国際口承文芸学会 (ISFNR) の第16回大会が
2013年6月25日~30日にビリニュス市(リトアニア共和国)で開催されました。
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リトアニアの首都:ヴィルニスの旧市街の遠景
主催者はビリニュス大学のリトアニア民間文芸研究所で、
総合テーマ「現代社会における口承文芸、その統一性と多様性」のもと
世界から研究者が集まり、250名を超える研究発表がありました。
大会案内サイトをご覧ください。
学会の公式言語は、従来、英語、仏語、独語、露語でしたが、
今大会からは英語オンリーになりました。
そこで、英語のにがてな私は、ゲール語圏の民話研究者の岩瀬ひさみさんとの共同発表だったので、
その責務を果たすことができました。
発表題は、以下の通りです:
How can we hand down the traditional folktales of the area to the future generations?
Examples: Nara Folktale Festival and the Nara Folktales walking Map.
Takeshige Takehara (Ikoma/Japan)
Hisami Iwase (Fukuoka/Japan)
(日本語題)
私たちはどのようにして故郷の伝統的な民話を次世代に語り継ぐつぐことができるか。
その事例:奈良民話祭りと奈良民話地図
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左:岩瀬さん、右:竹原 スクリーンには奈良民話祭りの写真がでています。
発表の要旨を下記に日本語で載せます:
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私たちは長年奈良県下でお年寄りから民話を聴き、それを報告書にまとめてきました。
昔は家庭において民話が語り継がれてきましたが、今日ではほとんどの家庭が核家族になり、
そのような故郷の民話が途絶えつつあります。
そこで、日本の奈良において三つのプロジェクトを立ち上げました。
その一つ目は、「奈良民話祭り」の開催です。
私がフィールド・ワークで集めた民話を再話して、子どもたちにも良く理解できるようにしました。
そして語り手講座を開き、学生やお年寄を現代の語り手としてとして養成しました。
その後3年前から毎年夏に「奈良民話祭り」を開催してきました。この祭りは少しずつ市民に知られるようになってきました。
その二つ目は、「NHKお話ステージinなら燈花会」です。
地元の放送局のアナウンサーによる民話の朗読劇です。
その三つめは、私が集めた民話を基にして、「奈良民話地図」の刊行です。
地図の表には奈良の伝説で語られているスポットを明示し、民話地図の裏には民話テキストを掲載しました。
この地図を持って、奈良町のお話のスポットに出かけ、テキストを声を出して読めば、
お話の内容が実地に良く理解できるようになっています。
これは、「地域の伝統文化」を知ることのできる教材にもなります。
また、日本語版だけでなく、英語、ドイツ語、中国語版、韓国語版も作成しましたので、
学校の生徒だけでなく、外国人観光客にも役立っています。
この事例を紹介し、民話を未来に語り継ぐ意義について考察しました。
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日本からも10名余りの研究者が参加しました。
その発表題の一端を挙げましょう:
Grimms' Fairy Tales in Modern Japan
Fumiko Mamiya (Tokyo, Japan)
Stories for Calling Soul: Roots of the Strangers Appearing in Japanese Folk Narratives Related to Tsunami
Yusuke Uno (Ibaraki-City, Japan)
Transformation from Individual Art to National Art in Ainu and Nivkh
Itsuji Tangiku, Chika Shinohara (Sapporo, Japan)
The Social Significance of Narrative and the Current State of Folktales in Modern Japan
Miho Saito (Tokyo, Japan)
Syllable Number Orientation and Accent Orientation in Ainu Epic Versification
Osami Okuda (Ebetsu, Japan)
The Japanese Version of ATU 410 (Nemureru Mori no Bijo)
Makoto Yokomichi (Kyoto, Japan)
Influences of Victorian Values in Japanese Grimm's Fairy Tales Used by English Translations
Yoshiko Noguchi (Osaka, Japan)
最終日の夕には、コングレス・ディナーが、ヴィルニスのシティー・ホールで華やかに開催されました。
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右手は、挨拶する学会会長のマールツォルフ(ドイツ・ゲッティンゲン大学教授)
次回大会は、アメリカのマイアミで3年後に開催されます。
今後のブログでは、大会後に訪れたデンマークの旅も含めて、さらに詳しく報告するつもりです。