えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・シリーズによくあること

2023年08月26日 | コラム
 一度はプレイしてみたいと思いながら諸般の事情で叶わなかった『ベヨネッタ』に昨年待望のシリーズ三作目が発売されたが、ゲーム好きな知人との雑談でも一向に話題に登らないのを疑問に思って動画やブログなどをざっと眺めた。見覚えのある景色が広がっていた。検索のサジェストから批判的な単語が並ぶところを見ると発売当時はそこそこ騒ぎだったのかもしれないが、元がゲーム好きでゲームに時間を割けることを厭わない人向けのゲームなので情報に疎い自分がリアルタイムで騒ぎを眺められるほどの火の手は上がらなかったようだ。丁度その頃は『俺の屍を越えてゆけ』で手一杯だったこともあるものの。

 大別するとシステム面とシナリオ面への意見を見る。三対七くらいの割合でシナリオ面に言及する人が多い印象を受けた。身も蓋もなく書くと「シリーズ物の主人公の交代」を匂わせる終わり方に向かうための筋書きに違和感を覚えた人が多かった模様だ。交代を目的として筋書きが作られた結果、詰め込みや急展開などシリーズをきっちり読み込んでいる人ほど損を感じやすくなる仕上がりになってしまったと見受けられる。システムの方は、それまではコンボやゲージを意識した細やかな立ち回りを習熟して楽しむというコンセプトから、立ち回りはあまり考えずに大技を連発して速攻を意識するという大幅な変更が行われており、ざっと見ただけでも好みは分かれるだろう。

 どんなコンテンツでもシリーズ物であれば少なからず「主人公の交代」や「ゲームシステムの変更」という問題には立ち向かわざるを得ない上、一概に大きな変更がシリーズにとって悪い影響だけを及ぼすということはない。ただ『ベヨネッタ』を眺めている限りでは、もう少し既存作のプレイヤーの感情へ寄せた作りであっても良かったように思える。どんなにゲーム部分のみが優れていても、それを包むガワに少しでも染みやシワがあればプレイヤーは目敏くそれに気づき、見過ごせないほどの傷であればゲームプレイを辞めてしまう。実体験としては『真・三國無双5』や『戦国無双シリーズ』で味わった事象を、毎年なにかのゲームで味合わされているのは少し寂しいものを覚えた。
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・台風を毎日

2023年08月12日 | コラム
 行きたいイベントに申し込み、お盆の真っ只中に新幹線を予約した。台風七号が発生する。進路を毎日確認しながら友人や知人に不安を送ったのは今思わなくても申し訳ない行動で、挙句の果てには知人から「行かない後悔より行く後悔、最悪帰れなくなったら拾いにいきますよ」と気楽ながらも骨の入った返信までいただいた。どうしても行きたかったのはイベントの内容もあるが、登壇者の方と直接お会いしたいという理由があった。今の御時世誰かと直接会うことはナンセンスだ。それでも体のある人間である限り、体と体が近くに存在する距離で対話し相手の質量を感じながら話すのはモニターを通すよりも圧倒的に情報を得ることができる。モニターを通せば隠すことの出来たこともばれてしまうが、それはお互い様で、モニターから得られる以上の情報が肉体には存在する。それはたとえば全身のコーディネートであったり、些細な特徴であったり、声色の微妙であったり、雰囲気であったり、いちがいに言語化し辛いものばかりだが、相手の人間を動物的に理解するにはなくてはならないことばかりだ。台風の進路を毎日携帯電話で確認する。扇が広がるように進路は日を追うごとに西へずれ、速度は遅くなり、ちょうどその日は台風の目になった。私は切符を握りしめて眠れない夜から無理やり起床し、駅へ向かって深夜に駅に帰った。台風はまだ海の南の方でじっとしていたが、外国人観光客を含めた上りの列車ははち切れそうなほどぱんぱんに膨らんでいた。
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