えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・ヤフオク体験

2020年05月09日 | コラム
 邦訳はあるものの全訳はなく、各章の断簡がばらばらに別の著者から訳出された上に書籍の性格から復刊や文庫化も期待できない本をインターネットで探していた。原書は古本市場で見つけたが語学と値段の壁で手が出ない。調べているうちに知っている本以外の訳書が出ていることを知ったので古本屋サイトに目を通すと一万六千円。出せない額ではないが既に他の支払いで遣ったので気軽には出せない。Amazonにでも古書が出ていないかと淡い期待をかけてもう一度検索したところ、ヤフーオークションの出品にその本を見つけた。
 競争相手の見えないオークションという緊張感がどうしても性に合わずに避けていたが、相場の半額の値段に惹かれてサイトを開いた。誰も入札していない上に検索したその日がその本の最終出品日だったこともあり、焦りにまかせて入札した。こうした買い物は大概よろしい結果に終わらないので避けた方が良い。めったに見つからない古書を探している当日に終了するオークションで半値の出品を見つけた偶然のせいにするのも限度がある。
 幸いというべきか案の定というべきか、高額の書籍、それもろくに知られていないジャンルの書籍のセリ落としに参入するもの好きはおらず、本はしばらくすると自動的に入札が〆られて落札できた。支払い後に商品の到着を確認しないと出品者に入金されない仕組みに戸惑ったが、そういえばこのシステムが出始めた当初はお金だけをいただいて商品を送らないという詐欺が横行していた気がする。未到着の場合はオークションサイトがそれなりに面倒を見てくれるらしいので泣き寝入りも減ったのかもしれない。システムはどうでもいい。本が届けばそれでいい。
 競り合いにならず出品者の提示した金額で落札できたのは幸いだったものの、入札が〆切られるまでは緊張でものが手につかなかった。つけっぱなしのテレビから流れる「名車再生!」のマイクの口上もろくに耳には入らず(吹き替えを続けてくれることはありがたい)、メールの文章はめちゃくちゃで、画面の右端の時計の時刻が入札締め切りを過ぎるまで何度も見返す羽目となった。本来の相場を知っている人間が来たらえらいことになる、と腸を握りしめられるような痛みに襲われながらも待つしかない。時刻が来た。セリ落とした。ほっとした。緊張を通り過ぎて二度とやるまいとこみあげる吐き気をこらえた。
 そうした矢先にいつも利用している別の通販サイトが、在庫一掃セールでそれまで掲示していた定価から比較すると破格の値段がつけられている出品を発見してしまうのは、往々にして良くあることだ。こちらにはしっかり競争者がおり、サイトを確認しては腸を撫でおろしながら、ろくに他のことは手の付けられないGW後半を無為に過ごしている。単純に射幸心の煽り方だけを捉えれば、細かく小銭を投入するゲームセンターのクレーンゲームとは差がないかもしれない。

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