竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

東洋大の基調講演「グリム童話の挿絵の歴史」聴いてきました!次の日曜28日武庫川女子大でも聴けますよ!

2012年10月23日 | 日記
『グリム童話』刊行200年記念国際シンポジウム
「グリム童話200年のあゆみ―日本とドイツの架け橋として―」が
先週土曜日10月20日午後、東洋大学にて開催されました。
500名を超える参加者があり、盛会のうちに終了しました。


<基調講演 1 〉 マールブルク?「だがこの町自体はひどく醜い」
―グリム兄弟と故郷ヘッセンとの相反的関わり―
ハルム=ペア・ツィンマーマン(チューリヒ大学教授)

<基調講演 2 〉文字から図像へ
―19~20世紀における『子どもと家庭のためのメルヒェン集』挿絵の歴史―
ベルンハルト・ラウアー(グリム兄弟博物館館長)

<シンポジウム>『グリム童話』研究がつなぐ過去と未来
  パネラー:溝井裕一、野口芳子、竹原威滋
  司会:大野寿子、田中雅敏

詳しい報告が東洋大学の下記のサイトに載っていますので、ご覧ください:

東洋大学『グリム童話』刊行200年記念国際シンポジウム



ラウアー館長の講演「グリム童話の挿絵の歴史」の映像の一コマです。

ラウアー氏の講演は次の日曜日10月28日武庫川女子大のグリムシンポジウムでも聴けますので、
関西方面の方は 是非来てくださいね。下記のサイトをご覧ください。
武庫川女子大・グリムシンポジウム「グリム童話とジェンダー」


シンポジウムの大役を果たし、ほっとして、東京でもう一泊して
六本木の国立新美術館で美術展「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」を見てきました。



展覧会のポスターです。
右の女の子の絵は画家ルーベンスが描いた5歳の愛娘の肖像画です。
さすが巨匠ルーベンスの絵だけあって、かわいい娘の表情をバッチリ捉えていますね。


国立新美術館は、黒川紀章の設計による斬新なガラス張りの建物です。

帰りの新幹線から夕闇せまる富士山を見ることができました。



緊張と安らぎの東京滞在の3日間でした。


★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3:グリム兄弟がメルヘンを集めた町カッセル

2012年10月15日 | 日記
今回は ★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その3

グリム兄弟が中等学校時代を過ごした町カッセルです。
また、グリム兄弟がマールブルク大学を卒業してからメルヘンを集めだしたのもこの町です。

前回同様、写真で綴りましょう!



ヴィルヘルムスヘーエ公園の丘の上から展望したカッセルの町

楽しい少年時代をシュタイナウで過ごしたあと、
グリム兄弟は1798年に母の姉を頼って、カッセルに来て、
リュツェーウム(中等学校)に入学します。

二人はよく勉強ができたので、ヘッセン選帝侯の奨学金を得て
マールブルク大学で勉強します。
その後、再び、母の住むカッセルにもどり、
友人、知人からメルヘンを聴き、集めます。

カッセルは、グリム童話の誕生の地なのです。



グリム兄弟広場にある兄弟像です。ハーナウの像より小さいですが、
仲の良い兄弟の雰囲気が感じられますね。



兄弟像のすぐ近くにグリム兄弟が1814年から1822年まで住んだ建物です。
この3階を借りて住んだそうです。



これが「グリム兄弟博物館」になっているベレヴュ宮殿です。



グリム兄弟の特別展の看板のある入口です。



これは兄弟が所持していたグリム童話です。
そこには兄弟の手書きで貴重な書き込みメモがあります。

下段の2冊は初版の第1巻(1812年刊)と第2巻(1815年刊)で、ユネスコの世界記録遺産になっています。
上段の3冊は第2版です。両端のが第1巻と第2巻(1819年刊)です。真ん中のは注釈編(1822年刊)です。



グリム兄弟博物館には、世界中のグリム童話の翻訳本が展示されています。
池田香代子訳の日本語版も見えていますね。



これは、 楊武能訳の中国語版です。グリムは中国語で「格林」と書くのですね。



博物館の売店にはグリム童話に関するグッズが売られていました。



グリム兄弟博物館で9月中旬に開催された「グリム・国際シンポジウム」に参加しました。
ドイツ、日本、中国の研究者による発表・討論を通じ、最近のグリム研究の動向を知ることができ、有意義な集会でした。

主なテーマは、グリム童話における数「7」、中国のおけるグリム童話の受容、
ユーゲント・シュティールとグリム童話の挿絵画家オットー・ウッベローデ、DDRにおけるグリム童話、
映画における「白雪姫」、インターネットにおけるグリム童話、グリム兄弟とロマン派、
トーマス・マンとグリム兄弟などでした。



私も飛び入りで「ならまち民話地図」のドイツ語版、中国語版などの制作について紹介し、
民話の次世代へ伝えることの意義について話しました。



シンポジウムの休憩時間、中庭での語らいのひとときです。



研究集会のあと、ヴィルヘルムスヘーエ公園の丘の上に登り、ヘラクレス像を仰ぎ見ました。



丘からみたカッセルの町です。

中腹に「レーヴェンブルク城」が小さく見えていますね。
とてもメルヘンチックなお城ですよ。



そして最後に丘の展望レストランで、ヘッセンの郷土料理
おいしいソーセージとビールで乾杯!

楽しい2日間でした。

次回は、★ドイツ・メルヘン街道を歩く★その4:グリム童話の語り手フィーマンおばさんを訪ねて! です。

お楽しみに!

ナーミン会員が奈良新聞に「絵本のまど」を連載中! / ブログ版:番外編「七わのからす」ホフマン絵

2012年10月06日 | 日記
ナーミン(奈良の民話を語り継ぐ会)会員がリレーで
奈良新聞の人気コラム「絵本のまど」を今年末まで担当しております。

今までに次のような記事が載りました。

1) 8月6日---- 粟田妙子-----ごろはちだいみょうじん(福音館書店)
2) 8月13日--- 安岡理加---- ちんころりん(福音館書店)
3) 9月3日---- 藤井幸子---- おなかのすくさんぽ(福音館書店)
4) 9月24日--- 村上郁-------てとてとてとて(福音館書店)
5)10月1日----稲実美恵---- おつきさま(フレーベル館)

それぞれ、子どもたちの目線で絵本との出会いが
印象深く語られています。

今後も以下の日程で掲載されますので、是非 奈良新聞をご覧くださいね。
10月8日、10月22日、10月29日、11月5日、11月26日、12月3日、12月24日、12月31日

ところで、私も大みそかの日にスイスのカリジェの絵本を紹介するつもりです。
スイスの絵本はほかにも素敵な作家がいて、とても好きです。

そこで、新聞紙上でなく、このブログで番外編を特別掲載します。

七わのからす―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ)
フェリックス・ホフマン絵、瀬田貞二訳、福音館書店





 私がかつてスイスに留学中、恩師のマックス・リューティご夫妻を我が家の夕食にご招待したとき、
五歳の息子に贈ってくださったのがこの絵本のドイツ語原本だったので、とても思い出深い本です。

 父親の呪いの言葉で七人の男の子がカラスに変えられる! 
あまりに真に迫る表現にカラスのバタバタという不気味な羽音が聞こえてくるようです。
女の子は兄を捜しに住み慣れた村を離れ、森を通り抜け、世界の果てまで歩いてたどり着きます。

旅の不安と兄との出会いの喜びが実にうまく感情表現されています。

松岡享子さんは『昔話絵本を考える』でこの絵本を取り上げています。
子どもは昔話を聞きながら、想像の世界をはばたき、お話の世界をイメージします。

この絵本はスイスの子どもたちが頭に描くグリムの世界です。
なぜなら、この絵本に登場する夕どきの一家団欒、壺の落ちた泉、お城と教会のある村などは、
ごくありふれたスイスの片田舎で見られる風景そのものなのですから。

(奈良の民話を語りつぐ会・竹原威滋)