竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

酒井董美著『民話に魅せられて ある田舎教師の歩み』(立花書院)を読む!

2014年02月23日 | 民話
先週の土曜日、2月15日に「アジア民間説話学会日本支部2013年度研究大会」が
立命館大学であり、初めて参加しました。

下記のプログラムでした:

中野敦子:キジムナーの原像 ― 済州島のトッケビとの比較を通して ―
宮井章子:弘法大師空海と祀られる犬をめぐって
鵜野祐介:日本型聖母子像の変容 ― IT224「蛇女房」から松谷みよ子「龍の子太郎」へ ―

いづれも興味深い発表でありましたが、
その内容についてはこのブログでは割愛します。

この学会のあとで、懇親会があり、そこで実に34年ぶりにお会いした方について
お話したく思います。

元島根大学教授 酒井董美(さかい ただよし)先生です。

私がドイツ語教師として昭和43年(1968年)初めて赴任した島根大学ではドイツ語同好会での顧問をしていて
毎年夏にはドイツ人のプロット先生とともに学生を連れて、隠岐の島の知夫里島でドイツ語合宿をしていました。
青い海と赤肌の岩と牧場、親切な村人、今も牧歌的な風景を生き生きと想い出します。

酒井先生は、ちょうどその頃、隠岐島前高校の教師として郷土クラブの生徒たちを連れて
隠岐島の各島で地域のお年寄りから民話を聴き、調査報告書を出しておられたのです。

『隠岐島島前の伝承5』は、知夫里島の民話編でした。

それを入手した当時は、奈良教育大学に赴任していましたが、
あんなすばらしい離島だからこそ、こんなにも素朴で楽しい話が伝承されているのだと
むさぼり読んでものです。

酒井先生に初めてお会いしたのは、昭和54年(1979年)の日本口承文芸学会春季大会でした。
その時は、「隠岐島の昔話」と題して発表されました。
その学会の懇親会では民話調査の苦労話などをされ、暖かいお人柄に触れることができました。

それ以来、今回、久しぶりに再会し、また民話調査の魅力について、
また、民話を未来に語り継ぐ活動について、島根県と奈良県の実情について意見交換しました。
そして次の本をご恵与くださったのです。


酒井董美著『民話に魅せられて ある田舎教師の歩み』(立花書院)

面白い内容なので、一気に拝読しました。

先生は、書名にあるように、文字通り「民話に魅せられて」
島根県下の過疎地を勤務地に選ばれて、岩見、出雲、隠岐島の中学、高校で教師をしながら、
民話やわらべ歌などをおとしよりから聴いてこられました。

その調査から得た成果は、
題名をつけ、パソコンで分類したお話や歌は
なんと島根県6263件、鳥取県1796件に上るそうです。
地域の貴重な無形文化財です。

こうして集めた昔話やわらべ歌を、次の世代に伝えたいとの願いで
先生は、目下、山陰両県の民話語り部グループ育成に力を注いでおられます。

ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の活動にも大いに参考になります。

是非、手に取って読んでみてくださればありがたいです。

最後に、先生のプロフィールを載せておきましょう!

【著者略歴】酒井董美(さかいただよし)
昭和10年生まれ。松江市出身。昭和32年、島根大学教育学部中学二年課程修了。
玉川大学文学部卒業(通信教育)。島根県下の中学校・高等学校に勤務した後、大学に転じた。
平成11年、島根大学法文学部教授を定年退官、鳥取短期大学教授となり、18年退職。
同年4月から松江市大庭町にある出雲かんべの里館長。
山陰両県の口承文芸を収録・研究しており、平成17年より山陰民俗学会会長。

昭和62年 第27回久留島武彦文化賞受賞 (財)日本青少年文化センター
平成20年善行賞(青少年指導)受賞 (財)全国善行会

主要著書(口承文芸関係)
「石見の昔話」 ―日本の昔話27ー日本放送出版協会 昭和54年
「出雲.石見の伝説」 ―日本の伝説48-(萩坂昇氏と共著) 角川書店 昭和55年
「山陰の口承文芸論」 三弥井書店 平成10年
「鳥取ふるさとの民話」 ワン・ライン 平成12年
「山陰のわらべ歌」 三弥井書店 平成16年
「島根の民謡」―歌われる旧き日本の暮らしと文化―(藤井浩基氏と共著) 三弥井書店 平成21年
「さんいんの民話とわらべ歌」ハーベスト出版 平成22年
「民話に魅せられて」 ―ある田舎教師の歩み― 立花書院 平成23年
「奥出雲の民話」 奥出雲町文化協会 平成23年 ほか多数。

酒井先生の本のご紹介サイト:
Amazon.co.jp: 酒井 董美: 本

今日のブログは以上です。
インフルエンザが流行っています。
では、みなさま、来週までお元気で!

絵本『井戸のこわい仁王さん ~御所市むかしがたり』の紹介

2014年02月15日 | 日記
昨日は今冬2度目の大雪でした。


あすか野界隈の雪景色です。

さて、今日は、御所の絵本の紹介です。


『井戸のこわい仁王さん~御所市むかしがたり』です。

さく:夢絵本製作委員会
え:なかたに ゆか

あらすじ:
御所市の伏見という村に菩提寺というお寺があった。
その門には、強そうな仁王さんが、ふたり並んで立っていた。
近くの山に「トンド」といういたずら好きの小鬼が住んでいて、
仁王さんを馬鹿にして、
「あんたら、怖い顔して、ただつっ立っているだけで
何の役にもたてへん。悔しかったら、出てきてみー」
と、はやし立てた。
怖い仁王さんが、トンドを追いかけてきた。
さて、その結末は?

あとは、実際に絵本を手に取って見てください。
詳しくは、次のサイトをごらんください。

御所夢絵本プロジェクト

中谷有香さんの絵は、とても素敵です。

仁王さんの小鬼を追いかける怖い表情、
いたづらもんの小鬼トンドの必死に逃げる顔の表情

子どもたちは、思わず絵本の世界に入り込むでしょう。

井戸に逃げ込んだ小鬼を追いかけた仁王さんは
水に映った自分のこわい顔を見て、びっくり仰天。

仁王さんは、井戸が怖くて、それ以来、伏見の村には井戸がないという。
そこには、村の深い歴史が秘められている。
こんな楽しい絵本で、子どもたちは御所の歴史を知ることができる仕掛けになっている!

「御所夢絵本プロジェクト」の第2弾は、
昨年11月26日のブログで紹介しました。
絵本『役小角と山の神 - 御所市ふることがたり』

未だの人は、是非、、上記サイトを見てください。

さて、第3弾も出るのかな?  楽しみですね。

さあ、今から雪かきをしよう!

みなさまも、厳しい冬を乗り切ってくださいね!

雪景色三葉:あすか野界隈/大塔村の民俗文化を語り継ごう!

2014年02月08日 | 日記
今日2月8日、冬のオリンピックがロシアのソチで開催!
それに合わせてか、生駒にもこの冬一番の雪が積もりました。
とても、冷え込みますね。

雪景色を見ようと、近隣を歩いてみました。


住宅街もうっすら雪化粧。


王龍寺の山門。


近くの池で戯れる白鳥と鴨の夫婦。


奈良県も山村では、きっと雪で大変だろうな。

雪の降る冬の寒い日、民話調査で訪れた大塔村のことが思い出される。

小正月の七草粥を作るとき唱える歌も大塔村のおばあさんに教えてもらった。
下記サイトを参照。
春の七草・囃子言葉

大塔村には、「篠原踊り」や「惣谷狂言」など多くの民俗文化が残っている。
先日の新聞にもこんな記事が載っていた。



大塔村は、現在 五條市に合併されて、「五條市大塔町」という。
五條市の企業観光戦略課が、合併前の「五條市史」、「西吉野村史」、「大塔村史」から
伝説や民話を129編デジタルデータ化したそうである。

それ以外にも、大塔村については、わたしどもの調査した以下の資料もあるのです!

★奈良県吉野郡大塔村の昔話(上) 比較民話研究会 昭 60.12.
  (昔話研究懇話会編 『昔話―研究と資料』 14号 三弥井書店 182~196頁 所収)
★奈良県吉野郡大塔村の昔話(下) 比較民話研究会 昭 62.6.
  (昔話研究懇話会編『昔話―研究と資料』 15号 三弥井書店 156~182頁 所収)

昭和59年の1月、2月、4月、9月の4回にわたり、大塔村を調査し、
27名のご老人からお話を聞くことができた。
この地は、当時すでに若者の離村だけでなく、老人の離村も進んでおり、
調査は困難を極めた。
聴き得たお話の総数は、断片も含めて150話であるが、
この調査書には、話の体裁をなしている興味深いもの、107話を収めてある。

例えば、以前このブログで紹介した「雀孝行」もこの資料に入っている。
下記のブログ参照:
吉野・大塔村のお話「雀孝行」

そのうちにぜひ、五條市企業観光戦略課にも資料提供しようと思っています!!

雪化粧の街並みを散歩しながら、ふと、調査で訪れた雪深い「大塔村」が思い出され、
今回は、このようなブログになりました。

では、みなさま、来週まで! お風邪などひかれませんように!!

吉野民話地図と柳生民話地図の韓国語版が出来ました!

2014年02月01日 | 日記
奈良教育大学・大学院の「地域と伝統文化」教育プログラムでは
民話地図を長年にわたり、作成してきました。

今まで次の三部作の民話地図が既にできています:

ならまち民話地図 日本語版、英語版、独語版、中国語版、韓国語版、WEB版
吉野民話地図 日本語版、英語版、独語版、中国語版
柳生民話地図 日本語版、英語版、独語版、中国語版

そして今回、下記の韓国語版ができました。


吉野民話地図・韓国語版 ← 現物を見るにはここをクリック!
発行:奈良教育大学大学院「地域と伝統文化」教育プログラム
監修:青木智史・竹原威滋
再話:村上郁
作画:増田恵子・山彩乃・青木智史
韓国語版監修:井上直樹
韓国語翻訳:李旼姫



柳生民話地図・韓国語版 ← 現物を見るにはここをクリック!
発行:奈良教育大学大学院「地域と伝統文化」教育プログラム
監修:青木智史・竹原威滋
再話:村上郁
作画:増田恵子・山彩乃・青木智史
韓国語版監修:井上直樹
韓国語翻訳:呂宙熹

これで、民話地図3部作の外国語版のヴァージョンがそろいました。

私のホームページから、すべてダウンロードできますよ!

奈良のみなさま
ふるさとの民話を世界に発信してください!

奈良の教員のみなさま
世界遺産教育の教材にしてください!

奈良の観光で町おこし関係者のみなさま
外国人の観光客に印刷してご利用ください!

今日は、民話地図の案内でした。

2月になり、日差しが明るくなってきましたね!