竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

★グリム童話ミニ講義6★「いばら姫」も版によってこんなに変わっているよ!/金環日食みたよ!

2012年05月26日 | 日記
さわやかな5月になりました。
我が家の庭にも野ばらが咲き始めました。

 

それから 私が手塩に育てた大輪のばらも見事に開花しました。



窓辺からみた風景です。



この大輪のばらは、「クイーン・エリザベス」といいます。
名のとおり、誇らしく咲いてるでしょ!

さて、今日は、薔薇にちなんで、グリム童話「いばら姫」の各版の比較をしましょう!

すでに、★グリム童話ミニ講義1★ と ★グリム童話ミニ講義2★ で
グリム童話の成立の事情についてお話をしましたので、
まだお読みでない方はそこをクリックしてみてくださいね。

それでは、いばら姫が百年の眠りから目覚めるときの語りの文体を比較してみましょう!

■グリム童話1810年初稿
王子がいばらの垣根に近づくと、いばらはみな花のようになって道をあけ、王子が通り過ぎると、
また、いばらにもどりました。

■グリム童話1812年初版            
王子がいばらの茂みに近づくと、あたり一面にばらの花が咲いていました。それが分かれて、
王子がその中を通って行くと、うしろはまたいばらになりました。

■グリム童話1819年第2版
さて王子が来た日は、ちょうど百年が過ぎ去るときでした。王子がいばらの垣根に近づいていくと、
それは一面に大きな美しい花になって、ひとりでに道を開いたので、王子は傷もつかず、
いばらの中を通り抜けました。するとうしろで、ばらはまた垣根になって道を閉じました。

■グリム童話1857年第7版
さて、ちょうど百年が過ぎ去って、いばら姫がまた目を覚ます日がやってきました。
王子がいばらの垣根に近づくと、あたり一面大きな美しい花になって、ひとりでに道を開け、
王子を傷つけずに通し、うしろで、また閉じて垣根になって道を閉じました。


読み比べていかがですか?
口伝えの素朴な表現が、だんだん詳しくなっていますね。

第2版以降は、ばらの花が「大きな美しい花」となって表現が詳しくなっていますね。

また第2版では、「ちょうど百年が過ぎ去るときでした」と、「時の一致」を明確に述べていますね。
でも、第7版の「いばら姫がまた目を覚ます日がやってきました」と述べるのは
話の筋の先取りで、ちょっと言い過ぎのように思います。

でも第2版の「王子は傷もつかず、いばらの中を通り抜けました」よりも
第7版の「(花は)王子を傷つけずに通した」のほうが、
バラの花を擬人化していて、メルヘンらしい表現ですね。

ひとつのパラグラフだけの比較だけでも、こんなに新しい発見ができます。
ぜひ、他の部分も是非みてくださいね。

以下に文献をあげておきます。

■グリム童話(初稿・1810): メルヒェン集 エーレンベルク稿 小沢俊夫訳
(ドイツ・ローマン派全集 第15巻 グリム兄弟篇 国書刊行会・所収)

■グリム童話(初版・1812): 初版グリム童話集 全4巻 吉原高志/吉原素子訳 白水社

■グリム童話(第2版・1819): 完訳グリム童話 - 子どもと家庭のメルヒェン集 全2巻 小沢俊夫訳 ぎょうせい

■グリム童話(第7版:決定版・1857): 完訳クラシック・グリム童話  全5巻 池田香代子訳 講談社

「いばら姫」の全テキストを比較してみて、私は第2版の文体が一番好きです。
第7版は、弟ヴィルヘルム・グリムの加筆が多すぎ、民話の素朴な文体が少し殺(そ)がれている感じです。

では、★グリム童話ミニ講義6★はこれでおしまい。

------------------------

みなさん、5月21日の「金環日食」見ました?
その日の朝は、大阪の高槻にいたのですが、ばっちり見ましたよ!
午前7時半前後は、日食メガネで、リング状の太陽にみとれて、
少し遅れて、カメラに収めたのが以下の写真です:



今日は、これでおしまい! また次の土曜まで、お元気でね!


こおりやま民話絵本「天から降ってきたお面」が刊行されました!

2012年05月19日 | 日記
こおりやま民話絵本の会・中田光子さんはほぼ10年前から
民話絵本を出版されてきました。

「大和郡山の語り伝えたい ふるさとの民話」を
キャッチフレーズに数冊の絵本が出ています。

このブログでも2年前に取り上げました。
民話絵本『稗田の村と広大寺池』刊行される!





今回の絵本は、「天から降ってきたお面」です。



絵:磯 正子  文:大倉いずみ・佐々木久美子

ある村の商人が帰り道の途上、隣村で一休みしていると、
天からお面が降ってきた。
村長さんに見せると、
「これは祭りの舞でつけるお面じゃ、
両村が栄えるように、天から授けてくださったのじゃ」
という。
それ以来、10月10日の祭り日には
午前と、午後にわけて両村で仲良くこのお面をつけて舞を舞ったり
お渡りをするという。
今もこの面が両村の村人たちを守っている。
 
祭りの由来を説く村の伝説、
素敵な絵と文でまとめられている。
一読をお勧めします。


私の手元にある「こおりやま民話絵本」のほかの絵本の表紙写真をかかげましょう!



「みそなめじぞう」 絵:坂本佳代子  文:荒井恵子 2003.12.24.



「うしの宮」 絵・文:坂本佳代子  きり絵:馬場敏枝 2006.5.5.



「豊浦のたぬき」 絵・文:藤戸輝子 2007.12.4.


ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)では、
ならまち、やぎゅう、よしのの民話地図を制作しましたが、
こおりやま民話絵本の会のような絵本も作りたいですね!!

グリミン第55回例会(5月20日)案内:金沢友緒;ロシア文学におけるドイツ・フォークロアの受容と影響

2012年05月12日 | 日記
今日は、グリミン(グリムと民間伝承研究会)の第55回例会の案内を
します。

グリミンは、グリム童話を初めとしてドイツ語圏の伝承文学を研究する
グループです。
この研究会については以前にも紹介しましたが、
詳しくは、下記のサイトをご覧下さい。
グリムと民間伝承研究会

今回は、上智大学(東京・四谷)で開催される日本独文学会の開催にあわせて
開かれるので関西からは少し遠いですね。
一応、案内だけでも読んでみてください。

グリム童話のイベントや他の学会の案内も載せていますので、
できたら、最後までお読みくださいね。

それから、さらに詳しく、新刊情報もご覧になりたい方は
下記のブログの後半に載ってますのでご覧ください。

グリム童話と民間伝承に関心ある方の対話の広場


★グリムと民間伝承研究会(グリミン)★第55回例会案内★

                  2012年5月12日

大型連休も終わり、新緑の季節となりました。
皆さま、お元気でいらっしゃいますか。
さて今回は、日本独文学会の春季大会に合わせて、
大会2日目午後にグリミンの例会を開催します。
平素参加しにくい方々も是非奮ってご参加下さい。

★今回は東京大学大学院で近代ロシア文学研究されている金沢友緒さんに
  「ロシア文学におけるドイツ・フォークロアの受容と影響」と題して
  ご発表いただくことになりました。
なお、例会の後半では秋のグリム・シンポジウムの準備会をします。

            記

●日時: 2012年5月20日(日)午後1時30分から(時間厳守)
       午後1時30分~4時 研究会(時間厳守)
       午後4時~5時 懇親会(大学近辺の喫茶店・自由参加)

●会場:
 上 智 大 学 (四谷キャンパス) 9号館 358教室
 (JR中央線、東京メトロ丸ノ内線・南北線/四ッ谷駅 麹町口・赤坂口から徒歩5分)
 (〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1)
   四谷キャンパスアクセスガイド :
   http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/accessguide/access_yotsuya

●内容: 

★研究発表  金沢友緒 (東京大学大学院生) 午後1時半~
   ロシア文学におけるドイツ・フォークロアの受容と影響

【発表の概要】
文学史上、18世紀末から19世紀初頭のロシアではロマン派が主流であり、他国と同様に、
民間伝承、歴史、幻想、といった題材が文壇の間で好まれていた。
このロシア・ロマン派作家達は西欧の中でも特にドイツ・ロマン派からの影響を大きく受け、
彼等の間ではドイツ民間伝承のモチーフやプロットが利用されていた。
グリム童話の翻訳や、フォークロアに題材をとったホフマン、ゲーテ等の作品が
作家達を刺激したのである。
今回はドイツ・ロマン派の文学の中のフォークロア的な要素が、
ロシアにおいてどのように受容されたのかを考察したい。
「ファウスト」や「砂男」等のモチーフについて取り上げる予定である。

★秋のグリム・シンポジウムの準備会  午後2時45分~
   秋の独文学会シンポ:グリム童話とジェンダー
   東洋大学シンポ:『グリム童話』がつなぐ過去と未来

●参加費 500円

----------
■なお、独文学会の春季発表会でもグリミン会員等の興味深い発表が
  下記のように、ありますので、あわせてお聞きください。

★川村和宏
  『メルヒェン』としての『はてしない物語』
5月19日(土)口頭発表:文学1・E会場(14:30~17:05)の4番目

★山縣光晶
  ティークの鉱山実体験と『ルーネンベルク』解釈―主人公の最後の形姿を巡って
 5月20日(日)口頭発表:文学3・E会場(10:00~12:35)の1番目

下記の学会サイトもご覧下さい。   
http://www.jgg.jp/modules/neues/index.php?page=article&storyid=985

★世話人
  池田香代子
  竹原 威滋
  野口 芳子

■今後のグリミン例会予告■

★第56回例会:グリム・シンポジウム
 2012年度日本独文学会秋季研究発表会(中央大学 10月13日~14日)において
   テーマ:グリム童話とジェンダー
   パネラー:野口芳子、竹原威滋、溝井裕一、金城=ハウプトマン朱美 

■グリム童話初版刊行200年・関連イベント(予告・変更アリ)
  グリミンでは秋に関連イベントを企画しています。
 ★ドイツ・グリム協会学会発表 9月8日(土) ドイツにて
   日本側からは野口芳子氏が発表予定。
 ★グリム・シンポジウム「グリム童話200年のあゆみ」 
   10月20日(土) 東洋大学にて 
   ドイツ側から下記の基調講演を予定:
    ベルンハルト・ラウアー氏(グリム博物館長)
        グリム童話刊行史と挿絵〔仮〕
    ハルム=ペア・ツィンマーマン氏(チューリヒ大学教授)
        グリム兄弟とマールブルク大学〔仮〕
   日本側からは
    シンポ:『グリム童話』がつなぐ過去と未来
     パネラー:野口、溝井、竹原  司会:大野
 ★グリミン主催グリム出版200年祭シンポジウム
   10月28日(日) 武庫川女子大学にて 企画中

★小澤俊夫氏の主宰する「昔ばなし大学」では全国各地で
  「グリム童話を語る会」を開催予定:
   5月13日(日)和歌山ビッグ愛6階601会議室
   5月20日(日)精華町立図書館 集会室
   10月4日(木)宝塚市中央図書館
   10月20日(土)帯広市図書館1F 多目的視聴覚室
  詳しくは: http://www.ozawa-folktale.com/

■学会等情報■
●日本口承文芸学会  第36回大会 犬山市福祉会館 6月2日(土)~3日(日)
公開講演 肖像と伝説 ―市橋鐸・林輝夫の内藤丈艸肖像収集から― 高木 史人
『日本の伝説』と愛知の伝説 ―東浦町生路井の杖立清水伝説をめぐって― 齊藤 純
   吉良上野介とは何者だったのか ―史実、伝承、虚構のはざまで― 川田 順造
シンポジウム: 口承文芸研究は都市伝説をどう扱うか
 パネラー:飯倉義之、重信 幸彦、山田 厳子、渡部 圭一 司会:小池 淳一
  詳しくは: http://ko-sho.org/page/1546/


●日本昔話学会 立正大学 7月7日(土)~8日(日)
 

●国際口承文芸学会 (ISFNR) 第16回大会 (予告)
 2013年6月25日~30日 ビリニュス市(リトアニア共和国)
 ビリニュス大学 リトアニア民間文芸研究所
 総合テーマ:現代社会における口承文芸、その統一性と多様性
 学会参加申込:2012年6月30日までに
 研究発表申込:タイトルと要旨(300字以内)を2012年10月1日までに
The 16th Congress of the International Society for Folk Narrative Research (ISFNR)
will take place in Vilnius, Lithuania, in June 25-30, 2013.
Folk Narrative in the Modern World: Unity and Diversity
Organizers: Institute of Lithuanian Literature and Folklore & Vilnius University
U. Marzolph, president
 詳しくは右記サイト参照:http://www.llti.lt/lt/kongresas/
学会HPサイト:http://www.isfnr.org/

今日は研究会の案内だけで失礼しました。
では、また、次週土曜日まで、おげんきで!

「奈良町からくりおもちゃ館」に行ってきました!

2012年05月05日 | 日記
今日、こどもの日、孫と一緒に奈良町にある「からくりおもちゃ館」に
行って来ました。



この建物は、2007年に奈良市に寄贈された1890(明治23)年ごろに建てられた旧松矢宅です。
その町家を利用して、4月28日に「からくりおもちゃ館」がオープンしました。

ならまちの南部の陰陽町(いんぎょまち)にあります。
場所は下記サイトをがご覧ください。
からくりおもちゃ館

からくりおもちゃは、奈良大学で歴史学の研究の一環で約25年にわたり「からくりおもちゃ」の研究を行い、
江戸時代のからくりおもちゃを復元してきた元同大学教授の鎌田道隆さんが寄贈したもので、
点数は618点に及びます。

子どもたちはさまざまな「からくりおもちゃ」に実際に触れて楽しむことができます。



その中からいくらか紹介しましょう。



これは「鐘打ち人形」で、何もしないのに小僧が何度も鐘を打ち鳴らすのです。
不思議に思って裏側を見ると、なんと「ししおどし」が仕掛けられていたのです。



「ししおどし」はもともと、田畑を荒らす鹿や猪を脅かす装置で、
水を竹に流して、その重力で竹が下に落ちて、音を鳴らす仕掛けですが、
ここでは砂時計のように砂が落ちるのです。
砂が落下する力を利用して人形に鐘を打たせる仕掛けになっています。
江戸時代の人ってすごいアイデアをもっていたのですね。

次は「お相撲さん」遊びです。



棒をグルグル回すと、背負い投げや押し出しなどさまざまな取り組みをしてくれます。

同じような仕掛けが、「餅つき」です。



そのほかにも、「だまし絵」、「万華鏡」、「知恵の輪」など子どもの興味を引き出す素敵なおもちゃが満載です。

あなたも、お子さんと孫と行ってみてください!

さらにひとつ、ついでに見てほしいスポットがあります。

「からくりおもちゃ館」のすぐ右隣(東側)に
とても面白い狛犬のある神社が鎮座しています。



「鎮宅霊符神社」と言って、天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)を祀っています。
この神様は『古事記』では、天地開闢の際に高天原に最初に出現した神です。
この神様を祀る神社はとても珍しいそうです。

ここには、実に愛嬌のある顔をした狛犬がいます。
狛犬は、阿吽(あうん)、つまり口をあけた狛犬と口をつむった狛犬がペアーになっていますよね。


「あーん」と口をあけた狛犬。なんだか笑ってるみたい。


「うん」と口をつむった狛犬 なんだかおどけているみたい。

でも、ここの狛犬の表情はとてもユニークでしょ。
これにも、子どもたちは大喜びでした。


今日は、子どもの日にちなんだお話でした。
連休もあと一日ですね。お元気で!