竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その5:グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルク

2012年11月24日 | 日記
グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルクを訪ねます。




ドイツ鉄道・DBのマールブルク駅からすぐ近くにあるエリザベート教会です。
聖エリザベートは、この町の守護聖人です。




9月中旬、観光客が憩う市役所前広場です。




市役所の裏側、少し行くと、マールブルク大学の昔の建物があります。
グリム兄弟はここで大学生活を送りました。
この建物に今も大学の改革派教会があります。




その壁には、グリム童話「星の銀貨」の絵が掲げられています。




市役所の前から北西方向の通りにグリム兄弟が学生時代に下宿していた家があります。




「グリム兄弟の家」 1802年から3年間住んだところです。
経済的に苦しかったグリム兄弟は、この建物の2階の、右手の路地(坂道)に面した小さな部屋を借りて住んだのです。




お城に通じるその坂道を登って、らせん階段を登ると、階段の出口に来ます。




そこからはマールブルクの町並みが見えます。
左手に見えるルター派プファール教会の前をさらに登っていくと、




グリム兄弟の大学の先生、サヴィニー教授の家に着きます。
グリム兄弟はこの先生に法律学・文学・民俗学を学びました。




グリム兄弟はサヴィニー先生に見込まれ、先生の家によく出入りし、
多くの本も借りて、貪るように読みました。

グリム兄弟は、下宿から、山の中腹にある先生の家まで、よくもまあ、
先生に会いたい一心で、坂道、らせん階段を何度、息を切らして歩いたことでしょう!
私も往時をしのびながら、一生懸命、登りました。

グリム兄弟は先生の家で、『少年の魔法の笛』の編者
ブレンターノ、アルニムとも知り合いになりました。
その出会いをきっかけにグリム兄弟は、やがてメルヒェンを蒐集することになったのす。




さらに山腹を登ると、ヘッセン方伯のお城に着きます。
シンデレラもこんなお城の舞踏会で王子さまに会ったのでしょうか!!




お城の近くのお家には、7人の小びともいましたよ!!




お城の裏手には、「魔女の塔」もありましたよ!!


マールブルクの町はいたるところでグリム童話の世界に浸ることができます。

グリムによる観光・町おこし、さすがドイツならでは ですね。

次回は
★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その6:グリム兄弟が教授として過ごしたゲッティンゲン です。

お楽しみに!











★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて!

2012年11月17日 | 日記
しばらく途絶えていた★ドイツ・メルヘン街道を歩く★を再開します。
今日は★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて!です。

★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3:グリム兄弟がメルヘンを集めた町カッセル
をまだご覧でない方は、まず、ここをクリックして見てください!




カッセルのグリム兄弟博物館にはご覧のように、
グリム兄弟がいつも所持していたグリム童話の初版と第2版が展示されています。
下段の2冊が初版です。上段の3冊が第2版です。
いづれもユネスコの「世界記録遺産」に登録されています。
第2版は1819年に出版されました。その第2巻は上記写真の上段右手の本です。




この写真は、拡大写真です。左ページを飾る口絵は、グリム童話の語り手ドロテア・フィーマン夫人です。
グリム兄弟の弟で画家のルートヴィヒ・エミール・グリムが描いたエッチィングです。

カッセル近郊の村に住む無名のおばさんを本の巻頭に載せるというのは
当時としては前例のないことでした。
グリム兄弟は名もない語り手を大切にしたのです。


フィーマン夫人はグリム童話第2巻の75話のうち、なんと14話にお話を提供しています。
おもなものを挙げると、

ガチョウ番の娘、かしこい百姓娘、もの知り博士、鉄のストーブ、悪魔のすすだらけの兄弟、
かわいそうな粉屋の小僧と子猫、悪魔とそのおばあさん。

フィーマン夫人はカッセルの近郊の村ニーダーツヴェールン村に仕立て屋の妻として住んでいて、
野菜等を町に売りに行き、その帰りにグリム兄弟の家に寄って、お話を語っていたそうです。

その村を訪ねました。




村の入り口の風景です。
なんやら大きな本が3冊、道に横たわっていますね。




実はこれはグリム童話第2版3巻本の大型レプリカなんです。
さすが「メルヘンおばさん」の村ですね。




少し歩いていくと、左手にフィーマンの家が見えててきます。




これが「メルヘンおばさん」の家です。




ここに1787年から98年までグリム兄弟の「メルヘンおばさん」
ドロテア・フィーマン(旧姓、ピアソン 1815年没)が住んだ
と表示された銘板が掲げられています。




また、フィーマン夫人の胸像も掲げられています。




フィーマン夫人も通っていた、この村の教会(カルヴァン派)です。




その教会のそばの「村の共同墓地」にはフィーマン夫人の墓碑も立っています。
そこで記念写真を撮りました。




フィーマン夫人は、この村からさらに車で15分ほどはなれたレンガースハウゼン村で
ビール醸造所の娘として生まれた。
この道はニーダーツヴェールン村からレンガースハウゼン村に通じる道です。




レンガースハウゼン村にあるビール醸造所の建物です。その壁に次の銘板が掲げてあります。




グリム兄弟に最も多くのすばらしいメルヒェンを提供した
カタリーナ・ドロテア・フィーマン(旧姓ピアソン)は
1755年このクナル・ヒュッテ(居酒屋)で生まれた。
子どもの頃、ドロテアは父親の居酒屋で多くのお話や伝説を
お店に来た客たち(商人、職人、運送人など)から聴いて、
のちにグリム兄弟にさらに語り伝えたわけである。




現在の醸造所・ビール工場の様子。




北ヘッセン地方のぜいたく
北ヘッセンのビール「ヒュッテ」




ビール工場の隣にビア・ホール(居酒屋)があります。
私が訪ねた時は、ちょうど結婚式の披露宴で賑わっていました。




その前の中庭には泉があり、その中央には人魚姿のフィーマン像がありました。




このビア・ホールでは、現在も毎土曜日夕方17時30分から「フィーメニン」と一緒に
お話し会(メルヘンの時間)が行われているそうです。

少し長いブログになりましたが、
「グリム兄弟のメルヘンおばさん」が今もこのように
村の人たちに愛されていることがおわかりいただけたでしょうか。

次回は
★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その5:グリム兄弟が学生時代を過ごしたマールブルクです。

お楽しみに!



11月のグリム童話講演:17日(土)LIC羽曳野/20日(火)平群町中央公民館

2012年11月11日 | 日記
私の11月の講演会は下記の通り開催されます。
よろしかったら、お出でください。


■グリムまつり: グリム童話の世界へようこそ! 

講師  竹原威滋(奈良教育大学名誉教授)
 日時 11月17日(土)午後1時30分~3時30分
 場所 LICはびきの 2F 大会議室
 定員 小学生以上 50名 無料です
 主催 羽曳野市子ども文庫連絡会 
 後援 羽曳野市教育委員会
   子どもゆめ基金助成活動
 問い合わせ 菅谷純子 TEL 072-958-5470

グリム童話初版出版から200年にちなんで、ドイツ・メルヘン街道を辿りながら、
グリム兄弟の人生とグリム童話の成立過程を紹介し、伝承メルヘンの魅力に迫ります。
「お話の森」の上野さんに「蛙の王さま」を語っていただき、
さらにグリム童話「蛙の王さま」の各版を比較しながら、
グリム兄弟がどのようにして「聴くメルヘン」 から「読むメルヘン」へ仕立て上げ、
今日世界の子どもたちに親しまれるに至ったかを お話しましょう。
それではお話のはじまり、はじまり。

詳しくは 羽曳野講演会をご覧ください。


■「昔話とメディア」 ― グリム童話「いばら姫」をめぐって ―

講師 竹原威滋(奈良教育大学名誉教授)
語り 村上郁(京田辺市立中央図書館おはなしサークル“がらがらどん”主宰)
 日時 平成24年11月20日(火) 午前10時~12時
 会場 平群町中央公民館大ホール
 主催 平群町子ども読書活動推進ネットワーク
 参加費:無料
 申込み:不要
 そのほか:託児あり(要申込500円、申込み締切11月12日)
 問合せ先:あすのす平群(平群町立図書館)TEL 0745-46-1120

ネット社会に生きる子どもたちにとって、音声による伝承文化にふれあい、
文字による読書に親しむことがとても大切です。
講座では、グリム童話出版から200年にちなんで、
グリムの「いばら姫」を取り上げ、語りを聴いて、
絵本を一緒に読んで、さらにアニメを見て、三つのメディアの体験を通して
語りの魅力に迫ります。
地元 平群の民話 役行者の伝説「鬼取山の話」も語ります。
それではお話のはじまり、はじまり。

詳しくは 平群講演会をご覧ください。


ナーミンお話会、毎週水曜日に奈良市北部図書館で開催!

2012年11月08日 | 日記
ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)のお話会は
奈良教育大学絵本の広場では第2水曜日の午前10時より開催していますが、

今回新たに毎週水曜日午後3時半より奈良市北部図書館で開くことになりました。



近鉄「高の原駅」を降りて、改札を出て、右手に行き、陸橋を渡って左手に行くと、
「奈良市北部会館」の建物が見えます。
昨日、11月7日に初回のお話会がありました。
建物前の木も紅葉し、秋の風情を感じました。
この建物の4階に「奈良市北部図書館」があります。



これが、今回のお話会のプログラムです。



奈良の民話「爺にすいつこう」を語るナーミンテラー
そのあと、グリム童話「赤ずきんちゃん」が語られ、
ゲーム遊びもしました。



最後に絵本「いたずら 子ねこ」を図書館のスタッフに読み聞かせしていただきました。


お母さんに連れられた子どもたち、おばあさんたちも楽しく聴いてくださり、
私もおとぎ話の世界に、しばし吸い込まれました。

奈良の子どもたち、
毎週水曜午後は、お母さんたちと一緒にきてね!!

武庫川女子大でのグリム・シンポ盛会のうちに終了! ご参加ありがとう!

2012年11月01日 | 日記
今年はグリム童話が出版されてから、200年の記念すべき年
日本においても、ドイツからカッセルのグリム兄弟博物館からラウアー館長を迎えて
東京と関西でグリム・シンポジウムが開催されました。

■東京会場は、東洋大学創立125周年記念行事として大野寿子准教授のイニシアティブのもと
 「グリム童話200年のあゆみ-日本とドイツの架け橋として」と題して盛大に開催された。
 そのことに関しては前回のブロブで報告しましたので、ご覧ください。

■関西会場は、武庫川女子大学の野口芳子教授の科研究費給付による研究の成果のひとつとして
  「グリム童話刊行200年記念シンポ≪グリム童話とジェンダー ―文字・図像・音楽にみる家族像―≫」
 と題して日本独文学会の会員や多くの学生、グリム童話愛好家も集い、開催された。
 

<基 調 講 演>ベルンハルト・ラウアー(グリム兄弟博物館館長) 独日通訳:大野寿子
     文字から図像へ―19-20世紀における『子供と家庭のメルヒェン集』 挿絵史




講演中のラウアー博士


ラウアー氏は、ユネスコの世界記録遺産に登録されているグリム兄弟が所持していたグリム童話
初版・2版の紹介から、グリム兄弟の弟で画家のエミール・グリムの挿絵、そして
ロマン派、ユーゲント・シュティールから現代にいたるグリム童話の挿絵の歴史を
スライドを交えてわかりやすく講演された。




20世紀のメルヒェン「白雪姫」

オペラや映画としてもグリム童話は親しまれている。





メルヒェンの受容:文化的相違

日本の「狼と7匹の子ヤギ」、アフリカの「ブレーメンの音楽隊」
そしてアメリカ・ニューヨークの闇の街の「白雪姫」
時代は変わっても、世界のどこでも親しまれるグリム童話!!



<シ ン ポ ジ ウ ム>グリム童話とジェンダー ―文字・図像・音楽にみる家族像―
① 溝井裕一(関西大学准教授): 「解雇された兵隊」と近世の家父長制
② 金城ハウプトマン朱美(ドイツ語圏口承文芸研究者): 「ヘンゼルとグレーテル」から見る家族像の変遷
③ 山本まり子(聖徳大学教授): オペラにおける「ヘンゼルとグレーテル」 ―ジェンダーの視点から―
④ 竹原威滋(奈良教育大学名誉教授): グリム童話とヨーロッパ民間伝承にみる「白雪姫」のジェンダー観
⑤ 野口芳子(武庫川女子大学教授): グリム童話「白雪姫」に見られる家族像




左から順に、溝井、金城ハウプトマン、山本、竹原、野口の各発表者


シンポジウムの内容については、神戸新聞の10月29日の朝刊の記事を引用しておきます。―



 グリム童話刊行200年を記念したシンポジウムが28日、西宮市池開町の武庫川女子大学で開かれた。
「グリム童話とジェンダー 文字・図像・音楽にみる家族像」をテーマに、研究者たちがさまざまな作品を
取り上げながら発表。学生ら約150人が耳を傾けた。

 グリム童話(正式名称『子どもと家庭のためのメルヒェン集』)は200年前にドイツでグリム兄弟が編さん。
170以上の言語に訳されて世界中で親しまれている。
 シンポジウムでは、関西大学の溝井裕一准教授ら5人の研究家が登壇した。

 グリム童話のいくつかの物語に登場する「兵隊を解雇された男」を、溝井准教授は
「父権制社会において家長たりえなかった男性」と位置付け、当時の時代背景に重ねた。

 ドイツ語圏口承文芸研究者の金城ハウプトマン朱美さんは、「ヘンゼルとグレーテル」が
初版から改訂する中で、登場人物の母親を「悪い継母」に変えたことが、
読者の子どもたちに継母は冷酷だという印象をすり込んでいると指摘した。

 聖徳大学の山本まり子教授は、欧米で上演されるオペラ版の「ヘンゼルとグレーテル」では、
魔女役を男性テノール歌手が演じることが多いことを紹介し、公演映像も流した。

 奈良教育大学の竹原威滋名誉教授と武庫川女子大学の野口芳子教授は、白雪姫を題材に、
結婚観や女らしさ、美しさについて語った。

 武庫川女子大学1年生(19)は「小さいときから好きな白雪姫も、
自分で常識だと思っていたことが覆されたのが面白い。知らない話が多くて新鮮だった」
と話していた。(記者:金山成美)(2012/10/29 09:20)


ブログをお読みいただいている方々のなかにも
遠路はるばる来ていただいた方もいらっしゃいます。
どうもありがとうございました。

これからもグリム童話が未来に向けて、さらに多くの人々に愛されるよう
私も研究に励み、その成果をみなさまに発信していきます。

長いブログになりましたが、これに懲りず、毎週1度は更新しますので、見てくださいね。

ホームページも更新しました。