竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

四季咲きの薔薇//日本口承文芸学会研究例会★「枠物語」をめぐって★白百合女子大10月19日

2013年09月28日 | 日記
少しずつ秋らしくなって来ました。
みなさん、お元気ですか?

我が家の庭にも四季咲きの薔薇が見事に咲いてくれました。


トロル(ノルウエー)とサンタクロース(リトアニア)と小びと(ドイツ)とともに記念撮影!
薔薇とヨーロッパのメルヘン人形、なかなかおもしろいショットの写真となりました。

さて、今日は、日本口承文芸学会65回例会のご案内です。

■日時 10月19日(土)午後1時~4時30分

■会場 白百合女子大学 2号館地階 2008教室
    京王線仙川駅より徒歩10分
 大学アクセスマップ参照!

■内容  モンゴル説話集『シッディ・クール』について 
              西脇隆夫(名古屋学院大学教授)
     
     『シンドバード』について
              西村正身(作新学院大学教授)
     
     日本の継子譚の形成を考える―束で伝わる昔話群から―
              小島瓔禮(琉球大学名誉教授)


------案内の言葉より----------

「枠物語」について

今年一月に西脇隆夫編 『モンゴル説話集シッディ・クール』 (渓水社)が刊行されました。
この物語はインドの『屍鬼二十五話』という枠物語がチベットに伝わり、
「屍語故事」となり、モンゴルに伝えられ、「シッデイ・クール(喜地呼爾)」としてまとめられたものです。
ここには全部で二十六話の物語が枠物語にくみこまれていますが、
このシッディ・クールの伝本は多く、
そのすべてが比較検討されているわけではありません。
また口承文芸との関係も複雑なものがあったのではないかと想像されます。
そのことはこの編著で提示された類話資料からも推測できます。

個々の説話の類話を比較するだけでも、説話がインドから東西に伝播した様子が浮かび上がるでしょうが、
このような枠物語としてまとまった伝承形態をとっていることに注目してもよいのではないでしょうか。
さらにこの枠物語という伝承のされ方は『鸚鵡七十話』や『千夜一夜物語』『デカメロン』
『カンタベリー物語』につながるものであり、広い分布を示しています。
そこで、「枠物語」を素材に説話の伝承の在り方について考えてみたいと思います。
     
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今、北海道にきています。明日、シンポジウム「グリム童話とドイツ伝承文学における父親像と母親像」で
発表予定です。
9月8日ブログ参照ください。
                           

奈教大・伝統と文化プログラム 「語りの講座パートIII」 開講迫る!申込み:9月25日~10月4日です。

2013年09月21日 | 日記

「地域と伝統文化」教育プログラムでは4年間にわたり「語りの入門講座」を実施し、
50名を越える語り手を養成してきました。


和気あいあいの講座風景 昨年の講座より 


語りのノウハウについて村上講師の話を真剣に聴く受講生たち


奈良に伝わる仏教説話、鬼や龍の話から、悲恋や母子の人間愛の物語をレパートリーとする語り手たちは、
奈良教育大学他で毎夏年開催される絵本ギャラリーや大学図書館「絵本のひろば」で地域の子どもたちに奈良の民話を語ってきました。
また、本学の学生・院生もその活動をサポートしてくれています。


絵本を見ながら語りに聴き入る子どもたち  奈良教育大絵本の広場にて


今年度もそのような語り手たちや本学の学生・院生を対象に、
語りの世界の面白さを堪能すると同時に語りのノウハウをさらに身につけて、
「学ぶ喜び」を体験することを目的として「語りの講座パートⅢ」を開講するこすることとなりました。
児童や生徒、子どもや孫に民話を語ってみたい方々の参加をお待ちしています。

◇ 日時: 火曜日午後2時~午後3時30分(下記日程)
10月15日・29日、11月12日・26日、12月3日・全5回開講

◇ 会場: 奈良教育大学 講義棟3階 308教室
(JR奈良駅または近鉄奈良駅より約10分 市内循環バス「高畑町」下車)

◇ 講師:本学名誉教授 竹原 威滋、KCN放送事業部係長 植田 一宏
  語り手:村上 郁

今年の講座の特徴:

 ★私が学生時代にドイツ語で読んですごく感激したヴィーヘルト童話について
  作家の紹介と「魔女の子」の語り

  私が民話研究をライフワークにしたきっかけはまさにヴィーヘルト童話なんです。
  そのへんの事情については下記のサイトの音声ファイルを聴いてください。
  ならどっとFM「ほのぼのラジオ-民話の魅力を語る」ゲスト出演! (35分)

 ★ナーミン発行の『子どもと家庭のための奈良の民話』について
  再話をされた村上さんの本づくりの苦労と日常語による再話とは!

 ★語りの本づくりと並んで語りの音声・映像作品作りのノウハウを
  特にKCN放送に植田さんにお願いして講義してもらいます。


学生諸君、ナーミンの方、語りに興味ある方、是非、ぜひ、ご参加ください!

【申込期間】9月25日(水)~10月4日(金) 【参加費】無料

【申込方法】FAX またはe-mail で講座名・氏名・年齢・住所・電話番号・e-mail
アドレスを記入の上、下記に申し込んでください。先着順とします。(定員50名)

【問合わせ先】奈良教育大学 青木智史研究室
          Tel & Fax: 0742-27-9188 Mail: aoki {ATマーク} nara-edu.ac.jp

詳しい内容は大学HPの「地域と伝統文化プログラム」をごらんください。


『天からおりてきた河』インド・ガンジス神話が寮美千子氏の文で絵本になりました!

2013年09月14日 | 日記
奈良に在住し、活躍する作家寮美千子さんについては
これまで、二つの絵本をブログで紹介してきました。

信貴山縁起絵巻『空飛ぶ鉢』
東大寺大仏縁起絵巻『生まれ変わり』

今回は、インド・ガンジス神話『天からおりてきた河』です。



寮さんは、2004年にインドを旅行し、神聖なる河ガンジスのほとりに立ち、
インドの人々の雄大な神話に触れ、その感動をブログに書いておられます。

■インドみやげ/わたしの「ガンガー物語」

そして、その感動を土地の人々の口伝えをもとに物語をブログで公表されました。

■大地に流れおちた天の河 聖なる河ガンガーの物語

その原稿を推敲して、9年後にこんな素晴らしい絵本にされました。
画家は、山田博之さんです。


ヒンズーの多神教の神々も色鮮やかに描かれています。

物語は、

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ヒョウタンから生まれた6万人の王子は、聖者の怒りに触れ、一瞬のうちに灰に。
その魂の供養には、天上界を流れるガンジスの聖なる水が必要だ。
ガンジスを地上に招くための壮大な旅がはじまる。
それは神々をも巻きこんで…。インドの人々が、いまも信仰する神々の物語。
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是非、手に取って読んでみてください!

『天からおりてきた河』

ようやく、秋らしくなってきましたね。

読書の秋、稔りの秋、

私は今、北大でのグリム・シンポの準備で四苦八苦してます!

では、また、1週間後にブログでお会いしましょう!



★シンポ「グリム童話とドイツ伝承文学における父親像と母親像」9月29日北大にて・ご案内★

2013年09月08日 | 日記
日本独文学会の秋季研究発表会において私どものグリミン(グリムと民間伝承研究会)によってシンポジウムが行われます。

今日は、その案内をさせていただきます。

9月29日(日)午前10時から午後1時まで
会場 北海道大学高等教育推進機構(旧教養部)
〒060-0817札幌市北区北17条西8丁目
Tel.: 011-727-9300 (学会当日のみ)
E-Mail: tagung2013hokudai@jgg.jp

詳しくは日本独文学会HPを参照!

シンポジウムVII(10:00~13:00) B会場(N1講義室)

グリム童話とドイツ伝承文学における父親像と母親像
                          司会:野口 芳子
1. ハーメルンの笛吹き男伝説の場合 溝井 裕一
2. 『灰かぶり・千枚皮』の場合 ―東西の民間説話を巡って― 竹原 威滋
3. 『少年の魔法の角笛』に基づく音楽作品の場合 山本 まり子
4. ドイツ語圏の現代伝説の場合 金城ハウプトマン朱美
5. グリム童話全体における父親像と母親像 野口 芳子

今回は、札幌ですので、秋の北海道の観光を兼ねて、いらっしゃいませんか?

来られない方にも、どんなシンポジウムか、発表要旨を載せますので、お読みくださいね。

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グリム童話は初版の第1巻が1812年に、第2巻が1815年に出版されたので、2012から2015年の3年間はグリム童話出版200年祭に当たる。
グリム兄弟が編集した『子供と家庭のメルヒェン集』は、世界中で聖書の次に普及した本といわれている。
多くの読者を獲得したグリム童話の影響は甚大なものといえる。

グリム兄弟は1810年の初稿から1857年の決定版まで、48年間に8回もテクストの改変を行った。
それに対して『ドイツ伝説集』の方は1度も改変せず、伝承をそのまま収めたとされている。
一方、民謡集『少年の魔法の角笛』はアルニムやブレンターノの提案で収集されたので、ロマン派文学色が色濃く出たものといわれている。
出版の動機が異なるこれらの伝承文学のなかには、語り手が所属していた昔の社会の父親や母親が出現していると思われる。
それとも改変された童話集には、編者の属する近代の父母像が出現しているのだろうか。
伝説集や民謡集と比較することによって、童話集に登場する父母像が、ザイプスやボッティックハイマーが主張するように、近代のビュルガーの価値観に合わせて書き換えられたものか否かについて検証していく。

伝承文学が個人の文学作品と異なる点は、多くの人々に担われてきたということである。
そこには担い手が所属する社会規範が反映している。
このシンポジウムでは、グリム兄弟が収集したメルヒェン、伝説、民謡を取り上げて、そのなかに登場する父母像について、さらにドイツ現代伝説に出現する父母像について考察する。

発表1(溝井裕一)では、「ハーメルンの笛吹き男」伝説を取り上げ、子どもの失踪を嘆く人物が、母親から父親に変えられていく過程を検証しながら、家族像の変遷について考察する。

発表2(竹原威滋)では、各地に流布する「灰かぶり」の異型に注目し、民族や社会の相違により、父母像がどのように異なるのかを見ていく。

発表3(山本まり子)では、『少年の魔法の角笛』の130曲の詩を分析し、父母と子どもの関係に焦点を当てながら、作曲当時の社会を浮かび上がらせる。

発表4(金城ハウプトマン朱美)では、ドイツ語圏現代伝説に登場する父母像を分析することによって、現代ドイツが抱える家族問題について考察する。

発表5(野口芳子)では、グリム童話211話全体を調査し、そのなかに登場する父親や母親はどのような存在なのか考察する。ここでは個々のメルヒェンを取り上げたケーススタディーではなく、包括的見解を提示する。

伝承文学のなかの父母像は近代家族の父母像より厳格で残酷である。
この現象は個人的事項というより、社会的事項として把握しすべきであろう。
このシンポジウムでは、その理由を文学や心理学だけでなく、社会学、歴史学、法学、などの観点から学際的に考察する。
同時に、母性愛や父性愛が時代によって社会によって変遷するもの、すなわち「ジェンダー」であることも証明していく。
(シンポジウム 司会者  野口芳子)
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ところで、私の発表は、『灰かぶり・千枚皮』の場合 ―東西の民間説話を巡って― です。

みなさま、グリムの「千枚皮」ってご存知ですか。
実は、日本の「鉢かつぎ姫」も同じタイプの話であることに気がつきました?



イギリスの「イ草の頭巾」も、日本の「姥皮」もみんな同じ話型なんです。

だって、主人公は、継母に家を追い出される。
その時、どの主人公も、何かのかぶりものでカモフラージュしてよその家に奉公のいくのですから。

「鉢かつぎ姫」は、自分の身分を憐れんで、川に身投げしようとしても、鉢のお蔭で、浮いて死にきれません。


やがて中将殿の家に奉公にいき、4人目の息子、宰相殿と巡り合うのです。


このタイプの東西に民話、基本的な筋はほぼ同じでも、ジェンダーの視点からみれば、面白いことが、見えてきます。

そんなことを発表しようと思っています。

今日は、ながいブログになってしまいました。

みなさま、すっかり秋らしくなってきましたね。
季節の変わり目、ご自愛くださいね。