犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>カバー率のつづき5

2013年04月22日 | ダム問題
 引き伸ばし手法について、降雨の3要素のうちの降雨量の意味はわかりやすい。引き伸ばした降雨は目標の規模の降雨量そのものである。しかし、降雨の3要素のうちの時間分布及び地域分布は同じ引き伸ばした結果が目標の規模の降雨かどうか、前記したように科学的に説明できない。ということで、引き伸ばした降雨から求めた降雨ピーク流量群が、確率的に解析するべき正当なデータの集団であるのかどうかわからない。

 棄却した後のピーク流量群の方が、引き伸ばし手法による計算過程の(本当に目標とする規模の降雨に対応しているのかどうかわからないピーク流量を排除しているという意味の)適正化を図っている面もあるので、統計解析するべきピーク流量群としてより適切ではないかと考える。

 いずれにしても、基本高水ピーク流量を決めるための手法として、引き伸ばし手法を採用することになっているので、これを適切に行うためには、厳密な棄却基準が肝要である。
犀川の例では、石川県は棄却基準を緩めて400年確率を超える降雨をもとに、基本高水ピーク流量1741を決めている。棄却基準を厳密にすると、1741は棄却されて、そのつぎのピーク流量は1312となり、これが「新基準」により、厳密に決めた基本高水ピーク流量となる。

 これは、カバー率50%値(中央値)938の約1.4倍となる。石川県が想定した基本高水ピーク流量1741は、約1.9倍である。
 
 ちなみに、棄却しない場合のピーク流量群のカバー率50%値(中央値)1043に対しては、約1.3倍である。石川県が想定した基本高水ピーク流量1741は、約1.7倍である。

 新基準を厳密に適用して求めた結果は、棄却するしないにかかわらず、ピーク流量群のカバー率50%値(中央値)の1.3~1.4倍程度ということになる。犀川の例についていえば、既往最大洪水に比較して十分すぎるほど大きい結果となっている。

 また、このピーク流量1312は、約1/600、600年確率流量となる。「新基準」では、「洪水防御計画においては、基本高水のピーク流量の年超過確率が重要な意味を持つので、年超過確率において両者の間に著しい差違を生ずるおそれがある場合には、これらの関係を明確にし、他の手法によって計画規模を定めることを検討する必要がある。」(p.30)としているが、「新基準」の決め方に従うとこれくらいの差違が生ずると考えられる。

 犀川では、既存2治水ダムのダム調節を考慮して、想定洪水1600まで対応できることになっている。
上記の1312に浅野川放水路からの250を加え、1562となる。
1312+250=1562 < 1600
 であるので、新規のダム(辰巳ダム)は必要ない。

 また、既往最大規模洪水900について考えると、浅野川放水路からの250を加えると1150である。
 犀川大橋基準点の川の流下能力は1230である。
900+250=1150 < 1230
この場合は、既存2治水ダム(犀川ダム、内川ダム)も不要である。
(おわり)
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