竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

「やまもと民話の会」を招き「ヴァイオリンと‘震災’を語る夕べ」★3月1日(金)やまと郡山城ホール!

2013年02月22日 | 日記
私たちは奈良の民話を未来に語り継ぐ活動をしておりますが、
東北地方には、被災体験を語り継ぐ活動をしているグループがあります。

「やまもと民話の会」は、庄司アイさんをはじめ、70代の女性が中心の7名の会です。
自分たちも家を流されたり、大切な人を亡くされたり、という壮絶な体験のなかで「語りつごう」を合い言葉に、
町の人々の消息を訪ね、証言をとり続けました。

このような証言集は世界に例を見ないものだそうです。
被災から5か月後に第1集『証言』を、
9か月後に第2集『声なき声に寄りそう』を、
1年後に第3集『鎮魂・復興へ』を刊行しました。、




メディア取材も相次ぎ、3冊あわせて発行15,000部までにもなりました。

それが、大手出版社の「小学館」から、3冊合本して全国で発売されることになりました。


 
『巨大津波 語りつぐー小さな町を呑みこんだ』
 
ISBN:978-4-09-388294-1 本体価格:1,500円+税 判型: Cコード:C0095

 やまもと民話の会 : 編集  小学館:発行  2013/03/04発売予定

下記サイト参照:
『巨大津波』


そして、なんと「やまもと民話の会」の庄司アイさんと武田良子さんが奈良に来て、
震災の語りをして下さいます。



やまもと民話の会/左:武田良子さん 右:庄司アイさん


東日本大震災復興支援プログラム「笑ってチャリティコンサート」
~ヴァイオリンと‘震災’を語る夕べ~

日時:2013年3月1日(金)18:30開演(開演18:00)

場所:やまと郡山城ホール小ホール(奈良県/近鉄郡山駅徒歩7分)

料金:一般3,000円 高校生以下:1,500円


詳しくは、下記サイトをご覧ください。


ヴァイオリンと‘震災’を語る夕べ

ナーミン会員のみなさま

被災地にエールを送りたい奈良のみなさま
是非、お出で下さい!

まさに語り継ぐべき現代の語りです!

追悼:比較民話学の第一人者 三原幸久先生

2013年02月16日 | 日記
三原幸久先生がお亡くなりになりました。

昔話学会の事務局の方より先日下記のような連絡がありました。

「三原先生が1月18日(金)に亡くなられました。
原因は肝臓癌ですが、痛みもなく、穏やかなお最期でした。」


日本昔話学会講演会 2010.10.10. キャンパス・プラザ京都にて


三原先生は、私にとって尊敬すべき、かけがいのない恩師です。

先生はスペイン語圏の口承文芸のフィールド・ワーカーであるばかりでなく、
日欧の民話の比較研究の第一人者でした。

1970年代から80年代には、三原先生と福田晃先生と私の三人で「国際説話研究会」を開催し、
各地の民話研究者のお話を聞き、勉強をさせていただきました。

また先生の編集された『ラテン世界の民間説話』では
私も「レト・ロマンの昔話」について寄稿させていただきました。

また私の著書『グリム童話と近代メルヘン』については、日本民話の会の会報に書評を寄せてくださいました。

先生の主な著訳書を挙げますと

スペイン民族の昔話 岩崎美術社 1969年
ラテンアメリカの昔話 岩崎美術社 1972年
因幡智頭の昔話 三弥井書店 1979年
ラテン世界の民間説話 世界思想社 1989年
スペイン民話集 岩波書店 1989年 などです。

そのほかにも多くの著訳書があります。
下記のサイトをご参照ください。
Amazon本。三原幸久

先生が活躍されていた主な所属学会は
日本イスパニア学会、説話伝承学会、日本民俗学会、日本昔話学会、日本民族学会 でした。


日本昔話学会講演会 2010.10.10. キャンパス・プラザ京都にて


私が最後にお会いしたのは、上記の学会の講演会でした。

「日本の昔話が外国昔話から受けた影響」と題して熱く話された声が今も耳に残っています。
その内容は、同学会編の『昔話―研究と資料』39号(2011.3.)に載っています。

三原先生は確か私より「ひと回り上の猿歳」なので、たぶん享年80歳であられたと思います。

心から、ご冥福をお祈りいたします。

大野寿子編『超域する異界』(勉誠出版)が刊行されました!

2013年02月09日 | 日記
私は東洋大学の客員研究員をしておりますが、
同大学の大野寿子先生を研究代表者とする2009~11年度の科研費による共同研究
「超域する「異界」―異文化研究・国語教育・エコロジー教育の架け橋として―」の成果発表の一つです。

まず、本を装丁を見てください。



すごく、奇抜な装丁です。

本体の表面には、「異界」を象徴する絵が描かれていて、書名は背面にあります。
写真の右手にあるのが表紙カバーです。ここには、以下のキャッチ・コピーが載っています。

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なぜ人間は異界を語るのか――

国境を超え時間的制約を逃れ、人間の日常および精神生活の裏、奥、外
に必要不可欠な空間領域として想像される「異界」― the other world ―。
その諸相を、グリム童話から日本の民話、ドイツ・中国・日本における
文学・音楽・絵画表象、言語学からコミュニケーション研究に至るまで、
空間、時間、学術分野の境界を超え、「超域」的に考察する。洋の東西を
問わず、古代から現代に至るまで、人間の精神文化のなかに表現やかたち
を変えながら偏在する「異なるもの」の多面的価値を浮き彫りにする。
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表紙カバーの裏面には下記の「目次」が載っています。

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序章 異界を超域する試み 大野寿子

第一章 西洋における伝統的な異界とその表現―ドイツ伝承文学・比較民話学・音楽学―
 民話における「異界」との交流を可能とする仕掛け 竹原威滋
 ドイツの民間伝承における異界と異人 溝井裕一
 『グリム童話』における「異界」―死者の化身と死者世界をめぐる一考察― 大野寿子
 グスタフ・マーラーにみる「異界」と越境の音楽表現 山本まり子

第二章 東洋における伝統的な異界とその表現―中国古典文学・日本近世文学・美術史―
 洞天の風景―神仙グロットの地誌― 山田利明
 黄表紙における異界表象―山東京伝『箱入娘面屋人魚』を例として― 松岡芳恵
 弥次喜多の旅は異界への旅か―『東海道中膝栗毛』の一つの読み方― 中山尚夫
 描かれた「異界」―江戸時代絵画と異界表現― 藤澤紫

第三章 近現代の日本における総合体としての異界とその表現
    ―日本語学と日本文学の一九―二一世紀―
 句から語へ―「魔ヲ使フ女」から「魔女」への移行を一例として― 木村一
 歴史と「異界」の交錯―中里介山「夢殿」論― 早川芳枝
 現代日本文学における「異界」の諸相
 ―村上春樹から現代ホラー小説、家族小説、戦争文学まで― 石田仁志

第四章 現代日本における異界思想とその超域―言説史・社会言語学・文化原理考想―
 「異界」の諸相―語誌の展開をめぐって― 池原陽斉
 「異なものとの交流」としての異文化コミュニケーション 渡辺学
 超域する「異界」とは何か?―Meta2の冒険― 高橋吉文

おわりに 大野寿子
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私は、第一章の最初に書かせていただきました。

梅花女子大の大学院の授業でグリム童話「いのちの水」のヨーロッパの類話を比較考察した
その苦労の成果でもあります。
(論文の末部の「追記」で一緒に調べて、作表してくれた大学院生に謝辞を述べてあります)

日本の類話は「なら梨取り」です。表2と図2だけでも見てください。
苦労して作図しました。



これは、ヨーロッパの民話における「異界」との交流を可能とする仕掛けを図式化したものです。

ヨーロッパ人は、異界に命の水を取りに行く話を語るとき、世界の果てに在る異界に何日もかけて旅をする。
途中で助言者に会い、魔法の運搬手段を手に入れ、人工的なお城、一時間だけ開くお城、魔法や呪いをかけられた城へ辿り着く。
その城にはライオン(竜、魔女)が番をしており、魔法の贈り物を用いて(外魂を壊すことにより)退治する。
ライオンがなぜか美しい王女の見張りをしている。一時間という時間制限の中で城の中庭の泉から命の水を手に入れる。

一度、本書を手にとって見ていただけると、ありがたいです。

「柳生民話地図」の英語版とドイツ語版ができました。ネットにアップ!

2013年02月02日 | 日記
■昨年春には、「柳生民話地図」日本語版を作成しました。



柳 生 民 話 地 図
YAGYU FOLKTALES WALKING MAP (c) 2012

発行: 奈良教育大学「地域と伝統文化」教育プログラムまほろばプロジェクト
監修: 奈良教育大学 竹原 威滋(特任教授)、青木 智史(特任講師)
作画: マスダケイコ 山崎彩乃
再話: 村上 郁

原話資料
(1) 進藤秀樹・竹原威滋・丸山顕徳編 『奈良市民間説話調査報告書』(奈良教育大学刊)
(2) 阿部奈南・進藤秀樹・垣崎仁志編「月ヶ瀬村の伝説と世間話」(『昔話―研究と資料29号』)
(3) 島田芳夫編『大和の伝説 覚え書』(稿本)
(4) 高田十郎編『大和の伝説 増補版』(大和史蹟研究会刊)

国立大学法人
奈 良 教 育 大 学
NARA UNIVERSITY OF EDUCATION


■今春は、英語版とドイツ語版を作成しました。



YAGYU FOLKTALE WALKING MAP (c) 2013

Published by the Graduate School of Nara University of Education,
Educational Program “Region and Traditional Culture”.

Compiled under the supervision of Takeshige Takehara and Satoshi Aoki.
Graphic design by Keiko Masuda and Ayano Yamazaki

English Version:
Edited by Masaru Tongu,
Rewritten by Kaoru Murakami
Translated by Hisami Iwase

次の9話が英訳されています:

1. Yagyu Sekishusai and stone of a slash
2. Ofuji-ido Well
3. Jubei Cedar
4. Koshiita Jizo of Hirooka
5. Origin of place name of Myoga
6. Monkey’s liver
7. Jizo of Mima-toge Pass
8. Stone fight between two tengu
9. The story of Princess Sonou





Wanderkarte der Volkssagen in Yagyu (c) 2013

Herausgeber: Graduiertenkurs des Paedagogikprogramms
„Region und traditionelle Kultur“ der Paedagogischen Hochschule Nara
Leitung: Takeshige Takehara und Satoshi Aoki
Graphik: Keiko Masuda und Ayano Yamazaki

Deutsche Ausgabe:
Leitung: Iijima Shoji und Edda Binder-Iijima
Nacherzaehlt von Kaoru Murakami
Uebersetzt von einer Studentengruppe der Japanologie der Universitaet Heidelberg

次の9話が独訳されています:

1. Yagyu Sekishusai und Ittouseki
2. Der Brunnen Ofuji
3. Die Jubei-Zeder
4. Die von Kreuzschmerzen heilenden Jizou von Hirooka
5. Der Ursprung des Ortsnamens Myouga
6. Die Leber des Affen
7. Der Jizou von Mima-Pass
8. Die Steinschlacht der Tengu
9. Die Geschichte der Prinzessin Sonou



■いずれも、奈良教育大学のホームページにアップされています。


地域と伝統文化教育プログラム

柳生民話地図一覧

柳生民話地図英語版

柳生民話地図ドイツ語版

「柳生民話地図」の中国語版も近く完成予定です。


奈良のみなさま
ふるさとの民話を世界に発信してください!


奈良の教員のみなさま
世界遺産教育の教材にしてください!


奈良の観光で町おこし関係者のみなさま
外国人の観光客に印刷してご利用ください!


今日は、民話地図の案内でした。

2月になり、日差しが明るくなってきましたね!