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日本オオカミは東吉野で絶滅した!

2010年08月23日 | 日記
吉野の民話地図作成の資料あつめのため、
8月19日、20日と東吉野村と吉野町にフィールドワークを
してきました。
長年調査したなじみのある地域なので、
効率よく、伝説の背景にある事物を確認できました。
しばらく、ブログでは、吉野の民話を取り上げましょう!

東吉野村の街道筋にニホンオオカミの像が立っています。


(奈良教育大学教授 故久保田忠和先生制作)

なぜかというと、1905年(明治38年)1月23日に、奈良県東吉野村鷲家口で捕獲された
若いオスのニホンオオカミが確実な最後の生息情報、という。つまり、
「日本オオカミは東吉野で絶滅した!」といえるのである。
オオカミの顕彰のため、その像が建てられたのです。


というわけで、私どもが集めた東吉野の民話にもオオカミの話は、数話あります。
そのひとつを紹介します。


オオカミのおんがえし

むかしは吉野にもオオカミがすんどったんやで。
ある月夜のこと、オオカミが村の在所に来てギョオー、ギョオー鳴きよるねん。
鳴いて鳴いてしゃあやないもんやよってに、村のもんが何か知らんと思て、出ていって見てん。
そしたらオオカミがえらい苦しそうやねん。
オオカミの口をあけてのぞいてみたら、のどに牙が刺さっててんて。
たぶん猪を食べてその牙が刺さったんやろ。村のもんは
「そんなんやったら、おまえ、その牙抜いたるさかいにな、噛みも何もすんなよ」
て約束さして、牙抜いたったんやてな。オオカミ、喜んで帰って行きよったんや。
そしたら、その明くる日、その人の家の前にえらい大きい猪が転がしたあってんて。
「こら、オオカミが持ってきてくれたにちがいない」て、みなでいうてたんやて。

原話:竹原威滋・丸山顕徳編『東吉野の民話』
語り手:萬谷史郎(東吉野村滝野)
再話:村上郁          不許転載


このように、東吉野の村人たちは動物と交流を持ちながら、生活していたのですね。



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1 コメント

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 (竹本万里子)
2015-10-16 22:26:31
大型の野生動物が日本のような海に囲まれた小さな島国に生き残っていた、なんと、豊かな自然を持った国だった、のでしょうか。豊かな自然は豊かな民話の元でもあったのですね。
日本狼が、最後に吉野にいたとは、しりませんでした。
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