犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム裁判>統計的手法で基本高水を決める(4)

2014年12月27日 | 辰巳ダム裁判
 21日のブログでつぎのように書いた。

「洪水のピーク流量に支配的な継続時間内での降雨強度の超過確率が、計画規模の超過確率に対して著しく差違があるような場合には対象降雨として採用することが不適当である」(新基準解説p.32)ではなくて、「洪水のピーク流量に支配的な継続時間内での降雨強度の超過確率が、計画規模の超過確率と同じものを対象降雨として採用する」ことにしなければならないはずである。

 わかりにくいという指摘を受けた。
 辰巳ダム計画で具体的に述べると、対象降雨2日雨量の超過確率が1/100で、引き伸ばし後の2日雨量の超過確率が同じ1/100であるが、ピーク流量に支配的な継続時間3時間雨量の超過確率も1/100でないと辻褄があわないはずである。辰巳ダム計画では、3時間雨量の超過確率が1/300~1/400の範囲にあり、この降雨がピーク流量を支配するので洪水の超過確率もこの降雨に対応した規模となっている。当然、1/100の規模を大きく下回っている。

 ところが、この洪水の規模は1/100の扱いとなっている。
 その論理は、ピーク流量を支配する短時間雨量(犀川大橋地点の3時間雨量)が1/300~1/400であろうと、対象降雨(2日雨量)は1/100であり、この対象降雨が発生すると、この短時間雨量の降雨が発生する可能性があり、この短時間雨量が起因して起こる洪水の超過確率は1/100と扱うことができるというものである。

 しかし、基準の内容を確認すると矛盾がある。
 基準の基本高水決定の手法の項(p.28)で、
「基本高水は、そのハイドログラフで代表される規模の洪水の起こりやすさ、つまり生起確率によって評価され、それがこの洪水防御計画の目標としている安全の度合い、すなわち治水安全度を表すこととなる。」とある。具体的にいうと、洪水の超過確率が1/100であれば、おおむね100年に1回の洪水にも安全ということである。
 ところが、洪水のハイドログラフの生起確率の計算の取り扱いが便利ではないので、
「洪水の起因となる降雨に着目して、所定の治水安全度に対応する超過確率の対象降雨を選定し、この対象降雨から一定の手法でハイドログラフを設定する方法を標準としたもの」(p.28)である。

 辰巳ダム計画では、対象降雨は、2日雨量で1/100の降雨を設定。実績降雨から引き伸ばして1/100の対象降雨群を作成する。ピーク流量を支配する短時間雨量は1/100を大幅に下回ったり、上回ったりする。基準のスタート時点の治水安全度という考え方からすると、ピーク流量の超過確率が1/100にならなければならないはずである。だが、そうはならない。

 算定されたピーク流量群は、短時間雨量の超過確率に対応してばらついているが、これらは、すべて対象降雨の超過確率1/100でひとくくりにされる。そのため、スタート時点の治水安全度とは異なった超過確率の洪水が選択されることになる。
コメント
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