東吉野村大字 小(おむら)に丹生川上神社中社があるが、
江戸時代から「蟻通明神」とも称された。
その名残は神社の東にある橋の名称にもみられる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/3f/2bdbac8fb1b1faee61309271687c2c01.jpg)
左手前の欄干に「蟻通橋」とあるのがみえますか?
蟻通神社については次のような話が語りつがれている。
蟻通明神(ありとおしみょうじん)
むかし、お殿さんが、
「年寄りは飯を食うし、はたらきもない。山に捨ててしまえ」て命令を出さはってん。
ところが、あるところに、ひとりのむすこがおって、
親を山に捨てるのはいややというて、家の中に芋穴を掘って父親を隠したんやと。
ほんで、毎日食べ物を運んで養うてたんや。
あるとき、お殿さんにとなりの国から難しい問題を出してきたんや。
けど、だれも答えが分かるもんがおらへん。
その問題のひとつは、七曲の玉に穴があいていて、「この穴に糸を通してみよ」いうことやった。
むすこは、芋穴のなかの父親に尋ねてみた。
父親は、
「そりゃ、蟻の足に糸をつけて穴の中に入れて、出口の穴に蜜をぬっといたらええ。
蟻は蜜を慕うて行くから、糸がとおる」いうて教えてくれた。
二つめの問題は、四角い木があって、本と末がわからへんねんけど、
「本と末を当ててみい」いうことやった。
父親は、
「そりゃ、水につけたら分かる。もとのほうが重たいから、かすかに沈む」いうた。
さいごは、「灰で縄をこしらえてみい」いうことや。
父親は、
「そりゃ、なんでもないことや。縄に塩をぬって焼いたら形が残る」いうた。
むすこはさっそくお殿さんのとこへ行って、答えを教えたんやて。
お殿さんは喜んで、むすこに、
「ほうびをやろう」いわはった。
むすこは、
「じつは、これこれで、私の父親を隠して養うていますが、
三つの問題は、みな父親が答えてくれました。
どうか、父親が死ぬまていっしょに暮らせるように、
山に捨てんでもええようにしてください」て頼んだんやて。
お殿さんは、年寄りの知恵を認めて、それからは、
年寄りを山に捨てるいうことをやめにしてんて。
この孝行息子をまつったあるのが蟻通明神やねん。
原話:竹原威滋・丸山顕徳編『東吉野の民話』
語り手:坪井貞幸(東吉野村小)
再話:村上郁 不許転載
東吉野の子だもたちはこんな話を聞いて
親孝行の大切さを実感したのですね。
この話は文献的には、『枕草子』(226段)にも載せられており、
また、能にも「蟻通」というのがありますよ。
江戸時代から「蟻通明神」とも称された。
その名残は神社の東にある橋の名称にもみられる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/3f/2bdbac8fb1b1faee61309271687c2c01.jpg)
左手前の欄干に「蟻通橋」とあるのがみえますか?
蟻通神社については次のような話が語りつがれている。
蟻通明神(ありとおしみょうじん)
むかし、お殿さんが、
「年寄りは飯を食うし、はたらきもない。山に捨ててしまえ」て命令を出さはってん。
ところが、あるところに、ひとりのむすこがおって、
親を山に捨てるのはいややというて、家の中に芋穴を掘って父親を隠したんやと。
ほんで、毎日食べ物を運んで養うてたんや。
あるとき、お殿さんにとなりの国から難しい問題を出してきたんや。
けど、だれも答えが分かるもんがおらへん。
その問題のひとつは、七曲の玉に穴があいていて、「この穴に糸を通してみよ」いうことやった。
むすこは、芋穴のなかの父親に尋ねてみた。
父親は、
「そりゃ、蟻の足に糸をつけて穴の中に入れて、出口の穴に蜜をぬっといたらええ。
蟻は蜜を慕うて行くから、糸がとおる」いうて教えてくれた。
二つめの問題は、四角い木があって、本と末がわからへんねんけど、
「本と末を当ててみい」いうことやった。
父親は、
「そりゃ、水につけたら分かる。もとのほうが重たいから、かすかに沈む」いうた。
さいごは、「灰で縄をこしらえてみい」いうことや。
父親は、
「そりゃ、なんでもないことや。縄に塩をぬって焼いたら形が残る」いうた。
むすこはさっそくお殿さんのとこへ行って、答えを教えたんやて。
お殿さんは喜んで、むすこに、
「ほうびをやろう」いわはった。
むすこは、
「じつは、これこれで、私の父親を隠して養うていますが、
三つの問題は、みな父親が答えてくれました。
どうか、父親が死ぬまていっしょに暮らせるように、
山に捨てんでもええようにしてください」て頼んだんやて。
お殿さんは、年寄りの知恵を認めて、それからは、
年寄りを山に捨てるいうことをやめにしてんて。
この孝行息子をまつったあるのが蟻通明神やねん。
原話:竹原威滋・丸山顕徳編『東吉野の民話』
語り手:坪井貞幸(東吉野村小)
再話:村上郁 不許転載
東吉野の子だもたちはこんな話を聞いて
親孝行の大切さを実感したのですね。
この話は文献的には、『枕草子』(226段)にも載せられており、
また、能にも「蟻通」というのがありますよ。
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