しむ少年でした。ある日、彼はわずかな残飯と物々交換しようと、列車から石炭を盗もうとしました。それくらい食べ物の入手は大変だったのです。その最中、彼は飢えで消耗し、線路上で意識を失いました。列車が彼の足の上を通過したときに、目を覚ましました。その後、彼は苦痛を和らげることもせずに、複数回の切断手術に耐えました。兄弟たちが彼を回復させるために、持っていたわずかな食べ物を彼に与え、自分たちは土を食べました。その結果、兄弟の発育に影響が出ました。後に、ソンホさんは短期間訪問した中国から帰国したときに、北朝鮮当局から拷問を受けました。彼を拷問した人物は、キリスト教徒と会ったかどうかを知りたがったのです。その後、彼は自由の身になろうと決意しました。
ソンホさんは、松葉づえをついて、自由を求めて中国と東南アジア中を数千マイル移動しました。彼の家族のほとんどが後を追いました。彼の父親は、脱北しようとして捕まり、拷問の末、亡くなりました。
現在、彼はソウルに住み、他の脱北者の支援にあたり、北朝鮮の体制が最も恐れること、つまり真実を北朝鮮に向けて放送しています。
彼には今、新しい足があります。しかし、ソンホさん、あなたがたどった道のりを忘れないよう、その古い松葉づえを今も持っていることを私は知っています。あなたが払った大きな犠牲が、私たちすべてにとって励みとなっています。どうぞお立ちください。ありがとうございます。
アメリカの理念
ソンホさんの体験は、すべての人の魂が自由の中で生きたいと切望していることの証しです。同じ自由へのあこがれが、250年近く前、アメリカという名の特別な場所を誕生させました。当時のアメリカは大洋と広大な荒野に挟まれた小さな入植地の集まりでした。しかし革命的な考えを持つすばらしい人の集まりでした。みずからを統治するという考え、みずからの運命を切り拓くことが出来るという考え、そして力を合わせれば世界全体を照らすことが出来るという考えを持つ人たちでした。
それこそ建国以来のアメリカの理念です。それこそアメリカが一貫して支持してきたことです。そのためにアメリカは常に努力し、常にやり遂げてきました。
この連邦議事堂の屋根の上には「自由の像」が立っています。自由を守るために戦い、行き、死んだ先人たちの記念像の中でこうこうと堂々と立っています。ワシントン元大統領やジェファーソン元大統領、リンカーン元大統領やキング牧師の記念像もあります。
(独立戦争の激戦地となった)ヨークタウンやサラトガの英雄、ノルマンディーの海岸や遠方の戦地で、尊い血を流した若いアメリカ人、太平洋の海やアジアの空で倒れた人たちの記念像もあります。自由はさらにもう1つのモニュメントの上に堂々と立っています。それがこの連邦議事堂です。生きたモニュメントであり、アメリカ国民を称えるモニュメントです。
(聴衆:USA、USA、USA)
英雄は過去にのみ存在するような国民ではありません。希望や誇り、アメリカらしさを守ろうとして私たちの周りで生きているすべての人たちこそが英雄です。
そうした英雄はあらゆる職場で働いています。彼らは家族のためにみずからを犠牲にしています。国内では子どもたちを養い、海外では、アメリカの国旗を守っています。強い母親や勇敢な子どもたちもいます。消防士、警官、国境警備隊、救急隊員、海兵隊員もいます。しかし彼らは何よりもまずアメリカ国民なのです。そしてこの連邦議事堂、ワシントンDC、この国は紛れもなく国民のものです。
私たちの責務は、国民を尊重し、国民の声に耳を傾け、国民を守り、常に国民に奉仕することです。
アメリカ人は芸術と音楽で世界を満たしています。科学の対象領域を広げ、新発見に導いています。アメリカ人は、決して忘れてはならないことを永遠に思い起こさせてくれます。人びとは、この国を夢みていたのだと。その人たちがこの国を作ったのだと。アメリカを再び偉大な国にするのは国民なのだと。
私たちがアメリカ人としての誇りと、戦いの大義を持っているかぎり、成し遂げられないことはありません。私たちの価値観に自信を持ち、国民を信頼し、神を信じているかぎり、決して失敗することはないでしょう。
私たちの家族は繁栄するでしょう。アメリカの国民は栄えるでしょう。そして、私たちの国は永遠に安全で強く、誇り高く、強力で自由であり続けるでしょう。
ありがとうございました。アメリカに神の祝福を。おやすみなさい。
トランプ大統領一般教書演説 要旨と日本語訳
1月30日、政権2年目の施政方針を示す一般教書演説を行ったトランプ大統領。議会本会議場で上下両院の議員などを前に行った1時間以上にわたる演説で、税制改革などを就任後1年の成果として訴えるとともに、公正な貿易やインフラ投資の実現を目指す考えを強調。外交・安全保障面では北朝鮮の核ミサイルの脅威や人道上の問題を強調して非難し、北朝鮮への対応に重点的に取り組む姿勢を示しました。ことし11月に政権への審判が下される議会の中間選挙が控えていることから、政権の実績や公約の実現を目指す姿勢をアピールしたと見られます。
一般教書演説を、要旨や日本語訳・英語全文で掲載。演説に対する反応や解説も。
一教書演説 要旨でザッと内容把握
貿易問題 中国念頭に「公正な貿易を実現」
貿易問題について「アメリカは何十年もの間、われわれの繁栄や雇用を奪ってきた不公正な通商政策をついに転換した。経済的に屈する時代は終わった」と述べ、中国による知的財産の侵害をめぐる問題を取り上げて、公正な貿易を実現する考えを強調。
一方、TPP=環太平洋パートナーシップ協定についてトランプ大統領は、1月下旬にスイスで開かれたダボス会議では、再交渉を前提に復帰する可能性について言及していたが、一般教書演説では触れず。
米国内投資 トヨタとマツダに言及
「トヨタ自動車とマツダはアラバマ州に工場を建設する」と述べ、日本の自動車メーカーを例に挙げて、アメリカ国内への投資が活発になっていると強調。
安全保障 「核戦力を近代化して再建」
外交・安全保障政策をめぐっては、「われわれはならず者国家、テロリスト集団、そして、われわれの国益や経済、価値に挑む中国やロシアといったライバルに直面している」と述べ、中国とロシアを名指ししてアメリカの競合勢力だと指摘。
そのうえで「これらの危機に立ち向かっていく中で弱さが紛争へとつながり、比類なき力が最も確実な防衛の手段となることをわれわれは知っている」として、軍事力の強化に取り組む姿勢を強調した。
中でも「核戦力を近代化し再建しなければならない」と述べて、老朽化が進むアメリカの核戦力の近代化を促進し、強化していく必要があると主張。
対ISの成果「誇り」 グアンタナモ閉鎖せず
最優先課題の1つに掲げてきた過激派組織IS=イスラミックステートへの対策について、「1年がたってイラクやシリアなどでISが支配してきた地域の100%近くを解放したと報告できることを誇りに思う」と成果を訴え、壊滅に向けた対策を続ける方針を強調。
ISの指導者バグダディ容疑者が、かつてイラクでアメリカ軍が運営していた収容所に一時拘束されていたことを念頭に、「われわれは過去にバグダディを含む多くの危険なテロリストを愚かにも釈放してきた」と述べた。
そのうえで、テロ組織と関係があるとされる外国人を拘束してきたキューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ収容所について、「たった今、マティス国防長官に、グアンタナモの収容所の使用を続けることを指示する大統領令に署名した」と述べ、閉鎖の考えはないと強調。収容所の閉鎖を目指したオバマ前政権との違いを鮮明にした。
エルサレム問題 決定に反対した国々をけん制
中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めたことにも言及。去年12月に国連総会で、エルサレムの地位の変更は無効だとする決議が賛成多数で採択されたことについて、「賛成した国の中には多額の援助がアメリカ国民の税金から送られているところがあるが、援助はアメリカの敵に送るべきではない」と、みずからの決定に反対した国々に対し援助の停止をちらつかせてけん制。
イランとの核合意 改めて非難
イランで一時広がった反政府デモについて、「イランの人々が汚職にまみれた独裁による犯罪に対して立ち上がったとき、私は黙っていなかった」と述べ、反政府デモを支持する考えを強調。さらに「議会にはひどいイラン核合意の根本的な欠陥に取り組んでほしい」と述べ、オバマ前政権がヨーロッパなどの国とともに結んだ核合意を非難し、イランに敵対する姿勢を改めて示した。
不法移民対策強化の必要性訴える
移民政策について「何十年もの間、麻薬やギャングがわれわれのぜい弱な地域社会に入り込むのを許してきた」と指摘。不法移民対策を強化する必要性を訴えた。
メキシコなどから子どもの時に親に連れられてアメリカに不法入国した若者らおよそ180万人については、強制送還せずに救済し市民権を付与する一方、メキシコとの国境沿いに壁を建設するほか、希望者が抽選でビザを取得できるプログラムは廃止すべきだとして、与野党に必要な法案を可決するよう求めた。
内政 オバマケア見直しで成果強調
本来は鎮痛剤として使われる「オピオイド」と呼ばれる薬物を乱用して中毒となる人がアメリカで後を絶たないことから、対策に取り組む考えを示した。
オバマ前政権が導入した医療保険制度、いわゆるオバマケアについては、税制改革に併せて一部を見直し、個人の保険加入の義務を廃止したと訴え、みずからの成果として強調。
一般教書演説 全文日本語訳で読み込む
下院議長、副大統領、議員の皆様、大統領夫人、そして国民の皆様。
私がこの荘厳な議場の、この演壇に立ち、アメリカ国民を代表して国民の皆様が抱える懸念、希望、夢について語ってからほぼ1年になります。演説をしたあの夜の時点で発足したての政権は、既に迅速な行動を起こしていました。それまでなかった楽観主義が全米に広がり始めていました。
その日から、私たちは、すべての国民のためにアメリカを再び偉大な国にするために明確なビジョンと公正な使命感をもって、日々、前進してきました。
この1年で、今の政権は信じられないほど大きく前進し、驚くべき成功を収めました。予期した課題と想像もつかなかった課題の両方に直面しました。私たちは勝利の高揚感を分かち合い、苦難の痛みを分かち合いました。洪水、火災、嵐を耐え抜いてきました。そうした経験を通じて、私たちは国民の気高い精神と気概を目の当たりにしました。
アメリカが試練に直面するたびに英雄が生まれ、アメリカ国民として、われわれは何ができるかを考えさせられました。
壊滅的被害をもたらしたハリケーンに襲われた後、ルイジアナ州では、船の所有者たちによるボランティア団が、住民の救助にあたりました。
ラスベガスの乱射事件では、銃弾が降り注ぐ中、見知らぬ人同士がみずからの体を盾にして互いに守りあいました。
また、沿岸警備隊下士官のアシュリー・レパートさんの話も聞いています。アシュリーさんは(妻の)メラニアと一緒にこの議場にいます。アシュリーさんは、ハリケーン・ハービーが襲来した際、ヒューストンに向かった第1陣のヘリコプターに搭乗していました。アシュリーさんは、18時間もの間、風や雨、電気が流れる電線や深い水に阻まれながら40人もの住民を救出しました。アシュリーさん、私たちは全員、あなたに感謝しています。本当にありがとうございました。
消防士のデービッド・ダールバーグさんのことも聞きました。デービッドさんもこの議場にいます。カリフォルニアで、サマーキャンプに参加していた60人近くの子どもたちが山火事によって身動きがとれなくなった時、デービッドさんは燃え盛る炎に屈することなく、子どもたちを救出しました。
今もハリケーン被害の復興の途中にあるテキサス、フロリダ、ルイジアナ、プエルトリコ、バージン諸島の皆様、私たちはあなた方とともにあります。力を合わせれば、必ず難局を乗り切ることができます。
デービッドさん、そしてカリフォルニアの勇敢なみなさん、ありがとうございました。デービッドさん、ありがとうございました。すばらしい働きぶりでした。
この議場もこの1年、試練にあいました。今、この議場には最も強靭な精神を持つ議員が、来ています。体に銃弾を受け、瀕死のけがを負いながら3か月半後には職務に復帰しました。その議員とは、今や伝説的な存在となったルイジアナ州選出のスティーブ・スカリス下院議員です。スティーブさん、皆さんあなたが大好きなようですよ。
スカリス議員をはじめ、多くの命を救ってくれた議会警察、アレクサンドリア市警察、医師、看護師、救急隊員のみなさんに深く感謝しています。今、議場にはあの場にいた人たちもいます。
あの恐ろしい発砲事件の後、私たちは団結しました。民主党議員や共和党議員としてではなく、国民を代表する議員として団結しました。しかしながら、悲劇が起きた時だけに団結するだけでは不十分です。私は今夜この場で、党派の違いを超えて共通項を見つけて団結し、公約を果たそうではないかと訴えたい。それが重要です。ここにいる議員たちは、国民のために働くために選出されたのです。
この1年で、国際社会は、われわれアメリカ人が世界で最も勇敢で、大胆不敵で、固い決意を持った人たちだということを知ったと思います。アメリカ人はそこに山があれば登ります。辺境があれば、横断します。困難に直面すれば、克服します。チャンスがあれば、つかみます。
まず、今夜は、何をおいても、アメリカ国民の団結が強いのと同じように、アメリカ合衆国の団結も強固であるということを認識しましょう。そして、私たちは力を合わせて、安全で強く、誇り高いアメリカを作っています。
雇用創出 税制改革
大統領選挙以降、私たちは240万人の雇用を創出しました。製造業の分野だけで、20万人の雇用を創出しました。とてつもなく大きな数字です。長い間、賃金が伸び悩んでいましたが、ようやく、賃金が上がってきています。
失業保険の申請は、45年ぶりの低水準にあります。私は、それを誇りに思っています。アフリカ系アメリカ人の失業率は、これまでで最も低い水準にあります。ヒスパニック系アメリカ人の失業も、最も低い水準にあります。
中小企業の景況感は、最高水準に達しています。株式市場は、最高値を更新し続け、わずか1年で時価総額が8兆ドルも増えました。確定拠出年金401k、退職、年金、大学進学のための貯蓄口座も大きく伸びています。
11か月前にこの演壇に立ってアメリカ国民に約束したように、私たちは、アメリカ史上最大の税制改革を実施しました。
私たちが実施した大規模減税により、中間層と中小企業は大きな恩恵を受けます。勤勉に働く国民の税負担を減らすために、私たちは納税者の基礎控除を2倍にしました。減税によって、夫婦の所得の合計のうち、最初の2万4000ドルは非課税となりました。年収7万5000ドルの平均的な4人世帯では、納税額は2000ドル減って半分になります。
旧来の破綻した税制のもとで確定申告をするのは、今年4月で最後になります。多くの納税者の手取り収入は来月から増えることになります。さらに増えるのです。私たちは、主に年収5万ドルの納税者が払わされていた過酷な税を廃止しました。これは、政府が決めた医療保険制度に加入しないという理由で払わされていた膨大な罰金のことです。私たちは、破滅的だったオバマケアの核心部分について、撤廃しました。個人が強制的に加入する医療保険はもうないのです。
私たちは、法人税を35%から一気に21%まで引き下げました。これによってアメリカの企業は国際競争を勝ち抜くことができるようになりました。こうした一連の改革だけで平均的な世帯収入が4000ドル以上増えます。大きな金額ですよ。
中小企業も大幅な減税の恩恵を受けることになり、新しい税制のもとで事業所得から20%の控除が認められました。
さて、今夜はここに、小さいがすばらしい、オハイオ州の企業「スタウブ製造社」のスティーブ・スタウブさんとサンディ・ケプリンガーさんも来ています。創設から20年になるこの会社はこの1年間、過去最高の業績を上げることができました。税制改革の恩恵を受けて賃上げを実施、新たに14人の従業員を雇ったうえ、会社の建物も増築したのです。すばらしいことですね。
この会社の社員であるコーリー・アダムズさんにも今夜、きていただいています。コーリーさんは、典型的なアメリカの労働者です。彼は働きながら高校を出たものの、2008年の景気後退で職を失いました。その後、スタウブさんに雇われて、研修を受けて溶接職人になりました。多くの勤勉なアメリカ人労働者と同じように、コーリーさんは減税で得た金を新しい家と2人の娘の教育に使う計画です。さあ、コーリーさんお立ちください。彼は立派な溶接職人ですよ。経営者からすばらしい仕事ぶりだと聞いていますよ。よかったですね、コーリーさん。
税制改革法案が可決してから、およそ300万人の労働者が既に数千ドル規模の減税の恩恵を受けています。状況は月を追うごとに、週を追うごとに、よくなっています。アップルは、国内に総額3500億ドルを投資して新たに2万人を雇い入れる計画を発表したところです。そして、つい先ほど、エクソンモービルがやはり500億ドルを投資すると発表しました。
アメリカは今、新たな時代を迎えました。アメリカンドリームを実現するうえで、今ほど最良の時はないでしょう。
今夜、自宅で、この演説をご覧になっている皆さんに伝えたい。あなたたちがこれまでどこにいようとも、そして、あなたたちがどこから来たにしろ、今こそが、あなたたちの時代なのです。勤勉に働くなら、自分の力を信じるなら、そしてアメリカを信じられるのであれば、どんな夢でも持ち、どんなものにだってなれますし、そして、私たちが力を合わせればどんなことでも実現できます。
今夜は、私たちの将来について、そして、アメリカがどのような国になろうとしているのか、話したいと思います。1つのチームとして、1つの国民として、そして、1つのアメリカの家族として、力を合わせれば不可能なことはありません。
私たちは皆、同じ家、同じ心、同じ運命、そして同じ偉大なアメリカの国旗を共有しています。
私たちは今、手を携えてアメリカの道を再発見する途上にあります。アメリカ人の生活の核心にあるのは信仰と家族であり、政府や官僚機構ではないということを私たちはわかっています。アメリカの信条は、「私たちは神を信じる」です。
私たちは、警察、軍、そしてすばらしい退役軍人を英雄として祝福します。国民は、彼らに全面的かつ揺るぎない支持を与えるべきです。
今夜は、カリフォルニア州レディングから12歳のプレストン・シャープ君に来てもらいました。プレストン君は、「退役軍人の日」であるにもかかわらず、退役軍人の墓地に国旗が飾ってないことに気づいて、これではいけないと考えました。プレストン君は、国旗を集める運動を始め、これまでにアメリカの偉大な英雄である退役軍人の墓地に4万本の国旗を掲げました。プレストン君、立派でしたね。
プレストン君をはじめとする若い愛国者から、私たちはアメリカ国民としての義務を学びます。私は、プレストン君と先ほど会ったところですが、すばらしい少年です。将来を担う人材です。プレストン君ありがとう。
アメリカという国に奉仕した兵士に敬意を表すプレストン君を見ていると、私たちは、国旗に敬礼をする理由、「忠誠の誓い」を暗唱する際に手を胸に当てる理由、そして国歌斉唱の際に誇りをもって起立する理由を思い起こすことができます。
アメリカ人は国を愛しています。政府が国民に対してそれと同じ愛と忠誠心を示すべきなのは当然のことです。この1年間、私たちは国民と政府に信頼という絆を復活させるための努力をしてきました。
最高裁判所判事
私たちは上院と協力して、憲法を原文に忠実に解釈する判事を任命しています。新しく任命した偉大な最高裁判所の判事はそうした判事の1人です。また、過去のどの政権よりも私たちは、多くの控訴裁判所の判事を任命しています。
私たちは、(武器保有の権利を認めた)憲法修正第2条を断固として守っています。そして、信仰の自由を守るために歴史的な措置を講じてきました。
私たちは、勇敢な退役軍人に対する便宜を図っています。退役軍人に医療制度における選択肢を付与しているのもそうした便宜の1つです。去年、議会は画期的な退役軍人責任法案を可決し、私はそれに署名しました。この法律が成立して以降、トランプ政権は退役軍人に当然の医療サービスを提供しなかった退役軍人省の職員1500人を解雇しました。そして、退役軍人を大切にする私たちと同じ考えを持つ有能な人材の採用を進めています。
退役軍人が納得のいく処遇を受けるまで私が止まることはありません。それは、(大統領選挙に立候補した)この偉大な旅路の出発点で、私が退役軍人に公約したことです。
政府は、すべてのアメリカ国民を尊重し、国民に対して義務を果たさなければなりません。それこそ私たちが、すばらしいアメリカの英雄である退役軍人に付与しようとしていることです。ありがとう。
正しい連邦職員にはこれを報い、国民の信頼を裏切ったり、ないがしろにしたりする職員を解雇する権限をすべての省庁の長官に付与することを、今夜、私は議会に求めます。
規制撤廃 工場建設
連邦政府の行政に責任を求めるために、この1年間、私たちは過去のどの政権よりも多くの規制を撤廃しました。
私たちは、エネルギー産業に対する戦争に終止符を打ちました。クリーンな石炭に対する戦争を終わらせました。今や、アメリカは、世界各国にエネルギーを輸出するという誇りある国になりました。
デトロイトでは、政府の規制によって自動車産業に携わる偉大な労働者が辛酸をなめてきましたが、私はその規制を撤廃しました。それによって、自動車の町が息を吹き返すことのできる状況を作りました。デトロイトは、今、復活の途上にあります。多くの自動車会社がアメリカ国内で工場を新設したり、拡張したりしています。何十年もそんなことはありませんでした。クライスラーは、大規模な工場をメキシコからミシガン州に移すことを決めました。トヨタ自動車とマツダはアラバマ州に大規模な工場を建設することになりました。しばらくぶりのことです。工場がアメリカに戻ってくるのです。
近いうちに自動車工場をはじめとするさまざまな工場が全米各地にオープンするでしょう。アメリカ人は、長い間そういうニュースを聞いていません。長い間、企業も雇用もアメリカを出て行く一方でした。今、それが猛烈な勢いで戻ろうとしているのです。企業だって経済活動が活発なところに立地したいのです。アメリカに立地したいのですよ。
アメリカは、日進月歩で進歩しています。画期的な治療法や価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品への入手を迅速化するために、去年、FDA=食品医薬品局は新薬やジェネリック医薬品、そして医療機器をかつてないほど早いペースで承認してきました。
私たちはまた、末期の患者が延命の可能性がある実験的な治療を、すぐにでも受けることができるようにすべきだと考えています。
末期患者が治療のため国から国へと移動を強いられるような状況を許しておくべきではありません。そうした患者に国内でチャンスを与えたいと思っています。議会は、こうしたアメリカの患者たちに、実験的な治療を「試す権利」を与えるべきです。
早急に取り組むべき課題の1つとして、処方薬の価格引き下げがあります。多くの他の国で、こうした薬の値段はアメリカよりずっと安価です。これほど不公正な話はないでしょう。薬の不当な値段の適正化を今年1年の最優先課題の1つにせよと、私が政権のスタッフに指示したのもそういう理由があるからです。これから薬の値段は大幅に下がるでしょう。見ていてください。
通商政策
アメリカは数十年に及んだ不公正な通商政策をついに転換しました。不公正な貿易によって、アメリカの繁栄が犠牲となり、企業は国外に逃げ、雇用と富が消失しました。しかし、私たちは一気にそれを取り戻しています。経済的敗北の時代は完全に終わりました。これからは、公正で互恵的な貿易関係を要求していきます。
私たちは、愚かな通商協定を修正し、新たな協定を結びます。新たな協定は公正で、よいものであるべきです。私たちは、貿易のルールの履行によってアメリカの労働者と知的財産を守ります。
インフラ再建
アメリカの産業の再建と同様に、老朽化したインフラの再建も重要です。
アメリカは建設者の国です。エンパイアステートビルはわずか1年で完成しました。今は、普通の道路を作る許可を得るために10年もかかるなんて恥ずべきことです。民主党、共和党の双方が協力し、安全で信頼性が高く近代的なインフラを提供することを求めます。アメリカの経済は、そうしたインフラが必要であり、国民はそれを享受する権利があります。
今夜、私は議会に対し、少なくとも1兆5000億ドルのインフラ投資法案を提出することを要請します。インフラ整備は喫緊の課題です。連邦政府の支出に応じて、州と自治体も費用を負担すべきです。加えて、民間の投資を活用することによって老朽化したインフラを恒久的に修復するべきです。私たちにはそれを実行する力があります。
いかなる法案も許可と承認に必要なプロセスは2年以内に行われ、できれば1年に効率化しなければなりません。共に取り組めば、これまでの偉大な建造物を再生することができるのです。
私たちは、アメリカ全土に新たな道、橋、高速道路、鉄道、水路を張り巡らします。アメリカ国民の心と手によって、不屈の精神でそれを成し遂げます。
すべてのアメリカ国民に勤勉な労働の尊さを知ってほしいのです。すべての子供が、夜、自宅で安全に過ごしてほしいと思います。私たちは、愛してやまないこの国にすべての国民が誇りを持って欲しいのです。福祉から就労へ、依存から独立へ、そして貧困から繁栄へ、移行することは可能です。
減税によって雇用が生まれます。労働者の能力開発や職業訓練に投資しましょう。これは、必要性が高い分野です。立派な職業訓練校を作って、将来の労働者が技能を学ぶ機会や潜在能力を引き出す機会を提供しましょう。有給の家族休暇によって、働く人たちを支援しましょう。
アメリカが力を取り戻せば、すべての国民にチャンスが広がるはずです。刑期を終え、社会に復帰した人に人生をやり直すチャンスを与えるために、今年、私たちが刑務所改革に取り組むのはそういった理由からです。
移民政策 国境警備
アメリカ人労働者とアメリカ人の家族の利益を重視する移民政策は、困難な状況にあるコミュニティー、特に移民のコミュニティーに恩恵をもたらすでしょう。何十年にもわたって国境警備が不十分だったために麻薬やギャングがアメリカで最も脆弱なコミュニティーに流入し続けました。その結果、何百万人もの低賃金労働者が最貧困層のアメリカ人と職を奪い合うことになりました。罪もない人の命が奪われるという悲劇的な出来事も数多く起こりました。
今夜、この場に2人の父親と2人の母親におこしいただいています。イーブリン・ロドリゲスさん、フレディ・クエバスさん、エリザベス・アルバラードさん、ロバート・ミケンズさんの4人です。それぞれ10代の娘がいました。ケイラ・クエバスさんとニサ・ミケンズさんの2人です。2人はともにロングアイランドに住む親友どうしでした。ところが、2016年の9月、ニサさんの16歳の誕生日の前日、幸せな時を過ごすはずだったのに、2人が帰宅することはありませんでした。2人の大切な少女は、自分の町で一緒に歩いている時に残虐にも殺害されました。
残酷さで知られるギャング集団「MSー13」のメンバー6人がケイラさんとニサさんを殺害した罪で起訴されました。ギャングのメンバーの多くは法律の抜け穴を利用して保護者のいない未成年者としてアメリカに不法入国し、ケイラさんとニサさんが通っていた高校に潜り込みました。
イーブリンさん、エリザベスさん、フレディさん、ロバートさん。今夜、この議場にいるすべての人があなた方のために祈っています。すべてのアメリカ国民があなた方のために祈っています。お立ち下さい。ありがとうございます。3億2000万人の国民が、あなた方のために心を痛めていることを知ってください。私たちは、あなた方を愛しています。ありがとうございます。
あなた方の悲しみの深さを知るすべはありませんが、ほかの家族が同じ苦しみを味わうことのないようにすることはできます。
MSー13などのギャングたちは、法の抜け穴を悪用してアメリカに入国しました。今夜、私は議会に対し、このひどい抜け穴をふさぐことを求めます。私たちは、移民法を修正し、国境警備を支援する新しい法案を既に提出しました。国境警備にあたる人たちもこのような悲惨な出来事を二度と起こさないために危険な状況で奮闘しています。
アメリカは思いやりに富んだ国です。アメリカは、世界中の困っている人たちや苦しんでいる人たち、不当な扱いを受けている人たちにどの国よりも多くの支援をしています。しかし、大統領として私が最も強い忠誠心、同情心、関心を持つのは、アメリカの子供たちと不遇な労働者、そして忘れられたコミュニティーの人々です。私は、アメリカの若者が成長して偉大な業績を達成してほしいと願っています。アメリカの貧しい若者に生活を向上させるチャンスを持ってほしいと願っています。
だからこそ、今夜、私は、あらゆる背景、人種、宗教、そして信条の国民を守るために、民主・共和両党の議員に協力を呼びかけているのです。私の義務、そしてきょう、議場に集まったすべての議員の義務は、アメリカ国民を守り、国民の安全、家族、地域社会、そしてアメリカンドリームを追い求める権利を守ることにあります。なぜなら、アメリカの国民もまた、「夢を持つ人たち」だからです。
今夜、この議場にはアメリカを防衛する活動でリーダーの役割を果たした人がいます。国土安全保障省の特別捜査官、セレスティーノ・マルティネスさんです。マルティネスさんは、「DJ」とか「CJ」と呼ばれています。本人は、どちらで呼んでくれても構わないと言っていますのでここでは、CJと呼ぶことにします。CJは、空軍で15年間働いたあと、国境警備当局の職員になりこれまで15年間、ギャングの暴力と戦い、危険な犯罪者を路上から排除してきました。厳しい仕事です。
ある時、MSー13のリーダーがCJの殺害を命じました。すぐに実行するようにとの指示でした。しかし、CJは、その恐怖にも屈しませんでした。去年5月、CJはロングアイランドでギャングのメンバーを摘発する作戦で指揮を執りました。CJの部隊はメンバー400人近くを逮捕し、このうち220人以上がMSー13のメンバーでした。
そして、国境警備当局は何千人ものMSー13のメンバーを国外に送還したり、アメリカの刑務所に収監したりしたのです。
ここでCJの業績を称えたいと思います。あなたは勇敢な人だ、ありがとう。
「(成功した)秘訣を教えてくれないか」と私がCJに聞いたところ、「私たちの方がギャングよりタフなだけです」という答えが返ってきました。私は、その答えがとても気に入りました。偉大な議会がなすべきことは1つ、早急に人員の増加を認めることです。私たちは、すぐに人員を増加するつもりです。
次の数週間で、下院と上院で、移民改革法案が採決に付されるでしょう。ここ数か月間、私の政権は移民改革に向けて超党派のアプローチを構築するために、民主・共和両党の議員と幅広く協議を重ねてきました。そうした協議を踏まえて、私たちは公正な妥協案として、両党に支持される詳細な法案を議会に提出しました。どちらの側も、希望するすべてを勝ち取ることはできないものの、アメリカに必要な改革をもたらす法案です。
その計画の4つの柱を説明します。第1の柱は、子どもの頃、親に連れられてアメリカに入国した180万人の不法移民に市民権取得への道筋を与えるという寛大な方針です。これによって、前の政権で対象となった人数のほぼ3倍にあたる人が対象になります。私たちの計画では、教育と仕事の面で条件を満たし、かつ人格に問題がなければ、12年後に完全なアメリカ国民になれます。
2つ目の柱は、国境警備の強化です。具体的には、アメリカの南の国境に偉大な壁を築くということです。またコミュニティーの安全を維持するために、CJのような英雄を増員します。犯罪者やテロリストに悪用されアメリカへの不法入国を許しているお粗末な抜け穴をふさぐことも私たちの計画の要点です。また、恐ろしく危険な慣行である不法入国者を捕まえたあとすぐに釈放する「キャッチ・アンド・リリース」を終わらせます。
第3の柱は、くじでビザを与えるのをやめることです。このプログラムは、技術や能力、そしてアメリカ国民の安全を考慮することなく無作為に永住権を与える仕組みです。今こそ、能力に基づく移民制度に移行すべきです。技術を持つ人、働く意欲のある人、アメリカの社会に貢献できる人、そしてアメリカを愛し尊敬する人に永住権を与えるべきです。
第4の最後の柱は、連鎖的な移民を食い止めることで、核になる家族を守るということです。現在の破綻した制度では、1人の移民が事実上無制限に親戚をアメリカに入国させることができます。私たちの計画のもとでは、呼び寄せることができるケースを本人の配偶者と未成年の子どもに限定します。この改革は、アメリカの経済にとどまらず、私たちの安全、そして将来にとって必要不可欠です。
数週間前にニューヨークで起きたテロは、抽せんでビザを取得する制度と、連鎖的な移民によって可能となってしまいました。テロの時代において、こうしたリスクを容認するゆとりはありません。
今こそ、こうした時代遅れの移民規則を改革して、21世紀にふさわしい移民制度を導入するべきです。
これら4つの柱は、民主・共和両党が歩み寄った結果、達成した成果であり、この歩み寄りによって安全かつ近代的で、合法的な移民制度を作ることが可能になるでしょう。
30年にわたって、連邦政府は、移民問題の解決を試みてきましたが、そのつど失敗してきました。この議会によって、それがようやく実現します。
何よりも重要なのは、これら4つの柱から法律が生まれることです。その時には、アメリカ第一主義を後押しする法案に署名するという私の譲れない約束を果たすことができます。さあ、一致団結し、政局をいったん端に置き、この仕事をやり遂げましょう。
薬物対策
こうした一連の改革は、「オピオイド」をはじめとする薬物依存症危機への対応を下支えすることにもなります。薬物依存がこれほどひどかった時代は過去にありません。ひどい状態です。この問題を何とかしなければなりません。アメリカでは、2016年に6万4000人が薬物の過剰摂取で命を落としました。1日につき174人、1時間で7人です。薬物問題に歯止めをかけるためには、密売組織と末端の密売人に対して、もっと厳しい姿勢で臨まねばなりません。
私の政権は、断固とした姿勢で、薬物の蔓延に立ち向かい、治療が必要な人や深く傷ついた人たちが治療を受けることができるように支援の手を差し伸べます。この戦いは、長く困難なものになるでしょうが、アメリカ国民が常にそうであるように、最終的には成功するでしょう。私たちは勝利を収めるでしょう。
今夜、私たちが見てきたように、最も困難な課題が、アメリカ国民から最良のものを引き出します。ニューメキシコ州にお住いのホレッツさんの家族の出来事は、このことを実に良く体現しています。ライアン・ホレッツさんは27歳で、アルブカーク市警の警官です。ライアンさんは、妻のレベッカさんとともにきょう、ここに来ていただいています。ライアンさん、ありがとうございます。
去年、ライアンさんは勤務中に、ホームレスの妊婦がヘロインを注射しようとしているところを目撃しました。「お腹の子供に害がある」と注意すると、妊婦は泣き始めました。妊婦は「行く当てもないが、生まれてくる赤ちゃんのために安全な住まいがほしい」とライアンさんに言いました。
その時、ライアンさんは神の声を聞いたと言います。「あなたはできる。だからやりなさい」という声でした。ライアンさんは、その声を聞いたのです。ライアンさんは、妻と4人の子供の写真を取り出しました。それから自宅に戻り、妻のレベッカさんに事情を説明しました。レベッカさんは、その場で養子縁組に賛成しました。ホレッツさん夫妻は、この新しい娘をホープ(Hope=希望)と名付けました。ライアンさん、レベッカさん、あなた方2人はアメリカの良心を体現しています。ありがとう。ありがとう、ライアンさん、レベッカさん。
私たちが国内で、強さと自信を取り戻すとき、国外でも強さと存在感を取り戻していくことになります。
国防 核戦力 IS
私たちは世界各地で、ならず者国家、テロリスト集団、そしてアメリカの国益や経済、価値観に挑む中国やロシアといった競争相手と対じしています。こうした恐ろしい危機に立ち向かっていく中で、私たちは、弱さが間違いなく紛争へとつながり、比類なき力こそが本当にすぐれた防衛の最も確実な手段となることを知っています。
こうした理由から、私は危険な国防費の削減をやめ、偉大なアメリカ軍に十分な予算をつけることを議会に求めます。
国防の一環として、私たちは核戦力を近代化し、再建しなければなりません。核戦力は決して行使されないことが望ましいですが、きわめて強力なものにすることで、他国やいかなる者からの侵略行為を抑止できます。おそらく将来いつか、世界各国が核兵器を廃絶するために協力する、魔法のような瞬間が訪れるかもしれません。残念ですが、今はその状況ではありません。悲しいことですが。
去年、私は同盟国と過激派組織IS=イスラミックステートを地球上から根絶するとも誓いました。1年が経って、有志連合が、イラクやシリア、そのほかの地域でISの人殺したちに最近まで支配されていた地域の100%近くを解放したことを報告できることを誇りに思います。しかし、まだ多くの課題が残っています。私たちは、ISを打ち負かすまで戦い続けます。
陸軍2等軍曹のジャスティン・ペックさんが今夜来ています。去年11月、(シリア北部の)ラッカ近くで、ジャスティンさんと戦友のケントン・ステイシー2等曹長は、市民が早期に安全に街に戻るため、ISが仕掛けた爆発物を建物から取り除く任務にあたっていました。
病院の2階で爆発物を取り除く作業をしていたときに、爆発によってケントン・ステイシーさんが重傷を負いました。ジャスティンさんは、爆弾が仕掛けられたとても危険な建物に即座に突入し、ひん死のケントンさんを見つけました。彼は傷口を圧迫し、ふさがった気道を確保するため、チューブを挿入しました。地上に運ぶまでの間、心肺蘇生術を20分間続けたほか、緊急手術をする時間も含めて2時間半にわたり、人工呼吸を続けました。
ケントン・ステイシーさんは、戦友であるジャスティンさんの無私の愛がなければ亡くなっていたでしょう。今、ケントンさんはテキサスで回復しつつあります。ラッカは解放されました。そして、ジャスティンさんは「勇気」を意味するVの字が入った青銅星章を身につけています。ペック2等軍曹、すべてのアメリカ国民があなたに敬礼します。
民間病院に爆弾を仕掛けるようなテロリストは悪です。私たちは彼らを壊滅させる以外に選択肢はありません。必要であれば、彼らを拘束して尋問できなければいけません。だが、はっきりさせておかなければならないのは、テロリストは単なる犯罪者ではないということです。彼らは不法な敵戦闘員です。海外で捕らえられた場合、テロリストはテロリストとして扱われるべきです。
過去、私たちは多くの危険なテロリストを愚かにも釈放し、その後戦場で彼らと再び出くわしました。ISの指導者、バグダディもその1人です。
グアンタナモ収容施設
きょう、私はもう1つ約束を守ろうとしています。ここに来る前に、軍の勾留政策を見直し、グアンタナモ湾の収容施設を維持するようにマティス国防長官に指示する大統領令に署名したところです。
ISやアルカイダとの戦いにおいて、拘束した場所を問わず、テロリストを拘束するためのあらゆる権限を持ち続けられるよう議会に求めます。多くの場合、それはグアンタナモ湾になるでしょう。
また、数か月前、アフガニスタンにいるアメリカ軍兵士の交戦規定が一新されました。
英雄的なアフガニスタン軍兵士と連携して戦うアメリカ軍は、人為的に設定された日程に、縛られることはないし、私たちの計画を敵に知らせることもないのです。
エルサレムを首都
私は先月、数か月前に上院で全会一致で承認されたことを実行しました。エルサレムをイスラエルの首都と認めたのです。
直後に、多くの国が国連総会でアメリカが主権国家として行った決定に反対しました。2016年、アメリカの納税者は、これらの国々に200億ドル以上の援助を行いました。
ですから、今夜私は、アメリカの海外援助が常にアメリカの国益にかなうこと、そして援助がアメリカの敵ではなく、友人にだけ届くようにする法案を通過させるよう議会に求めます。
世界各国との友好関係を強化するとともに、敵対国を明らかにします。
イラン核合意
イランの国民が腐敗した独裁政権の犯罪に対して立ち上がった時、私は黙っていませんでした。アメリカは自由を求めて勇敢に闘うイラン国民を支持します。
イランとのひどい核合意の根本的な欠陥に対処するよう議会に求めます。
トランプ政権は、キューバとベネズエラの共産主義・社会主義の独裁政権に対して、厳しい制裁を実施しました。
北朝鮮の核・ミサイル開発
しかし、北朝鮮の残虐な独裁政権ほど自国民を徹底的に容赦なく抑圧してきた体制はありません。北朝鮮は、核・ミサイルを無謀に開発しており、近いうちにアメリカ本土に脅威を与える可能性があります。それを食い止めるために、最大限の圧力をかける取り組みを遂行しています。
私たちは過去の経験から、現状に自己満足し譲歩を重ねることは、攻撃と挑発しか招かないと学びました。非常に危険な状況に置いてしまった過去の政権の過ちは、繰り返しません。
北朝鮮の政権の邪悪な性質に目を向けるだけで、北朝鮮がアメリカと同盟国に突きつける核の脅威の本質を私たちは理解することができます。
オットー・ワームビアさんは、バージニア大学で学ぶ勤勉ですばらしい学生でした。アジア留学の途中、オットーさんは北朝鮮ツアーに参加しました。その結果、このすばらしい若者は国家転覆を企てたとして拘束され、罪に問われました。恥ずべき裁判の結果、独裁政権はオットーさんに、15年の労働教化刑を言い渡しました。その後、去年6月に彼をアメリカに帰国させたときには、オットーさんは重体で、命が危険な状態でした。帰国してわずか数日後にオットーさんは亡くなりました。
オットーさんのすばらしい両親、フレッドさんとシンディー・ワームビアさんが、ここに来てくれています。オットーさんの兄弟、オースティンさんとグレタさんも一緒です。どうぞお立ちください。すばらしい人たちです。あなた方は世界を脅かすものに対する強力な証言者です。ありがとうございます。私たちは今夜、息子さんの記憶をアメリカ全土の決意とともに刻むことを誓います。ありがとうございます。
最後に、北朝鮮体制の不穏な本質を目撃した人がもう1人、ここにいます。彼の名は、チ・ソンホさんです。ソンホさんは1996年、北朝鮮で飢えに苦しむ少年でした。ある日、彼はわずかな残飯と物々交換しようと、列車から石炭を盗もうとしました。それくらい食べ物の入手は大変だったのです。その最中、彼は飢えで消耗し、線路上で意識を失いました。列車が彼の足の上を通過したときに、目を覚ましました。その後、彼は苦痛を和らげることもせずに、複数回の切断手術に耐えました。兄弟たちが彼を回復させるために、持っていたわずかな食べ物を彼に与え、自分たちは土を食べました。その結果、兄弟の発育に影響が出ました。後に、ソンホさんは短期間訪問した中国から帰国したときに、北朝鮮当局から拷問を受けました。彼を拷問した人物は、キリスト教徒と会ったかどうかを知りたがったのです。その後、彼は自由の身になろうと決意しました。
ソンホさんは、松葉づえをついて、自由を求めて中国と東南アジア中を数千マイル移動しました。彼の家族のほとんどが後を追いました。彼の父親は、脱北しようとして捕まり、拷問の末、亡くなりました。
現在、彼はソウルに住み、他の脱北者の支援にあたり、北朝鮮の体制が最も恐れること、つまり真実を北朝鮮に向けて放送しています。
彼には今、新しい足があります。しかし、ソンホさん、あなたがたどった道のりを忘れないよう、その古い松葉づえを今も持っていることを私は知っています。あなたが払った大きな犠牲が、私たちすべてにとって励みとなっています。どうぞお立ちください。ありがとうございます。
アメリカの理念
ソンホさんの体験は、すべての人の魂が自由の中で生きたいと切望していることの証しです。同じ自由へのあこがれが、250年近く前、アメリカという名の特別な場所を誕生させました。当時のアメリカは大洋と広大な荒野に挟まれた小さな入植地の集まりでした。しかし革命的な考えを持つすばらしい人の集まりでした。みずからを統治するという考え、みずからの運命を切り拓くことが出来るという考え、そして力を合わせれば世界全体を照らすことが出来るという考えを持つ人たちでした。
それこそ建国以来のアメリカの理念です。それこそアメリカが一貫して支持してきたことです。そのためにアメリカは常に努力し、常にやり遂げてきました。
この連邦議事堂の屋根の上には「自由の像」が立っています。自由を守るために戦い、行き、死んだ先人たちの記念像の中でこうこうと堂々と立っています。ワシントン元大統領やジェファーソン元大統領、リンカーン元大統領やキング牧師の記念像もあります。
(独立戦争の激戦地となった)ヨークタウンやサラトガの英雄、ノルマンディーの海岸や遠方の戦地で、尊い血を流した若いアメリカ人、太平洋の海やアジアの空で倒れた人たちの記念像もあります。自由はさらにもう1つのモニュメントの上に堂々と立っています。それがこの連邦議事堂です。生きたモニュメントであり、アメリカ国民を称えるモニュメントです。
(聴衆:USA、USA、USA)
英雄は過去にのみ存在するような国民ではありません。希望や誇り、アメリカらしさを守ろうとして私たちの周りで生きているすべての人たちこそが英雄です。
そうした英雄はあらゆる職場で働いています。彼らは家族のためにみずからを犠牲にしています。国内では子どもたちを養い、海外では、アメリカの国旗を守っています。強い母親や勇敢な子どもたちもいます。消防士、警官、国境警備隊、救急隊員、海兵隊員もいます。しかし彼らは何よりもまずアメリカ国民なのです。そしてこの連邦議事堂、ワシントンDC、この国は紛れもなく国民のものです。
私たちの責務は、国民を尊重し、国民の声に耳を傾け、国民を守り、常に国民に奉仕することです。
アメリカ人は芸術と音楽で世界を満たしています。科学の対象領域を広げ、新発見に導いています。アメリカ人は、決して忘れてはならないことを永遠に思い起こさせてくれます。人びとは、この国を夢みていたのだと。その人たちがこの国を作ったのだと。アメリカを再び偉大な国にするのは国民なのだと。
私たちがアメリカ人としての誇りと、戦いの大義を持っているかぎり、成し遂げられないことはありません。私たちの価値観に自信を持ち、国民を信頼し、神を信じているかぎり、決して失敗することはないでしょう。
私たちの家族は繁栄するでしょう。アメリカの国民は栄えるでしょう。そして、私たちの国は永遠に安全で強く、誇り高く、強力で自由であり続けるでしょう。
ありがとうございました。アメリカに神の祝福を。おやすみなさい。