竹原BLOG:奈良民話祭り ― グリム童話・メルヘン・語りの文化 とっておきの話。 

夏の奈良民話祭り:8月5日(金)午後3時より奈良町物語館で4回公演!
奈良燈花会に行きがてら、ぜひ来てくださいね!

新刊紹介:桝田静代「絵双六 ― その起源と庶民文化」刊行!「妖怪ウオッチ」は江戸の双六文化に通ずる!?

2014年11月29日 | 民話
皆さま。
お元気ですか?

今日は、とても面白い本が刊行されましたので、ご紹介します。

皆さまは、きっと子供も頃、お正月には双六をして遊んだことがおありでしょう!

双六の起源や江戸時代の庶民文化として人気のあった双六の歴史などを考察した本を紹介しましょう!



桝田静代著「絵双六 ― その起源と庶民文化」
A4版 巻頭図版8頁 本文372頁 
発売:京阪奈情報教育出版
定価:本体 ¥10,000 税別

桝田さんは「絵双六の研究」について博士論文を書かれ、
学位をおとりになりました。
博士(文学):梅花女子大学大学院児童文学研究科後期博士課程2011年修了

今回、専門書ではありますが、一般の方々にも理解できるように図版なども多用し
分かり易い文体で執筆され、出版されました。

目次から各章のタイトルを挙げましょう。

第1章:絵双六の表現と構造に曼荼羅的世界を見る
     ― 浄土双六から一般的な双六まで ― 

第2章:「名古屋版双六集」考     
     ― シリーズ化して絵双六の世界観を楽しんだ蒐集家たち ―

第3章:江戸後期出版文化における竜宮イメージ
     ― 絵双六「新板竜宮飛双六」をめぐって ―

第4章:江戸版「春興手習出精雙六」考
     ― 絵双六に俳諧一枚擦りの趣向を見出す ―

第5章:江戸版「莟花江戸子数語録」考
     ― 描かれた子どもの姿に見る画題と写実性―

第6章:振分双六「新販女庭訓振分雙六」考
     ― 幕末期の女性たち その多様な生き方 ―

タイトルからもその内容が推測できますね。

「絵双六」というのは、ほんとうに奥が深いです。

曼荼羅の世界、江戸時代の寺子屋、子どもの遊び、当時の女性の生き方、竜宮世界、
いろんな分野を反映しているのですね。
しかもゲーム感覚で人生を体験していき、生きる力を与えてくれる!


桝田さんは双六を求めて、日本中を歩き回られ、閲覧の許可を得て、著作権をクリアーして
出版に至られたご苦労、本当に敬服しております。


全国の公共図書館、大学図書館の基本図書として備えられることを願っております。

皆さまも、購入されるか、
図書館にリクエストして
是非、手に取って読んでみてください。

今、「妖怪ウオッチ」というゲームが流行っていますが、このブームは
江戸時代の庶民が愛した双六文化を今に受け継いでいるのではないでしょうか?



では、来週までお元気で! 御機嫌よう!



五感で味わう「大古事記展」に行って、太安萬侶に会ってきました!?

2014年11月22日 | 民話
すっかり紅葉の季節を迎えました。


自然が演出する秋の色合いを楽しみました。奈良公園にて

それから県立博物館の大古事記展に行きました。



一番見たかったものは、太安萬侶墓誌でした。


これは1979年、奈良市此瀬町の茶畑開墾中に発見されました。
墓から出土した墓誌は短冊形の銅板で、表面には
太安萬侶の居住地(左京四條四坊)、
位階勲等(従四位下勲五等)、
名前、没年月日(癸亥年(=養老7年・723年)七月六日)等
41文字が刻まれていました。


これは、三次元CG画像です。展覧会図録より




これは太安萬侶神坐像[室町時代 多坐彌志理都比古神社蔵]です。
太安万侶ゆかりの多神社本殿の第二殿に祀られ、
『古事記』を編纂した太安万侶の像と伝えています。
大きくはねた眉、二重まぶた、小さなあごひげなどに写実性が感じられます。

墓誌の発見によって、太安萬侶が実在した人物であることが明らかになりました。


これは、墓誌の発見された茶畑にあるお墓にお参りした際、私が撮影したものです。
今はこのように「史跡 太安萬侶の墓」として整備されています。

大古事記展では、国宝の「七支刀」[石上神社蔵]、
本居宣長の「古事記伝」、
古事記の物語の絵画などが多数
展示されていました。

12月14日(日)まで開催されていますので
皆さまも、是非いらしてくださいね!

今日は大古事記展の話題でした。

来週まで、お元気で! 御機嫌よう! さようなら!


英語圏に伝わる育児をテーマにした詩「Today」は、「世界百人村」と同様、電網文芸だ?!!

2014年11月15日 | 民話
今日は、「Today]という素晴らしい詩を紹介しよう!

朝日新聞(2014.11.6.)に次のような記事が載っていた:

英語圏に伝わる育児をテーマにした詩「Today」が、日本の母親の共感を集めている。
「ほんとにいったい一日何をしていたのかな」
「この子のために すごく大切なことをしていたんだ」。
日本語訳された詩は口コミやネットで広がり、絵本も出版された。
きっと、育児で大変なお母さんを元気づける詩です。



(早速、買って読みました! 福音館書店刊)

先ず、原詩は英語だが、日本語訳を載せましょう!

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今 日 (伊藤比呂美 訳)


今日、わたしはお皿を洗わなかった
ベッドはぐちゃぐちゃ
浸(つ)けといたおむつは
だんだんくさくなってきた 

きのうこぼした食べかすが
床の上からわたしを見ている

窓ガラスはよごれすぎてアートみたい
雨が降るまでこのままだと思う

人に見られたらなんていわれるか
ひどいねえとか、だらしないとか
今日一日、何をしていたの? とか 

わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた
わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた
わたしは、この子とかくれんぼした
わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした、それはきゅうっと鳴った
わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった
わたしは、この子に、していいこととわるいことを、教えた 

ほんとにいったい一日何をしていたのかな 

たいしたことはしなかったね、たぶん、それはほんと
でもこう考えれば、いいんじゃない?

今日一日、わたしは
澄んだ目をした、髪のふわふわな、この子のために
すごく大切なことをしていたんだって

そしてもし、そっちのほうがほんとなら、
わたしはちゃーんとやったわけだ


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さらに朝日の記事を引用しよう:


■子育て「これでいいんだ」

 翻訳したのは詩人の伊藤比呂美さん(59)。
大学院で育児について研究していた元雑誌編集者の友人(47)から頼まれたのがきっかけだった。
 友人は10年ほど前、ニュージーランドの子育て支援施設を見学した。
その際、壁に貼っていた古びたA4判の紙が目にとまり、内容にひかれて書き写したという。
伊藤さんは帰国した友人から示された詩を訳した。
日本語版「今日」はネットを通して広まり、全国の母親たちにシェアされるようになった。

 児童図書の福音館書店編集者、中村力さん(39)もネットで「今日」を見つけた。
調べても作者はわからず、よみ人知らずの詩は英語圏各国に広まっていた。
伊藤さんに出版を持ちかけ、2013年2月に発行。これまで1万5千部売れた。
「大人向けの絵本としては好調な売れ行き」という。

 詩は子育てに悩む日本の母親たちの心をつかんだ。
 「一生懸命生きているママをわかってほしい。
世界中のママたちみんな同じ気持ちだよ、ってその詩は訴えていると思います」


以上が新聞記事ですが、
みなさん、覚えていますか? 「世界百人村」を!

これも、最初、英語でネットに流れ、
ある時、誰かが日本語に訳して、
アッと言う間にネットで日本じゅうに広まった。

「世界百人村」の内容の素晴らしさに気づいた池田香代子さんは
再話して、宝島社から絵本にして出版した。
すると、ベストセラーになった。

「今日」という詩も、同じ運命を辿っている。

電網文芸(ネット・フォークロア)→ 書承文芸(絵本)→ 口承文芸(口コミ)

多くの人に読まれ、ますます多くのお母さんたちを励ますことでしょう。

ここで、英語による原詩も挙げておきましょう:

Today

Today I left some dishes dirty,
The bed got made about two-thirty.
The nappies soaked a little longer,
The odour got a little stronger.

The crumbs I spilt the day before
Were staring at me from the floor.
The art streaks on those window panes
Will still be there next time it rains.

“For shame, oh lazy one," you say,
And “just what did you do today?"

I nursed a baby till she slept,
I held a toddler while he wept.
I played a game of hide'n'seek,
I squeezed a toy so it would squeak.

I pushed a swing, sang a song,
I taught a child what's right and wrong.

What did I do this whole day through?

Not much that shows, I guess it's true.
Unless you think that what I've done
Might be important to someone
With bright blue eyes, soft blonde hair.
If that is true, I've done my share.


英詩もいいですね。
声に出して読んでみると、ちゃんと脚韻を踏んでいるし。

それから、絵本もぜひ手に取って見てください。
下田昌克さんの絵と伊藤比呂美さんの詩のコラボもフィットして素敵です。


今日は、ネットで広がった素敵な英詩の話題でした。

では、みんさん、来週まで、お元気で、御機嫌よう!



グリム童話の挿絵画家:朝倉めぐみさんが朝日新聞「ひと」欄で紹介されました!

2014年11月08日 | 民話
皆さま、お元気ですか?

3か月前のブログで
イラストレーターの朝倉めぐみさんが
ドイツ・カッセルのグリム兄弟博物館でイラストの展覧会をされるという
案内を書いたのを覚えていらっしゃるでしょうか?

(まだそのブログを読んでない方はここをクリックしてください。)

なんとその朝倉めぐみさんが朝日新聞の11月4日付の朝刊の「ひと」欄に紹介されていました!

まず、その欄の写真を載せましょう。



朝倉さんは、前回のブログでも書いたように、旅のガイド・シリーズ「地球の歩き方」のシリーズの
「グリム童話を旅する」の巻にも素敵なイラストを描いておられます:


『グリム童話で旅するドイツ・メルヘン街道』(文:沖島博美、絵:朝倉めぐみ)

では、「ひと」欄の記事も載せましょう:

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人工透析を受けながらグリム童話を描く 朝倉めぐみさん(53)


白雪姫や赤ずきんなど世界の人々を魅了し続けるグリム童話。
その世界観を繊細なタッチで描いたイラスト展が今夏、
ドイツ・カッセルのグリム兄弟博物館で開かれた。
「浮世絵のような味わい」と好評で、
童話ゆかりのメルヘン街道でも展示が検討されている。

「バタくさい」と自嘲する作風は、幼い頃にはまった少女漫画が原点。
東京の美大を卒業後、出版社に就職した。
描く喜びを忘れられず、英国で修行を重ねて30歳でプロのイラストレーターに。
「ブリジット・ジョーンズの日記」の挿絵など、ファッション雑誌から
絵本まで幅広く活躍する。

グリム童話と向き合ったのは、2年前。出版200年を迎えた
グリム兄弟とメルヘン街道を紹介する本の挿絵を手がけた。
羽田空港で展示された絵が、日本好きの博物館長の目にとまり、
ドイツでの展覧会が決まった。

幼い頃から腎臓を患い、40代から人工透析を受ける。
体調不良や食事制限の苦労はあるが、海外でのスケッチ旅行だけはやめない。
「自分の目で見たものでないと、満足いく作品は描けない」

旅の準備は、まず週3回の透析が受けられる病院の手配から。
金物作家の夫、中里研さん(51)が支える。
「人工透析をしていても、やりたいことを諦めたくない。
カメラマンのような絵描きになれたらいいな」

            (文・写真 玉川透)

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以上が記事ですが、


「日本好きの博物館長」とは、
グリミン(グリムと民間伝承研究会)でも、おなじみのベルンハルト・ラウアーさんです。
ラウアーさんとは、一緒にグリム・シンポジウム(東洋大学)もしましたよ。

「グリム兄弟とメルヘン街道を紹介する本」とは
もちろん、上に載せた写真の本『グリム童話で旅するドイツ・メルヘン街道』のことです。

挿絵は、朝倉さんですが、本文の著者は、沖島博美さんで
もちろん、沖島さんはグリミンのメンバーです。

私も初めて、朝日の記事を読んで知ったのですが、
朝倉さんは、人工透析を続けながら、旅をし、作品を制作されていたのですね。
その情熱、その苦労の中から、あのようなすてきなイラストも生まれたのですね!

これからも、お元気で絵を描きつづけてください。

その生き方が、わたしたちを勇気づけてくれます!


今日のブログは、朝日「ひと」欄の話題でした。


では、皆さま、来週までお元気で!御機嫌よう、さようなら!




第66回正倉院展:「天平美人」と「ペルシアのグラス」に会ってきました!

2014年11月01日 | 日記
奈良に住んでいる強み、
それは毎年、「正倉院展」が見れることです。

今年は、 「天皇皇后両陛下傘寿記念」ということで
代表的な宝物が選ばれ、展示されていました。


子どももお年寄りも見に来ていましたよ。

「鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)」の前では長蛇の列でした。


奈良朝の華麗な宮廷生活を偲ばせる屏風絵   (当日買った絵葉書より)
ふくよかな顔、おちょぼ口、濃い眉毛で樹下にたたずむ「天平美人」
4扇の屏風絵、十分堪能しました。


「衲御礼履(のうのごらいり)」   (当日買った絵葉書より)
これは聖武天皇が大仏開眼会で履かれた儀式用の靴です。
表面には赤く染めた牛革が、内面には鹿革の白革がそれぞれ用いられている。
表面には各13箇の花形の飾りを取り付け、装飾を加えている。
なかなか見事なものです。

4年前の正倉院展では、光明皇后自身が着用した「繍線鞋(ぬいのせんがい)」が出陳されていたのを
思い出しました。
下記のサイトを参照ください。
なんとシンデレラの靴が正倉院展にあった?!

ほかにも、「伎楽面 崑崙(こんろん)」、「桑木阮咸(くわのきのげんかん)」、「密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)」など
必見に値する宝物がありましたが、
最後にはやはりこれを紹介しましょう!


「白瑠璃瓶(はくるりのへい)」    (当日買った絵葉書より)
はるかペルシアからシルクロードを経て奈良にもたらされたグラス!
本品と近似したガラス製の水さしがイランのニシャプール等で発見されているそうです。


毎年、違う出品物。
毎年、楽しみな正倉院展です。

今年はいつもより長く、11月12日(水)まで奈良国立博物館で開催中です。

ぜひ、ぜひ、お時間をつくって、いらしてください。


今日のブログも、展覧会の話題でした。

少し肌寒くなってきました。

皆さま、来週までお元気で! 御機嫌よう、さようなら!