竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

民俗学者:赤坂憲雄「東北の民俗知 今こそ復権」讀賣新聞記事より

2011年03月28日 | 日記
東北地方で長年フィールド・ワークをしてこられ、
「東北ルネッサンス」を唱えておられる民俗学者:赤坂憲雄氏の
言葉には、無念さの奥に、ほとばしる光を感じる。


「めまぐるしく場面が転換する。津波から原発へ。言葉を失っていた。やがて、いくつ
もの問いがあふれ出す。なぜ、またしても東北なのか。なぜ原発なのか。なぜ、東京の
「負」を東北が背負わされるのか。それが現在の事実か、それが構造か。東北が依然と
して強いられている辺境としての役割と、それはまったく無縁といえるのか。

巨大なできごとが起こっている。東北は変わる。日本も大きく変わる。どのように変
わるのかを語ることはむずかしいが、変わらざるをえない。わたしたちは幸か不幸か、
きっと、この地球の未来図を先取りするように、いま・ここに生かされているのである。

いまこそ東北ルネサンスについて語らねばならない。ここでの復興とはしかし、元に
復することではない。未知なる地平へと踏み出すことだ。たとえば、東北から、新たな
人と自然を繋ぐ世界観を創ることだ。そのためにこそ、人としての身の丈に合った暮ら
しの知恵や技を、民俗知として復権させねばならない。人智が制御しえぬものに未来を
託すことはできない。」

(赤坂憲雄「東北の民俗知 今こそ復権」読売新聞2011年3月23日朝刊より)

       ↑↑ このサイトをクリックしてください。記事の全文を見れます。
       その後、読みにくければ、サイトの上部の「View full size」をクリックして見てください。
       大きな文字で、読めますよ!

さすが、東北をこよなく愛する民俗学者である。

私たちは常に過去の歴史を、先祖の人たちの体験「民俗知」を記憶し、
未来に語り継いでいかねばならない。

私が思うに、日本人が体験した危機的な出来事「国難」は次の四つである:

1.白村江の戦い(663年 日本が唐に敗れた海戦)
2.文永・弘安の役(13世紀後半の2度にわたる蒙古軍の日本来襲)
3.明治維新(1853年ペリー来航から1871年廃藩置県による明治政府の成立)
4.太平洋戦争(1941年真珠湾攻撃から1945年広島・長崎原爆投下による終戦)

日本人はこれらの危機を乗り越えてきた。

これに次ぐ、いや日本最大の危機、それが今回の東日本大震災である。

赤坂憲雄氏は言う:

「やがて東北学の第二楽章が幕を開ける。方位は定まった。将来に向けて、広範な記憶
の場を組織することにしよう。途方に暮れているわけにはいかない。見届けること。記
憶すること。記録に留めること。すべてを次代へと語り継ぐために、希望を紡ぐために!」


「不屈の日本!」The Wall Street Journal 日本語版の記事より

2011年03月23日 | 日記
東日本大震災に際し、ブロッガーとしてできること、
それは、ブログで被災地の方々に応援のメッセージを送ることです。

今回は、外国からみれば、「日本は尊敬されているんだ」と
力づけられる新聞記事を紹介します。(少し古い記事ですが)

http://jp.wsj.com/Japan/node_196990

2011年3月14日
The Wall Street Journal 日本語版

【社説】不屈の日本

2011年 3月 13日 13:37 JST

 11日に日本を直撃したような規模の地震からは、どの国も無傷ではいられな
い。 地震では少なくとも 1000人が死亡した。その被害にもかかわらず、1億
2600万人の人口を抱えるこの島国が、1900年以降で 5番目の規模の大地震にい
かに適切に対応しているかは、注目すべきことである。三陸沖を震源地とする
マグニチュード(M)8.9の地震では高さ約10メートルの津波が発生し、津波は
53カ国にも押し寄せた。

 この巨大地震にもかかわらず、日本人が母なる大地からのこの猛威を切り抜
けるために比較的よく準備ができていたことについては言及せざるを得ない。
日本は文字通り、立ち上がっている。いかにすれば、人間の計画と産業社会が
自然災害に対処できるかの証として。

 年間数百回の地下振動を経験する国である日本は、1891年のM8.4の地震以来、
耐震に配慮した建物を作ってきた。1965年まで建物の高さは30メートル程度ま
でに制限された。しかし都市人口の増加に伴い、この建物の高さ制限は撤廃さ
れた。日本の木造住宅は沿岸地域では津波に脆弱だったが、高いビルは今回の
地震では持ちこたえたようだ。

 1993年に完成した横浜ランドマークタワーの高さは約 300メートル。地震国
日本では驚異的な高さだ。最先端の建築工学を駆使できる技術と富を投入でき
て初めて、このような高層ビルの建設が可能になった。

 07年10月には緊急地震速報が導入された。この世界最先端の地震早期警戒シ
ステムは11日の地震の際にも、テレビ、ラジオ、携帯電話などで都民に警報を
出したことで評価を高めた。この警報により、地震が起きる前に工場やエネル
ギー施設、輸送機関などには操業を停止する余裕が生まれる。最大の懸念事は、
今回の地震で自動停止した原発の炉心を冷却する能力だ。米国は冷却剤を送っ
ている。

 日本は現在、大規模な復旧に直面している。しかし、それは過去 300年で最
大の地震の後に必要になるかもしれなかった程度よりも、軽度なものだ。われ
われは、日本に似たような警戒システムが他の地震国でも開発、導入されるこ
とを期待する。

 日本の準備態勢は昨年のハイチ地震や、7万人が死亡した 08年の中国四川大
地震などとは対照的だ。ハイチは何十年も続いた失政による貧困のせいだとし
ている。中国は富はあるが、その政府は誰からも責任を問われない。95年の阪
神大地震以来、日本は度重なる改革を行ってきた。

 日本は最近、マスコミなどでは評判が悪い。経済成長は低迷し、政治家の失
政に、大部分が生産的な国民は当惑している。しかし、間違いなく日本は依然
として産業大国だ。11日の地震の壊滅的な影響にもかかわらず、近代国家とし
ての日本の業績がもたらす自国を守るという恩恵は指摘せずにはいられない。


外国からみれば、こんな見方もあるのです。
私たち国民は、もっと誇りをもって、この国難に立ち向かっていこうでは
ありませんか!

前回のブログ「不屈の奈良人(ならびと)」も見てくださいね!

耳成村の伝承「弓田の由来」-厳しい旱魃から立ち上がった奈良びと!!

2011年03月21日 | 日記
前回のブログのコメントに「あかずきん」さんはすばらしい言葉を
書いてくださいました。

民話を語りつぐことは、心を語りつぐことです。
私たちの祖先は、この天変地異の多い風土を生き抜き、
とぎれることなく民話を語りついできました。
私たちも同じことを未来に向けてくり返していきたいです。

この言葉こそ、私たちナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の願いです。


奈良盆地は夏は雨が少なく、
奈良の人々は過酷な農作業を強いられてきました。

戦後、吉野川の豊富な水が県営水道によって奈良盆地に導入されて以来、
現在では水に苦しむことはなくなりましたが、
それ以前は、水が乏しいため、奈良盆地には、
たくさんのため池が作られました。
また、田の中には「隠し井戸」のあるのもあって
火照りの年にはその井戸を使ったといいます。
しばしば、水利権をめぐる深刻な水争いがありました。

次に語る伝説には、命がけで田を守ってきた先祖たちの思いが
こめられています。


弓田の由来

今、耳成高校があるあたりに、
昔、4ヘクタールほどの弓の形をした田がありました。
ある年に、「月夜でも焼ける」というほどの日照りに
見舞われ、村人たちは干ばつに苦しみました。
上流の村から水がせき止められて、弓田も干上がりました。
弓田の百姓たちは、上流の村人と掛け合い、何とか弓田に水を
入れてくれるよう懇願しました。
すると、上流の村人は弓田の庄屋に言いました。
「お前は命が欲しいのか、水が欲しいのか。」
そしたら、庄屋は
「命は欲しくない。水が欲しい」と訴えました。
そこで、上流の村人が、その場で庄屋を弓で撃ったので
庄屋は命をなくしました。
弓田の百姓たちは庄屋の命と引き換えに水利権を得て、
それ以来、日照りでも弓田は干あがることはなくなったということです。


原典:比較民話研究会 阿部奈南・桜井由美子編「 奈良県橿原市・耳成の民話(上)」
    (日本昔話学会編『昔話―研究と資料』 25号 所収)
語り手:橿原市旧耳成村 野依音松
再話:竹原威滋


奈良の人々は、このような話を今に語りつぎ、
命を賭して、大自然の脅威に立ち向かってきたのです。

いま、東北関東大震災に苦しむ人々もきっとこの震災を生き抜き
その体験を未来に語りついでいくことでしょう。

もういちど、「あかずきん」さんの言葉を心にとめましょう!

民話を語りつぐことは、心を語りつぐことです。
私たちの祖先は、この天変地異の多い風土を生き抜き、
とぎれることなく民話を語りついできました。
私たちも同じことを未来に向けてくり返していきたいです。

ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)のみなさま!
総会を終えて、私たちは新しい歩みを始めました。
来年は、『古事記』編纂1300年
グリム童話初版出版200年を迎えます。

未曾有の震災を乗り越え、この体験を、語りの文化を
奈良の地において未来にひき継いでいきましょう!



ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の総会・3月17日開催!

2011年03月14日 | 日記
テレビで流される東北関東大震災の画面は、まるでノアの洪水を見ているようで、
私たち人間の力では、どうにも納めきれない何か大きなものが、
この世を動かしていることを私たちに思い知らせているような、そんな気がしてなりません。

大自然を前にして、人間はもっと謙虚であらねばならない。その上で
人知を尽くして、備えをしなければならないと痛感いたします。

政治の世界の劣化、経済の縮小、少子高齢化社会、そして今回の大震災
日本という国はどこに行くのでしょうか!

関東以北にご親戚やお知り合いのある方々
さぞかしご心配のことと思われます。

皆様のご無事を祈りながら、お見舞い申し上げます。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。


さて、今回のブログでは、ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)総会のご案内を
させていただきます。

「奈良の民話を語りつぐ会」(愛称 ナーミン)が発足しまして早や1年が過ぎようとしています。
平城遷都1300年祭奈良市市民連携企画補助事業「奈良民話祭り」は、
春・夏・秋ともにたくさんの方々に楽しんでいただくことができ、
大変な盛況となりました。
これも皆さまのご協力のおかげと感謝いたしております。

来年は「古事記」誕生1300年を迎え、さらにグリム童話初版出版200年の年にあたる記念すべき年です。
語りの文化を未来につなげる私たちの活動も今後ますます注目されることと思われます。

また、現在開講中の「なら語り手入門講座」の2期生も「ナーミン・テラー」として私たち仲間に連なっていくことと思います。
新しい年も夢を持ってともに歩んでいきたいと思います。

さて、下記のように総会を開催いたします。
会員のみなさま、ご参集ください!

日 時:3月17日(木)午前10時~11時半
場 所:奈良教育大学(市内循環バス「高畑町」下車) 図書館 絵本のひろば
議 題:2010年度活動報告・会計報告
    2011年度活動計画・予算案 ほか

ところで、先日近鉄奈良駅で降りたところ、たまたま、私のブログ(2011.1.3):
マイ ドリーム 奈良民話祭り in 燈花会
で紹介した万葉集の歌が載っている車両を見つけ、うれしくなりました!!



しかも、燈花会の写真を添えてありました!



上野公園にある「国際子ども図書館」に行ってきました!

2011年03月07日 | 日記
先日、東京で学会・研究会があり、東京に出張したついでに
上野公園にある国立国会図書館の「国際子ども図書館」に行って来ました。

大阪には万博公園に「大阪国際児童文学館」(昭和55年(1980)設立)があり、
よく利用していましたが、
現在は残念ながら規模を縮小して、大阪府立中央図書館に併設されています。

これに対し、東京・上野の「国際子ども図書館」は平成12年(2000)に開設され、
一度見に行かなくてはと、気になっていたのですが、
ようやく、それが実現しました。

建物は、明治39年(1906)に帝国図書館として作られた建物を保存・改修したものです。
明治期建築遺産としてなかなか重厚な建物です。



そして建物前には図書館を表示する御影石と子どもの群像彫刻があります。



建物内部について紹介しましょう。

★ 1階には、子どものための三つのへやがあります。

● 「子どものへや」では国内外の子どもの本(絵本、民話、児童読み物、知識の本、雑誌など)が読めます。
  子どもたちが自由に手にとって読めるよう、机の配置も工夫してあります。


(図書館で頂いた絵葉書より)(館内は撮影禁止です)

● 「世界を知るへや」では世界の国・地域の地理、歴史、民俗などを紹介する資料が手にとってみれます。
  子どもたちが世界に興味を持ち、国際理解を深められるような絵本、民話、読み物が並んでいます。


(図書館で頂いた絵葉書より)

ちなみに、小生の本「王子と美しいパセリちゃん―スイスの昔ばなし」 (小峰書店)は
どこにおいてくれているだろうかと思ってさがしてみると、
「子どものへや」でなく、「世界を知るへや」のスイスの書棚に
アルプスの鉄道の旅の本の横に置いてありました。

● 「おはなしのへや」では、毎週土・日におはなしと絵本の読み聞かせの会があるそうです。


★ 2階には二つの資料室があります。

● 「第1資料室」では、日本とアジア諸国で刊行された児童書や関連資料、最新版の日本の教科書が閲覧できます。
  ここには、東アジアだけでなく、スリランカ、イランやイスラエルなどの絵本も蒐集されており、
  さすが、アジアの先進国日本の国立図書館だなあ、と納得させられました。

● 「第2資料室」では、アジアを除く外国で刊行された児童書や関連資料が閲覧できます。
  例えば、グリムやアンデルセンの童話の原書やそれに関連する内外の研究書も読めます。

★ 3階にはホールと「本のミュージアム」があり、
  ミュージアムでは現在、「日本の子どもの文学 - 当館所蔵資料で見る歩み」を展示中でした。



私は、「子どものへや」でプロイスラーの『小さい魔女』の本の隣に『プロイスラーの昔話・全3巻』を見つけて、
児童文学作家プロイスラーが収集し語り直したドイツ各地の昔話に、しばし時を忘れて読みふけりました。

それから、「第2資料室」では、『グリム兄弟往復書簡集』の翻訳本がPOD版(プリントオンデマンド版)で
出ていることを知りました。

なにしろ、「国際子ども図書館」は、国立国会図書館の支部図書館なので
日本で発行される全ての図書を所蔵しているので、いろんな出版情報に触れることができます。
しかも現物を手にとって見ることができるので、ありがたいです。
(一般の図書館と違って、館外貸し出しはしていません)


結局、お昼に図書館内のカフェテリアでランチを食べてから、閉館の午後5時まで
居座ってしまいました。

それは、子どもの本に触れる不思議な、至福のひとときでした。

あなたも、上京(あづま下り?!)したら、一度、上野の「国際子ども図書館」
一日を過ごしてみませんか!