犀川の河川整備を考える会

犀川の辰巳ダム建設を契機に河川整備を考え、公共土木事業のあり方について問題提起をするブログ。

辰巳ダム>カバー率のつづき2

2013年04月19日 | ダム問題
 ハイドログラフ群(ピーク流量が33個)は、547~2729立方メートル毎秒であり、カバー率50%値(中央値)は1043、算術平均値は、1138である。
 ハイドログラフ群(ピーク流量が24個)は、547~1741立方メートル毎秒であり、カバー率50%値(中央値)は938、算術平均値は、959である。
 カバー率50%値(中央値)あるいは算術平均値に大きな差があるは、最小値は547と同じでありながら、最大値が2729と1741と大きく違うためである。

 棄却されていないハイドログラフ群(ピーク流量が33個)を大きいものから第5位までならべるとつぎのようになる。最大値は2729となり、それぞれは順に、順位、生起年月日、引き伸ばし倍率、犀川大橋地点のピーク流量、降雨の原因を表している。
第1位 S.36.9.15 1.853 2,729 第二室戸台風
第2位 H.10.9.21 1.730 2,195 台風7号
第3位 S.47.9.16 1.591 1,852 台風20号
第4位 S.49.7.9  2.054  1,743 梅雨前線
第5位 H.7.8.30  2.005 1,741 低気圧(辰巳ダム計画の基本高水ピーク流量)

 様々の大きさのピーク流量があるが、評価の目安として、既往の最大規模(20世紀100年間)の大きさを示すと、犀川大橋地点でおおよそ900立方メートル毎秒である。棄却したハイドログラフ群の中央値に近い。これと比較して、それぞれの群の最大値は著しく大きい。

 これらのピーク流量は、2日雨量314ミリメートルに対応するものである。2日雨量は、300ミリメートルに近い実績もあり、あまり違和感がないが、ピーク流量は、実績流量に比較してあまりにも大きく、感覚的には非常識な値となっている。

 この原因は、降雨の引き伸ばしという操作である。
 犀川の例では、第1位から第3位までは、台風が原因の降雨である。台風の特徴として、短時間の降雨が著しく大きい。約2倍に引き伸ばした結果、短時間の降雨が異常に大きくなり、これを反映させた洪水流出モデル算定結果であるピーク流量が著しく大きくなったものである。

 具体的にもっと分かりやすい例をあげれば、1時間10ミリメートルが3時間続いた30ミリメートルの雨があったとする。これを2日雨量314ミリメートルまで約10倍に引き伸ばしすると1時間100ミリメートルが3時間続いた雨となる。この条件で簡単な洪水流出計算をすると4000立方メートル毎秒ほどになる。これも100年確率の2日雨量314ミリメートルに対応するピーク流量である。
 
 そもそも、このような馬鹿げたピーク流量が算定される、降雨の引き伸ばし操作がなぜ必要なのだろうか。
基本高水ピーク流量を決めるために、実績のピーク流量データを用いるのではなくて、実績の降雨データから、目標とする生起確率の降雨を求め、その降雨を用いて洪水流出モデルで目標とする生起確率のピーク流量を求める方法をとっていることに起因している。
「基準」p.28で説明がある。
(つづく)

「河川砂防技術基準同解説・計画編」p.28
2.2 基本高水決定の手法
基本高水を設定する方法としては、種々の手法があるが、一般には対象降雨を選定し、これにより求めることを標準とするものとする。基本高水は、計画基準点ごとにこれを定めるものとする。
解説
基本高水は、そのハイドログラフで代表される規模の洪水の起こりやすさ、つまり生起確率によって評価され、それがこの洪水防御計画の目標としている安全の度合い、すなわち治水安全度を表すこととなる。
しかし、洪水のハイドログラフそれ自体は、その生起確率の計算等の対象として必ずしも便利ではなく、そのピーク流量又は総ボリュームに着目して統計解析するには、多くの場合計算が複雑になったり、資料不足のため十分な精度が得られないなどの難点がある。
したがって、その取り扱いが簡単であって一般の人々にとって理解しやすいことから、その洪水の起因となる降雨に着目して、所定の治水安全度に対応する超過確率を持つ対象降雨を選定し、この対象降雨から一定の手法でハイドログラフを設定する方法を標準としたものであるが、これ以外でよりその河川に適合した方法を採用することもある。
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