竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

2015正倉院展で飛天に会ってきました!

2015年10月31日 | 民話
思い切って今年も正倉院展に行ってきました!



メインの陳列は、「紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)」です。
小花文を斜格子風に配した背面のデザインは現代にも通じるものがあります。



次に注目すべきは、「山水花虫背円鏡(さんすいかちゅうはいのえんきょう)」です。
鏡背面には山々で遊ぶ鳥や動物が描かれています。


雌雄の鹿の戯れる姿は見ていて、ほほ笑ましく、その表現に感心しました。
唐からの舶載品だそうです。



次に見たのは、「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」です。
これは、「染め象牙のものさし」です。
表の面には唐花文と鳥を交互に配してあります。

裏面には山岳、鳥、花、雲、飛天を描いてあります。





特に、この飛天の表情豊かな表現には目を見張りました!

それで、思い出しましましたのが、
白鳳展で見た「薬師寺東塔の水煙に描かれた飛天」です。


今年の正倉院展では、飛天たちに会えたのが印象的でした。

11月9日(月)まで開催中です。

みなさんも、是非、いらしてください!


(ナーミンのみなさんに連絡)
奈良教育大学の語りの講座のお知らせは、
次回ブログに載せます。しばらくお待ちを!


では、みなさま、来週末にまたブログでお会いしましょう!
お元気で!

中上武二編著『大和の民話』(奈良県篇、奈良市篇の2冊)自費出版される!76話紹介!

2015年10月24日 | 民話
今日は、本ブログのメイン・テーマの話題です。

奈良教育大の大先輩:中上武二さんが長年のフィールド調査で蒐集されたお話のうち
76話をまとめて、『大和の民話』を自費出版されました。




-------以下、朝日新聞(20115.10.12.)より---------------------------------

 長年、県内各地に伝わる民話を収集してきた小学校の元校長が、「大和の民話」(奈良県篇、奈良市篇の2冊)を自費出版した。
子供たちに聞かせるように、優しくリズム感のある語り口で76話を紹介している。

 著者は、水間、帯解、西大寺北の奈良市立の各小学校で校長を務めた中上武二(なかうえたけじ)さん(72)。
野迫川村弓手原(ゆみてはら)で生まれた。
「お大師さん(空海)が高野山にお寺を開く前、弓手原にやってきて候補地にしたこともあった」。
そんな言い伝えを囲炉裏端で祖母や曽祖母から聞いて育った。

 奈良学芸大(現奈良教育大)に入り、民俗学者の林宏・助教授(当時)に師事。
下北山村や奈良市の山間部での聞き取り調査に付き従った。宮司や住職、お年寄りの語りに耳を傾けては、つぶさに書きとめた。

 小学校教諭になってからも、十津川村や野迫川村での調査を続け、研究会で報告。
教室で子供たちに、季節や年中行事に合った話を語り聞かせた。

 「校長先生は昔話をする時、目が大きくなります」と作文に書いた子も。
「うちのじいちゃんもその話、知ってるぞ」などと言われると、家を訪ねて話してもらうこともあった。

 1998年、情報誌「月刊大和路ならら」で民話連載を開始。古事記や日本書紀に原典があるものも、そのまま引くのではなく、
必ず登場する舞台に足を運び、地元の人たちに言い伝えを確かめた。
原文の雰囲気を損ねず、わかりやすく伝える言葉選びに心を砕いた。

 挿絵は現奈良市立春日中学校の杉本哲也教諭らが担当。中上さんは2010年にくも膜下出血で倒れるまで、136話をつづった。

 今回、この中から奈良県篇に31話、奈良市篇に45話を収録。200部ずつを自費出版した。
大和名所記や今昔物語集が伝えるものや、奈良市の「牛に生まれ変わった話」「鳥見の蟹(かに)の恩返し」など
日本霊異記に書かれたもの……。奇想天外な展開の中に、今にも生きる教訓がちりばめられている。

 「家族のかたちや娯楽が変わり、伝承は途絶えつつある。各地に伝わる民話を、地元に関心を持つ入り口にしてもらえたら」。
大和の民話は、奈良市の県立図書情報館で読むことができる。(栗田優美)  

-------以上、朝日新聞より-------------------


この記事を読んで、一部分けてもらおうと、すぐ先生に連絡したが、残念ながら、在庫はないとのこと。
奈良市立中央図書館、県立図書情報館にあるので、閲覧くださいとのことでした。

このような郷土史家の地味な活動と翻字・再話テキストが、わたしたち、ナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)では
大切な資料なのです。

是非、拝読して、私たちのレパートリーに入れたいと思います。


たとえば、次のような話は面白いですね。


-------以下産経新聞(2015.9.19.)記事より-------

奈良県編の箸墓(桜井市)にかかわる民話では、長者の男が貧乏な暮らしを願い、
「箸を捨てると天罰で貧乏になる」という言い伝えから毎日、箸や膳などを捨て、それが積もって箸墓になったという話や、
大峯山寺(天川村)では千手観音の功徳を説いた千手陀羅尼を唱えながら修行していた聖人の男が、
深い谷で大蛇の群れに襲われそうになったが、鬼に助けられる-という話などが紹介されている。

--------以上産経新聞記事より--------------------


では、みなさま、来週末、次のブログでお会いしましょう!
これから寒くなります。みなさま、お元気で!

★古民家で聞く大和の昔話★10月25日(日)★都跡公民館の隣:旧田中家住宅★

2015年10月17日 | 民話
生駒山の山並みをみると、すっかり黄色と赤に色づいています。
肌寒さも感じる頃となり、秋も深まりましたね。
みなさま、お元気ですか?

今日は、「古民家で聞く大和の昔話」(秋)の案内をしましょう!

奈良に伝わる民話や伝説・昔話を旧田中家住宅(奈良市指定文化財)で聞くイベントです。



日程 2015年10月25日(日)10時~11時20分
場所:都跡公民館 隣 旧田中家住宅

語りはナーミン(奈良の民話を語りつぐ会)の会員のみなさんです。

参加費無料で申込みは不要ですので、
お時間があれば、秋のひとときをぜひいらしてださい。

詳しくは、案内とアクセスをごらんください。

では、プログラムをあらかじめ載せておきましょう:

1.紙芝居  「良弁杉」
2.おはなし 「十三鐘の石子詰め」
3.不審ヶ辻子の鬼 
4.わらべうた
5.十五夜の月
6.おばすて山
7.金を生むねこ 
8.伯母ヶ峰の一本足
9.わらべうた
10.きつねのお産
11.きつねにだまされた魚屋さん
12.てんぐのまな板石
13.あんころもちとあみだ様
14.園生姫

(当日の都合で語りの順に一部変更あり)


今日は、古民家で語られる大和昔話のイベント情報でした。

では、来週末にブログでお会いしましょう!

  

臨時ブログ:桝田静代さんが「日本自費出版文化賞・大賞」の授賞式に臨む!

2015年10月14日 | 民話
9月4日のブログでお伝えしましたように、
自費出版の著者の業績をたたえる第18回日本自費出版文化賞の大賞に、
天理市在住、桝田静代さんの著書「絵双六―その起源と庶民文化」(京阪奈情報教育出版)が選ばれました。
ことしは7部門になんと612点の応募があり、そのなかから最終選考会で桝田さんの著書が最高賞の大賞に選ばれたのですから、
すごいことです。

そしてこのほど、10月10日(土曜日)に受賞式が
アルカディア市ヶ谷の5階「大雪の間」にて14:00~17:00まで執り行なわれました。


日本自費出版文化賞の大賞を受けられる桝田静代さん


大賞の表彰状を持つ桝田静代さん、選考委員の中山千夏さんとともに。

表彰式では、自費出版アドバイザー認定式、日本自費出版文化賞の受賞者(今回は14名)の表彰と、
受賞者による受賞作品成立の経緯や執筆の苦労などの特別スピーチが会場を和ませていました。
その他、会場では入賞・入選・一次選考通過作品と過去の受賞作品の展示、選考委員による講評も行われました。

大賞
『絵双六―その起源と庶民文化―(枡田静代さん、研究評論部門)』

部門賞 (各部門一点)
地域文化部門=『富山県における学童集団疎開-戦争、子どもと地域の観点から-(須山盛彰さん)』
個人誌部門=『平成おくのほそ道 道中記(澤田康さん)』
小説部門=『失郷民-趙南冨とその時代-(中田哲三さん)』
エッセー部門=『アンコール・極上葡萄酒談義(近藤聰さん)』
詩歌部門=『遊絲(嵯峨美津江さん)』
研究評論部門=『献身 遺伝病FAP(家族性アミロイドポリニューロパシー)患者と志多田正子たちのたたかい(大久保真紀さん)』
グラフィック部門=『UPPER MUSTANG-Way To Lo-Mauthang(井上一夫さん)』

特別賞
『稲作のマツリと祈り-淡路島の年中行事-(永田誠吾さん)』、『『おいしい』に想いをこめて(長岡末治さん)』、『dwipa14 ―島旅のあいまい魅―(花澤周志さん)』 、『国蝶の生れ立つ樹(神山奉子さん)』、『小川郷太郎作品集(小川郷太郎さん)』、『詩集ひかりのうつわ(半田信和さん)』、『瀬戸口靖代句集―精霊舟―(瀬戸口靖代さん)』


表彰式で各部門賞、特別賞の受賞者とともに記念撮影

今日は、臨時特報ブログとして、自費出版文化賞の表彰式の模様をお伝えしました。

桝田さんは、梅花女子大学の大学院 児童文学専攻で研究され、博士論文を出版され、
「研究評論部門」で大賞を取られたのですが、
上述しましたように、実にさまざまの部門で自費出版されています。

いまは、ネット・ロア(電網文芸)の時代です。
無名の著者が、ネットで文芸作品、昔話の再話、趣味の作品、自分史などをアップし、
それが話題になり、出版される時代です。

みなさまも、生きた証を遺すため、自費出版に挑戦しませんか?

では、今週末の定番のブログでお会いしましょう!

私の書評(新刊紹介):吉田孝夫『山と妖怪 ドイツ山岳伝説考』(八坂書房)掲載!

2015年10月10日 | 民話
ようやく紅葉の秋ですね。
ブログもここらでちょっと趣向を変えて、
アカデミックな内容となります。

ひょっとしたら、みなさまもご存知かもしれませんが、
ドイツの児童文学者プロイスラーの語る伝説物語集『わたしの山の精霊ものがたり』
山の精霊リューベツァールにまつわる楽しいお話が入っています。
2012年の夏休みの本(緑陰図書)の課題図書にもなっています。
それを翻訳されたのが、奈良女子大学の吉田孝夫先生です。

今日のブログは、その先生の近著『山と妖怪 ドイツ山岳伝説考』を読んで
その書評を『口承文芸研究』38号(2015年3月)に書きましたが、
それをブログで公表しましょう!



以下、ゆっくり、じっくり読んでくださいね。

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 白雪姫に登場する七人の小びとは鉱山で金を掘る仕事をしている。
ホレばあさんは羽ふとんをはたいて地上に雪を降らせる。
― グリム・メルヒェンでおなじみの小びともホレばあさんも元をただせば、山の聖霊であり、
グリム・ドイツ伝説集にそのルーツをみることができる。
本書はそのような山の妖怪についてドイツの民俗学研究者の文献を渉猟しながら論じたものである。

グリム・メルヒェンについてはすでに各話の語り手が誰であるか、どのようにしてグリム兄弟が
原話を読むメルヒェンに仕立て上げていったかなどが明らかにされている。
これに対しグリム伝説集については日本ではほとんどその研究の実態が知られていない。
本書はその意味において貴重な情報を得ることができる書物である。

 最近のグリム伝説研究(H=J・ウター)によると、
グリム兄弟はメルヒェンと同様に、伝説集の編纂に際し、そのテクストを人為的に加工した跡がみられるという。
グリム兄弟が主として利用した近世の資料は、中世的なキリスト教世界から醒め始め、
啓蒙主義の萌芽を感じ取ることができるものだった。
ところが19世紀のグリム、ドイツの民族・国民・民衆の文化の大いなる根源を探求したグリムは、
近世の伝承内容を、逆に「再神話化」したという。
つまり伝説資料を含む文脈の削除、異版テクストの混合、文章のモンタージュ、
不都合な出典の隠蔽などをしたのである。
具体例を挙げると、伝説集184番「悪魔の水車小屋」においてヤーコプ・グリムは
悪魔との契約期間を「その夜のうちに」という文に「鶏が時を告げる前に」というテクストを加筆している。
これは、雄鶏の鳴き声が持つ俗信的意味合いに注意を払ってのことである。
グリムは物語をそのまま記録することよりも、むしろ古代の信仰の痕跡を重要視したかったのであろう。
本書の著者はこのように最近のドイツにおけるグリム伝説研究についても詳細に紹介している。

 本書を目次に従ってみてみると、まず前半においてドイツの鉱山伝説を考察している。
ヨーロッパの近世において鉱山業は時代の基幹産業であり、この時代のドイツは、
鉱山業を牽引する地位にあった。この空間に、古来のどのような言説が残存し、
どのように特殊な伝説を開花させていたのかを丹念にたどっている。

そして後半においてはドイツの山の妖怪を考察している。男の山の妖怪として「リューベツァール」を、
女の妖怪として「ホレさま」を取り上げ、男女それぞれの妖怪にまつわる伝説と社会との関係を考察している。
とくに、グリム伝説集の主要な出典となっている近世ドイツのヨハネス・プレトーリウスの書物からの
「リューベツァール」について論じた箇所は、圧巻である。
リューベツァールとは、人の命が寄せては返す、山の異界と日常との境界を行き来して、
両者を隔てつつ結ぶ魂の導者であるという。
著者はまた、古代日本の『記紀』における、奈良葛城山での一言主神の顕現の物語や
『日本霊異記』における役行者の逸話にも言及し、霊的世界に通じた呪術者・シャーマン的存在の
東西比較も試みている。

 このように、山の妖怪をめぐる伝説が近世を経て近代へと生き延び、
今なお現代伝説としても語り継がれることの意味を多くの文献に当たり、
多角的に考察している意欲的な論考である。
写真、図版、地図も多数掲載されており、読みやすく工夫されている。
                        (竹原威滋)

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以上です。

最後まで読んでくださり、ありがとう!

さらに、興味はあれば、本書や『わたしの山の精霊ものがたり』を
是非、読んでください。

梅花女子大、奈良大の受講生のみなさまは
自由仮題のテーマに取り上げてもいいですね。

今日は、書評を取りあげました。

では、来週末に、またブログでお会いしましょう!
それまで、お元気で!


★講演会案内★メルヘンの国で学び、暮らし、研究する★金城朱美★10月7日・京都府大★

2015年10月03日 | 民話
梅花女子大・奈良大学の受講生のみなさま!
そしていつもブログを見ていただいているメルヘン(お話)愛好家のみなさま!

今日のブログは、講演会の案内です。



☆★☆講演会のお知らせ☆★☆

演題:メルヘンの国で学び、暮らし、研究する

講師:金城ハウプトマン朱美(ゲッティンゲン大学博士)

日時:2015 年 10 月 7 日(水)16 時 10 分〜

場所:京都府立大学稲盛記念会館 204 号室 会場へのアクセス

問い合わせ先:京都府立大学文学部欧米言語文化学科教員 横道誠
          メール:yokomichi_m★kpu.ac.jp (★:ATマーク)
※事前の申し込みは不要です。

 
講師からのメッセージ:
グリム兄弟が教鞭を取っていたゲッティンゲン大学 ― 私がその大学に留学したのは
1998年のことでした。
グリム兄弟が生まれたヘッセン州の小さな街で9年ほどの生活を送った私は、
現在ドイツの首都ベルリン ― グリム兄弟が永眠する街でもあります ― で暮らしています。
今回の講演では、『グリム童話』が今も息づくドイツでの実際の生活、仕事、子育て、
研究に関する経験談を織りまぜながら、現在のドイツ事情についてお話ししましょう!
さて、『グリム童話』に登場するような森は今でもドイツにあって、散策できると思いますか?
それから、海外での生活は夢のような暮らしなのでしょうか。
そんなこんなの疑問に、どしどしお答えします!

講演案内ポスターはこちら

金城先生は、グリミン(グリムと民間伝承研究会)のメンバーで
ドイツと日本をまたにかけてご活躍中です。
興味深いお話を聞けます。

ご都合つけば、是非いらしてください。

今日は、講演の案内でした。
ではまた、来週末、ブログでお会いしましょう!