竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

丸山顕徳編『大和の歴史と伝説を訪ねて』が刊行される!

2016年03月26日 | 民話
今日のブログは、新刊情報です。

6年前に刊行された丸山顕徳編『奈良伝説探訪』の続編が出ました。


丸山顕徳編『大和の歴史と伝説を訪ねて』(三弥井書店)です。

先ずは、奈良新聞の書評を載せましょう:

----奈良新聞---書評より--------------------------

「奈良伝説探訪」の続編で、前作は奈良市が中心だったが、
本著は天理、桜井、橿原、香芝、葛城、御所、宇陀など
県内中和地域を中心に日本国家創世から現代まで、
36の大和の伝説・伝承が紹介されている。

丸山花園大教授が編者で、執筆陣は多彩だ。
「静御前のふるさと」(鈴鹿千代乃神戸女子大教授)や
「本居宣長の歩いた道」(藤原享和立命大教授)ら関西の専門家が
結集して奈良に眠る伝説を解説。

泉武(高松塚壁画館)、軽澤照文(東登美ケ丘小教諭)、
角南聡一郎(元興寺文化研究所)、上島秀友(日本ペンクラブ会員)、
藤井稔(天理高教諭)ら県内の研究者も参加している。

「この書を携えて大和路の歴史ロマンの源泉を訪ねてほしい」と丸山教授。
伝統・伝承のいわれや歴史的背景は知ってそうで知らない場合が多い。
歴史好きのみならず、文学、民俗学に興味のある人、散策好きなど
幅広い層に読んでもらいたい本といえるだろう。`(山)
(三弥井書店、税別2300円)

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【目次】

Ⅰ 大和平野の中南部を歩く
田原本町・橿原市・明日香村・高取町
1橘寺の二面石/2明日香の亀石と亀形石造物/3神武天皇陵と国源寺/
4六御県/5小子部の里/6茂古の森/7藤原の里/8大和猿楽四座/9今井町の今西家/
10近世の山城・高取城/ 11芝村騒動と耳成山/12香久山と耳成山の狐の民話

Ⅱ 大和平野の東方を歩く
天理市・桜井市・宇陀市
13大神神社と本殿/14黒塚古墳と三角縁神獣鏡/15大和神社と大国魂神/
16石上神宮と神剣/17長谷寺縁起/18業平の姿見伝説/19物語の作者/
20三輪の玄賓僧都伝説/21初瀬街道/22布留郷ナモデ踊りの由来/
23本居宣長の歩いた道/24泥海からはじまる世界/25三輪そうめん/
26三輪の酒/27山の辺の道

Ⅲ 大和平野の西方を歩く
葛城市・大和高田市・御所市・香芝市
28ノミノスクネとタイマノケハヤ/ 29タイマノケハヤと良福寺の腰折田/
30大国主の約束した王城守護と鴨氏の神社/31大津皇子の二上山墓と薬師寺龍王社/
32当麻寺と浄土信仰/33奥田の蓮池/34吉祥草寺の大トンド/35静御前のふるさと/
36野口神社の汁掛祭と蛇綱曳き

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奈良の民話を語りつぐ会の皆さん、奈良の民話に関心のある方は
是非、読んでくださいね!

今日のブログは、新刊情報でした。

奈良もあと少しで桜も開花、春ですね!

では、来週末にブログでお会いするまで、お元気で!!

ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」:これも電網文芸だ!?!

2016年03月19日 | 民話
今、ネットで話題になっているのが、
匿名ブログにかきこまれた記事「保育園落ちた日本死ね!!!」です。

この記事は2千回以上リツイート(転載)されたそうです。



先ずは、その記事を載せます:

----------はてな匿名ダイアリー(2016.2.15)---------

保育園落ちた日本死ね!!!

何なんだよ日本。
一億総活躍社会じゃねーのかよ。
昨日見事に保育園落ちたわ。
どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。
子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?
何が少子化だよクソ。
子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。
不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。
オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。
エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。
有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。
どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。
ふざけんな日本。
保育園増やせないなら児童手当20万にしろよ。
保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーってそんなムシのいい話あるかよボケ。
国が子供産ませないでどうすんだよ。
金があれば子供産むってやつがゴマンといるんだから取り敢えず金出すか子供にかかる費用全てを無償にしろよ。
不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。
まじいい加減にしろ日本。

------------以上----------------------------

ブログの投稿者は、東京都内に暮らす30代前半の女性。
夫と間もなく1歳になる男児と3人暮らし。
事務職の正社員で、4月に復職の予定だったが、
保育所に子どもを入れられなかったという。(朝日新聞による)

このブログは、多少乱暴な文章表現だが、子育てと仕事の間で悩む女性の声を代表した悲痛な叫び声である。

現代は、ネットで誰でも世界にメッセージを発信できる!
そして、世間の人々が共感すれば、たちまち反響を呼ぶ。

私は、この種のメッセージを、「電網文芸」と呼ぶ。
今まで、このブログで扱ったのは、「世界百人村」と「Today」です。

時代の気分を適格にとらえたネットで拡がったメッセージです。

このブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」は、国会でも取り上げられ、
ネットの署名サイトで3万人近くの賛同を得て、塩崎厚労相に直訴された:



また、賛同する人々が国会前でも訴えた:



(写真はいづれも「朝日新聞デジタル」より)

おそらく、このブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」は、
新聞に投書しても、多少過激な表現なので採用されなかっただろう。
「書承文芸」(文字資料)として残らなかっただろう。

ネット時代は、誰もが自由にメッセージを発信できる。
だが、その内容は玉石混交である。
ただ、時代の要求、多くの人の共感を呼ぶメッセージは
「電網文芸」として語り継がれる。「口承文芸」の昔話のように。

今日のブログは、時事問題をわたし流に取り上げました。

もうすぐ、桜が開花しそうですね。

では、みなさま、来週末までお元気で!

酒井董美氏の書評:ヴィーヘルト作『くろんぼの ペーター』:著者は伝承民話の法則を熟知している!

2016年03月12日 | 民話
今日のブログは酒井董美先生の書評を紹介します。

ある会合で酒井先生に私の愛読書ヴィーヘルトのメルヘンを紹介したところ、
早速、新聞書評風に感想を書いて送ってくださったのです。
それが、とても的確な内容だったので、
日頃の私のつたないブログに花を添えていただこうと
あえて公表させていただきました。(ご本人の許可を得て)

-------ここより書評--------------------------------




【書評】
 ヴィーヘルト作。国松孝二訳『くろんぼのペーター』(岩波少年文庫)
新書判276ページ 岩波書店刊 定価300円(初版当時)

酒井董美(さかい ただよし)

3月5日、立命館大学を会場としてアジア民間説話学会があり、
その後の懇親会でたまたま隣席になった奈良教育大学名誉教授の竹原威滋氏から、
「若い時代に読んで感動した本です」と推薦されたのが本書、昭和30年が初版である。

 著者エルンスト・ヴィーヘルト(1887-1950)は東ドイツの人。
第2次世界大戦でナチスの暴虐の元に強制収容所に入れられ、
放免されてからも秘密警察に監視されつつ、次代を担う子どもたちに希望を托し、
童話を書くことで対抗した人という。
これらの作品は大戦の末期である昭和19年から20年の冬にかけて書かれた40編の中から
7編(母の心、チビのドライベスト、もうない島、沼の主モールマン、金の鳥、
くろんぼのペーター、この世でいちばん大切なもの)が本書に翻訳され収められている。
どの物語も筋書きが巧みであり、なおかつ重厚で面白い。

 訳者の国松孝二氏は作者について「一生のあいだ、まっすぐな清い心にあこがれ、
正しい素朴なたましいを求めた作家です。…」と述べている。
本書の作品はどれ一つをとってもそのような精神に貫かれている。

 また著者エルンスト・ヴィーヘルトは民話の法則をじゅうぶんに熟知して活用している。
すなわち、伝承民話ではよく出てくる3人の兄弟や成功するのはその中の末っ子になるとか、
試練も3回繰り返されるとか、動植物がものを言ったり、魔法使いが登場し、
魔法の杖でさわると、たちまち土がパンに、あるいは水がワインに変わったりと
民話独得の伝統的手法を駆使しながら、子どもの読者に何の違和感も感じさせない。
そしてごく自然に正義を愛し、農民などの庶民の人々の幸福を願うように描いているので、
人々に何の抵抗もなく歓迎されたものであろう。

 理不尽なナチスのユダヤ人狩りなどを続ける当時の支配階級に対して、
正直で清い心を讃えた童話という武器で戦い続けた作者には、
さすがの政権側も正面切って、これ以上、逮捕、監禁することはできなかったものと思われる。

---------------------以上---------

短い字数でこれほど的確にヴィーヘルト童話の特徴をとらえた書評を読んで、感動しました。

私が若き日にドイツ語の単語を引きながら原書を読みながら、
「これは20世紀のグリム童話ではないか」と直感的に思った理由が
この書評にきちんと明確に書かれています。

ヴィーヘルト童話は、もちろん創作ですが、民話の文法をきちんと踏まえているので
子どもたちも引き込まれて読むのです。

ところで、ヴィーヘルト童話を知っている人は、日本にはほとんどいません。

国家の枠組みを超えて、戦乱の激しさを増す今こそ、
ヴィーヘルト童話を皆に読んでいただきたい。

酒井先生のお蔭で、今日は久しぶりに内容のあるブログになりました。

では、皆さま、来週末、またブログでお会いしましょう!

古事記「国生み神話」が寮実千子(文)/山本じん(画)で絵本になりました!

2016年03月05日 | 民話
今日のブログは、奈良市の作家・寮実千子さんが「絵本古事記」を出版した話題です。



-------先日の産経新聞の記事より-------------
 国内最古の古典「古事記」に描かれた奥深い世界を知ってもらおうと、奈良市の作家、寮美千子さんが、
「絵本古事記 よみがえり-イザナギとイザナミ」(国書刊行会)を発刊した。
画は「銀筆画」で知られる神奈川県秦野市の画家、山本じんさんが独自のタッチで描き、
古事記の古代的感性が伝わってくる一冊となっている。
 寮さんは、泉鏡花文学賞を受賞した翌年の平成18年に、首都圏から奈良に移住。
古事記は以前から読んでいたが、奈良で暮らすようになって、その世界を肌で感じられるようになったという。
 「古事記の古代的心情をダイレクトに伝えたい」。そんな思いから24年末、絵本の原稿執筆を始めたところ、
古事記を編纂した太安万侶ゆかりの多神社(田原本町)の祭りで朗読劇を披露することを依頼され執筆し、朗読。
以後毎年、朗読劇を上演している。
 今回の「絵本古事記」は昨年上演した「黄泉(よみ)返り」を絵本化。
イザナギ、イザナミという男女の神の国生みや、イザナギがイザナミを追って死者のすむ黄泉の国へ向かう話で、
画は神々や植物などが幻想的に描き出されている。寮さんは「子供から大人まで、古事記の奥深さを実感してほしい」と話し、
今後もシリーズとしてさらに発刊を目指すという。
----------「産経・奈良版」2016.1.5.-----------------------------------


「絵本古事記」を手に紹介する美千子さん

早速、絵本を購入し、読んでみました。

寮さんの文は、古事記の原文を親しみやすい明快な文にしており、
山本さんの画は、これまた、すごいです。
イザナギとイザナミが天の柱の周りをまわって国生みをするところを
銀筆を使って幻想的に、しかも写実的に描いている。
凡人にはイメージできない天地創造の壮大なスケールを的確にとらえている。

是非、皆さまも一度手に取ってご覧いただきたいです。

なお、以前のブログ『天からおりてきた河』インド・ガンジス神話が寮美千子氏の文で絵本になりました!もあわせてご覧ください。

風邪が流行っています。
皆さま、来週末のブログでお会いするまでお元気で!