竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

大柳生の太鼓踊りが昨夏で休止! 何とも残念!

2013年04月27日 | 日記
平成8年(1996年)に初めて大柳生に行き、
比較民話研究会と花園大学の学生さんたちと民話調査をした。
豊かな農村地帯だからこそ、「おふじ井戸」、「狐にだまされた話」など多くの民話をきくことができた。

そこには、氏神・夜支布山口神社のある森がある。



この神社は、平安時代の『延喜式神名帳』にも記載されたとても古い神社である。
夜支布山口神社から右手へ境内を進むと、階段上に朱の社殿が見える。



境内摂社立磐神社である。お社の奥に巨石が鎮座している。
昔の人は、この岩に神が降臨したと信じていたのだ。
この巨石は古代からある古い神社であることを証明している。

その神社の夏祭りが「太鼓踊り」である。
夜支布山口神社の分霊を祀る当屋の家の庭で奉納され、奈良県の無形民俗文化財に指定されている。



ところが、祭りの担い手である当屋の労力も大変で、若い人も少なくなり、
村全体で数年前から場所を夜支布山口神社の前広場に移して行われていた。
そして、昨年の夏、8月18日の祭りがついに最後の祭りとなった。
以下は、その時の映像である。





花餅をつけた御幣を背負い、胸に小鼓をつけた踊り手の氏子が、
太鼓や笛・鉦などの音に合わせて「踊子一般団扇の用意せられりや」と歌っては、
激しく跳躍乱舞する。

太鼓踊りは風流踊りの流れを汲むものである。
全国に見られる太鼓踊りは雨乞いに由来するものが多いとされるが、
大柳生の太鼓踊りは、出陣、凱旋の舞いとも考えられているそうだ。







こんな素敵な祭りが途絶えるとは、なんとしても残念である。

先日も、奈良新聞に地元の中学生が、その無念な思いを投書していた。

江戸時代から400年続くとされる県無形民俗文化財「太鼓踊り」
太鼓を打ちながら踊るため相当の体力が必要だが、少子高齢化で担い手の若者が不足し、継続を断念したのだが、
地元関係者を奈良市民が広くサポートして、「一日も早い復活を」を願いたいものである。

今回のブログは、季節外れの話題になりましたが、
夏以来ずっと心に残っていて、ぜひとも民話愛好家のみなさんにも
大柳生の太鼓踊りを再認識してほしかったのです。

民話絵本『子護り 奥山』、三宅町より発行される!

2013年04月20日 | 日記
奈良県の三宅町から民話絵本が刊行されました。
『子護り 奥山「伴堂」』です。



伴堂(ともんど)の村では女の子が育たなかったが、
夢のお告げで女神の「市杵嶋姫命(いちきしまひめのみこと)」を祭ったところ、
子どもが元気に育つようになったという話です。

4月18日 奈良新聞に紹介されていたので、早速、取り寄せて読んでみました。

地元の方の手作りで、とても親しみをもてました。

1500部制作し、町内の全園児と全児童、近隣の図書館に配布したそうです。
郷土に残る民話を次世代に語り継ぐ「ふるさと三宅創生事業」の一環。
平成23年3月に第1作を制作し、今回で5作目だそうです。
希望者には無料で進呈(1人1冊)してくださいます。(郵送料は着払いです)

問い合わせは、三宅町未来創造部企画課、電話0745(44)2001。

昨年は「雷のおちない神社(小柳)」、「雨たんもれ多度さん(但馬)」でした。

今回は、地域に伝わる民話の絵本のお知らせです。

花冷えというか、桜は散ったものの、まだ寒いですね!
みなさん、お元気で!

ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の総会/グリム童話講演会:盛会のうちに終了!

2013年04月13日 | 日記
昨日は、ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の総会があり、
今年度の活動計画を決定しました。

今年の主な活動は次の通りです。

1.奈良民話祭り
    8月8日(木)昼・夜 奈良町物語館
      9日(金)昼・夜  奈良町物語館

2.「ナーミンテラーズ」(ならの民話の語り手)のためのワークショップ
     4月16日(火)午後1時~2時 基本講義
     6月4日(火)18日(火)認定のためのお話会

3.奈良県下の子どもたちにお話を届ける活動(各種お話会への参加)
    ★ 絵本ギャラリーでのおはなし会
    ★ 春日公民館サマーシアターでのおはなし会    
    ★ 奈良市立北部図書館おはなし会 毎週水曜午後  ほか

4.おはなし勉強会
    毎月1回 第2火曜日 

5.一般向けの『子どもと家庭の奈良の民話』3分冊(ナーミン発行) 今春発行予定

6.ナーミンのホームページを近日中に開設


総会のあと、講演会もあり、50人を超える方が来てくださいました。
テーマはグリム童話とカルヴァン派と近代で、グリム童話「幸せハンス」と「貧乏人と金持ち」をめぐって
村上郁さんの語りのあと、私が講演しました。

グリム童話をヨーロッパの類話と比較してみると、グリム童話の特徴があざやかに浮かび上がります。
そこには、カルヴァン派の思想、モラルが埋め込まれていることが明らかになりました。


「幸せハンス」の話は本来、愚かな物々交換をする主人公を笑いとばす「笑い話」であった。
しかし、民衆はやはり最後には無一文では耐えられない。やはり賭けに勝って大金持ちになって満足したいのである。
それでこそ貧しい庶民は本当に笑えるのである。
ところがグリム童話は、アンデルセン系の民話の世界とは違って、賭けは許されないのである。
グリム兄弟の祖父はカルヴァン派の牧師であり、グリム兄弟は厳格なキリスト教の教えのもとで育てられた。
民間伝承を素材にグリム童話が編まれる際には、カルヴァン派が生み出した倫理思想というフィルターが掛けられた。
市場経済には賭けや暴利は許されないのである。

「三つの願い」の民間説話は、アラビアン・ナイトの「艶笑譚」から、ヨーロッパではソーセージをめぐる「愚かな夫婦の笑い話」として定着し、
それがグリム兄弟によって、「信仰深い夫婦の聖者伝風の教訓話」に仕立て上げられ、
『子どもと家庭のメルヒェン』として近代市民国家の子どもたちに受け入れられるようになったといえるわけある。

講演では、時間がなく、うまくまとめられませんでしたので、
このブログで結論部を再録しました。


では、ナーミンのみなさま、
今年も、語りの文化、子どもの好きなお話の文化を奈良から発信しましょう!

ブログをお読みのみなさま、
今年の「奈良なら民話まつり2013」に来てくださいね!
燈花会の期間中の8月8日、9日に 奈良町物語館で開催されます。


説話・伝承学会4月27日~28日静岡文化芸術大学・シンポ<来訪神の伝承>

2013年04月06日 | 日記
今日は学会のお知らせです。

説話・伝承学会が4月27日~28日に
浜松にある静岡文化芸術大学で開催されます。



27日(土)は講演会です。

インドネシア、バタック社会におけるヤシ酒をめぐる習俗 池上重弘氏
モノ・言葉。心意―俗信と民間説話           常光 徹氏
『宇治拾遺物語』の説話と伝承             廣田 収氏

いずれも面白いテーマですね。

28日(日)は、午前が、日本と外国の説話について二つの会場に分かれて
それぞれ各4名の研究発表があります。
上記のプログラムをご覧ください。

グリム童話については下記の発表がありますよ。

眠れる森のブリュンヒルドとしてのKHM50  横道 誠氏


それから、午後はシンポジウム<来訪神の伝承>です。
主としてアジアの来訪神について論じられますが、
ヨーロッパでも日本のナマハゲとよく似た祭りがあります。

とても興味深いシンポジウムですね。

よろしかったら、浜松まで出かけられませんか?

詳しくはポスターをご覧ください。