竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

梅花女子大学出版助成:モンゴメリー編著・鵜野祐介監訳『スコットランド民話集』が刊行されました!

2013年06月30日 | 日記
前回のブログでは、「東大寺大仏縁起絵巻」をもとに絵本化された『生まれ変わり』について紹介しましたが、
今回も新刊紹介をいたしましょう!
鵜野祐介先生が、梅花女子大学の大学院の学生さんたちと翻訳された民話集『スコットランド民話集』です。
編著者は、スコットランドの伝承童謡集も出版しているモンゴメリー夫妻です。



鵜野先生は、モンゴメリー夫妻とお知り合いで、その娘さんが増補再版された本から訳されています。
継子譚、異界訪問譚、冒険譚、累積譚、愚者譚、巧智譚、動物葛藤譚など53話が収められています。

この本の副題にもなっている「世界の果ての井戸」の話を取り上げてみましょう。

グリム童話の「ホレおばさん」に似た話です。
継母の命令で娘が「世界の果ての井戸」に水を汲みに行く話です。
その井戸には、うろこに覆われた首だけの、三人の男がいて、
親切にその願いを聞き入れ、首を洗ってやると、
それぞれの男は、「十倍も美しい娘になる」
「ものを言うたびに、ルビー・ダイヤモンド・真珠が口からこぼれ落ちる」
「髪をくしけずるたびに、金や銀がいっぱい出てくる」
と約束してくれる。
継母は、自分の娘も「世界の果ての井戸」に行かせるが、
不親切なので、不幸な罰をうける話である。

ところで、「うろこに覆われた首だけの、三人の男」といえば、
何か思い出しませんか?
そう、宮崎駿の『千と千尋の神隠し』にも出てましたよね。
あの映画には、「世界の水にかかわる妖怪」がちりばめていましたよね。

ちょっと、脱線しました。元に戻しましょう。

鵜野先生は、稲田浩二先生と『世界昔話ハンドブック』(三省堂)を編纂されておられ、
世界の民話比較学にも明るく、巻末の解説も大いに役立ちます。

ナーミンのみなさま
小梅文庫のみなま、
そして日本の語りに関心のあるみなさま、

スコットランドにおいてストーリーテラーの「語りの古典」になっている本書からも
好きなおはなしを選んで、子どもたちに語ってみませんか!


『生まれ変わり』東大寺大仏縁起絵巻が寮美千子氏の文で絵本になりました!

2013年06月22日 | 日記

ちょうど、1年前の6月23日のブログで、
国宝「信貴山縁起絵巻」を絵本化した『空飛ぶ鉢』について紹介しましたが、
今回は、「東大寺大仏縁起絵巻」をもとに絵本化された『生まれ変わり』について案内しましょう!



「東大寺大仏縁起絵巻」は、東大寺に伝わる3巻の絵巻物だそうです。
室町時代の天文5年(1536)に東大寺の祐全(ゆうぜん)という僧が編纂したものです。
その前半、上巻と中巻の途中までの物語を収めてあります。



インドの霊鷲山のお釈迦さんのもとにいた救世観音、弥勒、文殊、普賢の菩薩が、天平時代に大和の国に生まれかわり、
それぞれ、聖武天皇、良弁、行基、菩提僊那に化身して、東大寺大鋳造を果たしたという壮大な物語です。

菩提僊那はまだ登場していませんが、開眼法要のある後半の物語は『いのりの力』というタイトルで後日刊行予定だそうです。

今回も、奈良に住む地元の作家:寮美千子さんの解りやすい文章がつき、素敵な絵本になっています。

500年前に描かれた絵巻が、このように絵本の形で庶民にも親しまれることはすばらしいですね!

大和絵本『生まれ変わり』(長崎出版)

上記のサイトをクリックして、よかったら、手にして読んでみたくださいね!


梅雨に入り、庭のアジサイの青紫が雨に濡れて、映えています。
鬱陶しい季節、みなさま、お元気で!


日本昔話学会:7月6~7日関西外語大にて開催!シンポ「昔話の継承」もありますよ!

2013年06月15日 | 日記
梅雨に入り、蒸し暑いですね!

例年、七夕さんには昔話学会が開催されます。

今年の大会は、関西外国語大学 中宮キャンパス
7月6日(土)~7日(日)に開催されます。

先ずは、プログラムをご覧下さい。



6日(土)には、下記の講演会もありますよ。

 I.授かる神々 ―津軽におけるオシラ神の奇瑞と霊験―  弘前大学教授   山田厳子氏

II.韓国の洪水説話 ―沈んだ島伝説を中心に― 立命館アジア太平洋大学教授  金賛會氏

III. 聞いて・育って・童話を創る        童 話 作 家   あまんきみこ氏
〈対談お相手〉        関西外国語大学短期大学部准教授 阿部奈南氏


7日(日)午前中は研究発表です。
     上のプログラムをご覧下さい。
     いずれも、興味深い発表ばかりですよ!

それから、午後は、「昔話の継承」をテーマにシンポジウムです。

 ○伝承の語り手に学ぶ昔話の継承  長尾にじの子教室お話会(奈良) 吉川紗代氏
 ○なぜ昔話を継承するのか               作 家  中脇初枝氏
 ○何をもって昔話の継承とするのか      東京学芸大学教授  石井正己氏

   司会は、黄地百合子先生とともに 私が務めます。

ナーミンの会員のみなさま!
昔話の語りに取り組んでおられるみなさま!
昔話が大好きなみなさま!
梅花女子大で児童文学を学んでいるみなさま!

ぜひ、ぜひ、おいでください!
     

★グリム童話ミニ講義7★:間宮先生の講演:小さな版(50話)で世に広まった!いばら姫の版の変遷

2013年06月08日 | 日記
先週末には日本口承文芸学会に行ってきました。

間宮史子(白百合女子大学)先生の講演
「200歳を迎えたグリム童話 ―その現代における意義― 」をとても興味深く拝聴しました。

グリム童話には大きな版(200話)と小さな版(50話)があります。
グリム童話は、実際にはダイジェスト版の小さな版を通じて世に広まりました。

大きな版(Grosse Ausgabe)は 初版(1812)から7版(1857)まであり、
小さな版(kleine Ausgabe)は 初版(1825)から10版(1858)まであります。
さらに話によっては、グリム兄弟が書き残したメモ:エーレンベルク稿(1810)もあります。

いままで、大きな版によるテキストの比較はすでになされています。
例えば「いばら姫」については、わたしもブログ:★グリム童話ミニ講義6★で紹介しました。
ぜひ、ご覧下さい。

ところで、間宮先生は、小さな版も視野に入れて、グリム童話のテキスト比較をされています。
そのうち、「いばら姫」の比較分析をご紹介しましょう!



レジメの一部をコピーさせていただきました。

OHは エーレンベルク稿(初稿)を示しています
Gは 大きな版、数字は版を示していします。
Kは 小さな版、数字は版を示していします。
――→ は その方向への変移、
----→ は その方向へ影響を及ばした可能性、
= は 同一、
≠ は 非同一、
* は特に加筆がめだつ版を示しています。


表をじっくりご覧ください。

その下に説明があるように、面白いことがわかってきます。

初稿(OH)から初版(G1)で 加筆され、具体的になり、特に後半の描写が膨らんでいる。
第2版(G2)で、さらに全体的に書き換えと加筆がされている。
小さな版第2版(K2)で 予言の動物がザリガニからカエルに変更されている。
小さな版の第4版(K4)では 13番目の女の悪さを強調する描写がなされ、状況描写が加筆されている。
さらに、大きな版の第6版(G6)と小さな版の第8版(K8)においてそれぞれ説明や状況描写が増えています。
それによって最終的には大きな版と小さな版とが同一のテキストではなくなっています。

細かいことですが、グリム兄弟は、完全版とダイジェスト版を通じて、なんと合計18ヴァージョンを通じて
少しづつテキストの改定を施して、子どもたちが読みやすいメルヘンに仕立て上げていった努力の跡がみられるのです。
そのおかげで、グリム童話は世界の子どもたちに愛されるようになったのですね。

きょうは、グリム童話ミニ講義、第7弾でした。