国は、近年、全国的に豪雨の発生頻度が多くなり、石川県でもその傾向が強くなる中、これらの自然現象を理由に、過大とも言える想定降雨と想定洪水にもとづいた辰巳ダム計画を正当化するための根拠としたいようである。合理的な主張なのだろうか。
年間の降雨量が多くなったとしても、日あるいは時間あたりの降雨が大きくなければ、犀川という河川の洪水ピーク流量が大きくならない。また、ゲリラ豪雨といわれる都市型集中豪雨で時間あたりの降雨が大きくなり、都市の一部で道路が冠水するなどの被害が発生することがあっても、犀川という大きな流域を持つ河川の洪水ピーク流量が必ずしも大きくなるとは限らない。
犀川の洪水ピーク流量に近年の集中豪雨がどの程度影響しているか
「全国の短時間豪雨の状況について」、「石川県の短時間豪雨の状況について」などの資料から、最近10年間(H10~H19)と20年前(S51~S62)と比較して、大雨が増えていると説明している。時間50mmの大雨の頻度は全国では、約1.5倍になり、石川県では、約4倍にも増加していると説明する。
石川県の1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数の推移は、以下のようであり、S51~S62の年平均0.7回から、H10~H19の年平均3.0回に増加している。
S51~S62 年平均0.7回
S63~H9 年平均0.8回
H10~H19 年平均3.0回
降雨頻度の増加が実際に犀川の洪水ピーク流量値に反映しているかどうかを「犀川下菊橋測水所流況表」で調べてみた。「下菊橋測水所流況表(年最大値のみ)」(f2-)の各期間の200m3/秒を超えるピーク流量は、以下のとおりである。
S53~S62 250m3/秒
S63~H9 220,242,302m3/秒
H10~H19 270,295,352,364m3/秒
(注:S51,52の流量データはない。)
1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数をS51~S62とS63~H9で比較すると、ほとんど変わらないが、200m3/秒を超えるピーク流量が1データから3データと増えている。S63~H9とH10~H19の比較では、1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数が著しく増加し、200m3/秒を超えるピーク流量も増えている。全体として、大雨の回数の増加につれて洪水ピーク流量も大きくなっている傾向がうかがえる。降雨の傾向が洪水ピーク流量の増大に反映しているようである。
この傾向が100年確率推定値にどのような影響を与えるか検討してみた。犀川では、昭和53年から継続して流量観測が行われている。S53からH19までの30年間の「下菊橋測水所流況表(年最大値のみ)」の正時ピーク流量データから、統計的分析して、100年確率推定値を求めた結果が以下のとおりである(甲第28-1号証「犀川の流量確率評価について(下菊橋測水所流量観測記録30年間)」による。)。
適合度を満足する確率分布が8つあり、
100年確率推定値は362ないし476m3/秒。
ただし、この推定値は、正時(しょうじ、一時ちょうど、二時ちょうどなどのように、分・秒の端数のつかない時刻。)データによるもので、1時間の間のピーク流量を計測していない。そのため、正時と任意のピークとの関係を知る必要がある。
平成20年7月28日浅野川豪雨の例では、任意ピーク流量値は433m3/秒に対して、正時ピーク流量値は328m3/秒であり、75%である。
また、「洪水調節図(犀川大橋基準点)」(f3-)から、正時と任意ではズレの最大を読み取ってみると、ピーク流量値に対して、正時データは80%程度になる場合があることがわかる。したがって、正時データに対する任意のピーク流量は、最大1.3倍程度となる。
正時ピーク流量値から求めた100年確率推定値を1.3倍して修正100年確率推定値を求めると、470ないし618m3/秒となる。これに対して、犀川大橋基準点の100年確率洪水ピーク流量は、1,230m3/秒であり、5割程度にしかならない。近年の豪雨による洪水ピーク流量のデータを入れて統計解析をしても、辰巳ダムなし状態(犀川ダム、内川ダムあり)で著しい余裕がある。
近年、集中豪雨の頻度や強さが拡大する傾向はあるが、犀川のような規模を持つ河川の影響はごく小さい。
年間の降雨量が多くなったとしても、日あるいは時間あたりの降雨が大きくなければ、犀川という河川の洪水ピーク流量が大きくならない。また、ゲリラ豪雨といわれる都市型集中豪雨で時間あたりの降雨が大きくなり、都市の一部で道路が冠水するなどの被害が発生することがあっても、犀川という大きな流域を持つ河川の洪水ピーク流量が必ずしも大きくなるとは限らない。
犀川の洪水ピーク流量に近年の集中豪雨がどの程度影響しているか
「全国の短時間豪雨の状況について」、「石川県の短時間豪雨の状況について」などの資料から、最近10年間(H10~H19)と20年前(S51~S62)と比較して、大雨が増えていると説明している。時間50mmの大雨の頻度は全国では、約1.5倍になり、石川県では、約4倍にも増加していると説明する。
石川県の1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数の推移は、以下のようであり、S51~S62の年平均0.7回から、H10~H19の年平均3.0回に増加している。
S51~S62 年平均0.7回
S63~H9 年平均0.8回
H10~H19 年平均3.0回
降雨頻度の増加が実際に犀川の洪水ピーク流量値に反映しているかどうかを「犀川下菊橋測水所流況表」で調べてみた。「下菊橋測水所流況表(年最大値のみ)」(f2-)の各期間の200m3/秒を超えるピーク流量は、以下のとおりである。
S53~S62 250m3/秒
S63~H9 220,242,302m3/秒
H10~H19 270,295,352,364m3/秒
(注:S51,52の流量データはない。)
1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数をS51~S62とS63~H9で比較すると、ほとんど変わらないが、200m3/秒を超えるピーク流量が1データから3データと増えている。S63~H9とH10~H19の比較では、1時間降水量(50mm以上)の年間発生回数が著しく増加し、200m3/秒を超えるピーク流量も増えている。全体として、大雨の回数の増加につれて洪水ピーク流量も大きくなっている傾向がうかがえる。降雨の傾向が洪水ピーク流量の増大に反映しているようである。
この傾向が100年確率推定値にどのような影響を与えるか検討してみた。犀川では、昭和53年から継続して流量観測が行われている。S53からH19までの30年間の「下菊橋測水所流況表(年最大値のみ)」の正時ピーク流量データから、統計的分析して、100年確率推定値を求めた結果が以下のとおりである(甲第28-1号証「犀川の流量確率評価について(下菊橋測水所流量観測記録30年間)」による。)。
適合度を満足する確率分布が8つあり、
100年確率推定値は362ないし476m3/秒。
ただし、この推定値は、正時(しょうじ、一時ちょうど、二時ちょうどなどのように、分・秒の端数のつかない時刻。)データによるもので、1時間の間のピーク流量を計測していない。そのため、正時と任意のピークとの関係を知る必要がある。
平成20年7月28日浅野川豪雨の例では、任意ピーク流量値は433m3/秒に対して、正時ピーク流量値は328m3/秒であり、75%である。
また、「洪水調節図(犀川大橋基準点)」(f3-)から、正時と任意ではズレの最大を読み取ってみると、ピーク流量値に対して、正時データは80%程度になる場合があることがわかる。したがって、正時データに対する任意のピーク流量は、最大1.3倍程度となる。
正時ピーク流量値から求めた100年確率推定値を1.3倍して修正100年確率推定値を求めると、470ないし618m3/秒となる。これに対して、犀川大橋基準点の100年確率洪水ピーク流量は、1,230m3/秒であり、5割程度にしかならない。近年の豪雨による洪水ピーク流量のデータを入れて統計解析をしても、辰巳ダムなし状態(犀川ダム、内川ダムあり)で著しい余裕がある。
近年、集中豪雨の頻度や強さが拡大する傾向はあるが、犀川のような規模を持つ河川の影響はごく小さい。