犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>統計的手法で基本高水を決める(5)

2014年12月28日 | 辰巳ダム裁判
(「引き伸ばし手法」と「平均値を取ること」はセット)

 裁判では、基準にあっているかどうかを審査される、だから、基準そのものの矛盾あるいは間違いについて審査されることはない。基準そのものについては、司法で判断するべきことでないと考えるのが普通であろう。

 ところが、裁判で基準が正しいという前提で議論を進めていると、基準に矛盾があると、議論も合理的な結論にたどりつかない。よくわからない議論になる。

 基準の基本高水決定の手法の項で、洪水の計画規模が1/100のはずが、結論は洪水の超過確率が1/400になったりする。その原因は、洪水そのものが求めたい対象であるが、これを直接に求めず降雨というものを介在させてこの降雨の引き伸ばしという方法をとっているためである。2日雨量で固定して引き伸ばしをすれば、時間的な濃淡があるので短時間雨量は上下に大きく変動する。この変動した短時間雨量の大きさでピーク流量が決まると洪水が1/400になったりする。

 辰巳ダム計画では、2日雨量で固定して引き伸ばしたピーク流量群の最大値を選択しているが、2日雨量に引き伸ばしたピーク流量群の平均値を取れば、短時間雨量の大きさを反映したピーク流量も大小がならされて、2日雨量の超過確率と同程度の超過確率を持ったピーク流量が選択されることになるのは容易に想像できる。

 ピーク流量群の最大値をとるのではなく、平均値をとる意味は、辰巳ダム裁判の証人でもある佐合氏がつぎのように述べる。
「水文量では『真値』は不明であるため、特に指定しない限り『真値』は多数のデータから算定した平均値で代用されることが多い。質の良いデータが多数集まれば、その平均値は『真値』に近づく。」(水文・水資源学会誌第21巻第5号,佐合純造『水文量の不確定性の総合評価とその活用策』p.354)

 ということで真値を求めるために、引き伸ばし手法と平均値をとることはセットということになろう。

 ところが、基準では、引き伸ばした後、時間的、地域的な分布に不合理が生じて、「対象降雨として採用することが不適当である」(基準p.32)として棄却基準を設定してこれを超えるものは棄却するべしとしている。2日雨量を固定して2倍にも引き伸ばせば、時間的、地域的な分布が上下に振れて合理的に見えない降雨も現れるのは不思議ではない。これをいきなり、対象降雨に採用できないのは当たり前である。であるから、平均値を取るというような方法が不可欠と考えられる。
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