えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・タイミングと電気代

2017年07月22日 | コラム
 夜に窓を開けていても蒸し暑いと天気予報の終わりに言われるとおり、窓を開けていても風向きの関係で温度自体は冷房の設定温度と同じなはずだが吹き込む空気は肌よりも生暖かい。天然に沸いている温泉の極端に冷たくも熱くもない水へ手を入れたようなもどかしい温度だ。雨もないのにしけりそうな気配も夜風に乗って忍び寄る。だが眠ると体温の輻射か何かでほどよく熱中症になれるほど布団がぬくもるので、定期的に体を冷やす何かは欲しい。
 冷房を見上げるがよく考えなくても相当の時間、動いてもらわなければならない。ざっくりと考えて九月、下手をすれば十月までお世話になるかもしれないと考えると電気代の請求書が徐々に恐ろしくなる。そこそこ新しいエアコンならばタイマー機能、おやすみ機能と題して熟睡に入った辺りで電源を落とす機能がついているので試した。電源が落ちて一時間後辺りで暑さと喉の渇きできっかり目が覚めた。出かけるにはかなり時間があるが眠るには中途半端な時間で、寝付いた時間から逆算すると寝不足だ。空調は黙っている。
 テレビをつけると空調ではなく寝具の側から冷えをアピールする枕や布団のコマーシャルが何度も映る。眼鏡の男がやすらかに眠っている姿を見るとどことなく使えそうな気もするが、冬になると窓を閉めていても布団から出られなくなるほど冷える宅とマットレスの置き場という現実は振り返らなくても予想がつく。ウォーターベッドで寝る感覚に近いのだろうか。凍りそうだ。
 ということを冷房の効いた部屋の中で考えながら、外に出る気をなくして夕暮れを迎えている。
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温泉宿まで

2017年07月08日 | コラム
車でどこかに行くときはたいがいボックスカーの最も狭い席に荷物といっしょに放り込まれ
やむなく体を縮めて席に横たわっている。荒い運転やでこぼこの道では体全体が突き上げられるように浮いて
坂道では床と席の間に挟まるように落下する。そのまま耐え続けるのも限界があるので眠ろうとすると
今度は前の席からやれ気楽だ、やれ苦労がない、やれにくたらしいと罵声が聞こえてくる。
そういう旅行だった。

運転の荒さに気づくと運転手が代わっていたり、荷物が体を埋める勢いで置かれていたりと扱いは
むしろ壊れにくい分荷物よりも下だがただただ耐え忍ぶ。まだ道半ばで雨男がこんなご時世にもかかわらず
さっそうと雨乞いを始めている(無論冗談だと信じたい)が、幸い行く先の空は青かった。
舌打ちが聞こえた気がしたがシートへ縮こまってクッションを引き寄せて眠ろうとした。「また寝てやがる」と
今度ははっきりと聞こえた。だったらここへ入って寝ればよいだろうと席の入れ替えを提案すると断られる。
前日の疲れもあり、高速道路の丁寧な舗装と穏やかな揺れに身を任せて眠ってしまった。

休憩と寄り道を交えて五時間ほどだろうか、車が「オーライ、オーライ」の声と共に止まった。
本格的に寝入っていたので道中の過程のところどころが記憶になく、不自然に曲げた足が痛い。
それもここまでだと思うと気が楽になる門構えの旅館が待っている。
ビジネスホテルではない泊まることを楽しむための宿屋の平日は閑散としており、こちらにとっては
心穏やかに過ごせそうで気分もよいが客足を気にするほうはそれなりに気になる人の少なさだ。
ともあれ荷物を下ろした後、最後の荷物として車から降ろされる。左の膝がみしりと音を立てたが
きっと温泉がどうにかしてくれるだろうと楽観的に降りて部屋へいそいそと通してもらい、
温泉で足をゆっくりと伸ばした。総計すると車で寝ている時間のほうが多いことに気づいたのは
帰宅して体重計に乗ってからのことで、この時の自分は惰眠と温泉に文字通りのぼせている次第だった。
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