えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

<遊び心のプログラム>はじめての『ドラゴンクエスト』

2017年08月26日 | コラム
周回遅れで『ドラゴンクエストXI』とニンテンドウ2DS LLを購入した。知人の薦めに負けた形でもどかしいが、
個人的には完全に初見で、なおかつ新作としてプレイする『ドラゴンクエスト』のはじめてのシリーズとなるので
丁度良い機会だったのかもしれない。
過去作は『ドラゴンクエストⅧ』、『ドラゴンクエストⅡ』をプレイしたことがあるものの、どちらも事前情報を
ある程度得たうえでプレイしたため、事前情報のないまっさらの状態でプレイするのは本作が「はじめて」となる。

ゲーム内のインタフェースの基本形を最初の作品からほぼ変更せず、30周年という長い時を同じメンバーで続けていること
自体が、ゲームという遊びの仕組みというよりも、漫画家の新作を見守るような気にさせる。
喧伝されていたように本作には過去作のオマージュ演出が数多く含まれており、なおかつおまけ要素として過去の作品の
一部のステージをほぼ過去の見かけのまま再現したモードで遊ぶことができる。それでいて、シナリオの中核に「過去」が
大きくかかわってくるため、まったくシリーズを知らないプレイヤーでも副題を違和感なく受け入れられるのは
話づくりの巧みだろう。

本作で取り入れられたシステム「しばりプレイモード」も面白い。
もともとプレイヤー側で任意に行っていた遊びをあえて本編に取り入れ、システム上から制限をかけるので
誰でも簡単に制限プレイという遊びに挑戦することができる。
途中で挑戦をあきらめることも可能だが、さすがにいったん諦めたデータでの再挑戦はできない。
プレイヤーは四つの制限を任意に選び(当然ながら「選ばない」という選択肢が標準だ)、ゲーム内の要素を狭めた遊びに
挑戦することができる。
制限をかけるということはゲーム内に元々用意されていた遊びの要素を減らすことでもあり、当然ながら
ゲームとしての難度も上がる。面白いことに、「難度の上がった状態」でもきちんとクリアまで導いてくれる要素が
用意されているので、全部の制限をかけてスタートしても極端な詰みに陥ることはよほどの行為をしなければ起こらない。
実際にプレイしたところ、思った以上にあっさり進んで驚いたものの先へ進めば進むほどきっちり苦戦するので
詰め将棋を遊んでいる気になるのは私感だ。

クリアにはまだまだまだ道半ばなものの、すれ違った相手の中の、全部の制限をかけてクリアした人のデータを励みに
のんびりとはまっている。ただ、初見ですべて制限をかけるのは「遊び」の部分を著しく阻害するのでお勧めしない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雨下曇天

2017年08月12日 | コラム
雨が降っていた。土砂降りは衰えて雨が続いた道路は黒く、街灯が暗く公園のケヤキの枝ぶりを際立たせている。
玄関の鍵をかける音も雨に流れて、傘立てに刺さっていたビニール傘を引き抜いて黒いボタンを押す。
傘は大きく広がり透明なビニールが雨を透かして、次から次に粒の貼りつくさまが街灯を透かして明らかだ。
時刻はあと三十分で明日になる。傘を閉じようかと手を伸ばして雨を手に受けた。雨粒がまとわりついてじみじみと
手が湿った。手を引っ込めて傘の握りを掴み、サンダルの歩を道路へ置く。

交差点には車が雨を跳ね飛ばし、勢いをつけて行きかう。車高の低い黒い車の前を青信号になる直前の赤信号を見上げながら
横断した。車は横断歩道の二十メートル前から減速し、車用の信号機が赤になったところで停車線丁度にバンパーが止まり、
私は道路を渡り終えた。

何年前かは思い出せないが五年以上更地のままの元公団脇を、黒いフェンスに沿って歩いた。前から白いブラウスとスカートの、
胸元にリボンを付けた長髪の女が来た。休日手前の飲み会か仕事帰りだろうか。すれ違ったような気がした。
ぽつぽつと閉まったシャッターの上で消し忘れの看板が茫洋と光っている。近頃はファミリーレストランも二十四時間の無理を
やめて、客を外へ送り出すようになった。電車は終電に近づきながらも客を家に帰すための下り電車だけは静脈のように
動き続けている。下り坂の奥から風切り音のように車両が唸って遠ざかって行った。

空いていたファミリーレストランに滑り込むと鉄板の焦げる音やピザと鉄板を機械的に運ぶウェイターが行きかっていた。
客が減ると店の奥でやさぐれた金属のかちあう音が店内の客を「早く帰れ」と急かす。誰が選んだわけでもないジャズめいた
英語のポップスの悠長な調子を掻き消して雨が騒ぐ。黒い握りをテーブルの角にひっかけて、傘に従い流れるはずの水を
みようとした。細かくポリエチレンに張り付いた水滴は容易に流れ落ちないようで、傘の先端は一円玉ほどの水たまりしか
出来ていなかった。客は途切れない。

時計から目をそらし、時計に目をやると進んでいる。人は動いている。笑い声も交じる。店員を呼ぶためのチャイムが
定期的になる。それぞれは紛らわしく孤立して、孤立同士が塊に膨れあがり曇りガラスの仕切りの向かいで影が席へ私の
身体を押し込むように傾いた。疲れのない二人がしゃべっている。ようやく一時間が過ぎたところで席を立つ。
夜に入るには明るすぎたのかもしれない。一挙一動のけだるい店員を会計に呼び出して、私は雨の中へ戻った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする