読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

秋色の軽井沢

2019年12月13日 | 水彩画

軽井沢の別荘は秋色に染まる

  
   clester  F10

  これは秋色に染まった旧軽井沢のある別荘の絵です。
  私が軽井沢に行って描いた絵ではありません。三女の家族が行って撮った写真の絵がなんとも絵心を誘
 う構図だったのでつい描いたものです。
  普段はこのように自分が直接空気に触れて感動してもいない写真で絵を描くことはしません。孫のMに
 そそのかされて、つい禁を犯してしまったわけです。何んとなく嘘っぽいですか。
                                      (以上この項終わり)

  

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 レネ・デンフェルドの『チャイルド・ファインダー 雪の少女』

2019年12月07日 | 読書

◇ 『チャイルド・ファインダー 雪の少女』(原題:The Child Finder)

                                著者: レネ・デンフェルド(Rene Denfeld)
                                訳者: 細見 遥子 2019.10 東京創元社 刊

   

 この小説は米国における子供の失踪事件がテーマである。

 ナオミは「子供見付け屋(チャルドファインダー:行方不明子供捜し人)」と呼ばれている。
ナオミ自身も幼いころに妹と共に森の中の塹壕に囚われの身となった暗い記憶がある。塹壕か
ら逃げる際に妹を置き去りにしたことが後悔の塊となって苦しんでいる。ナオミは森の季節労
働者らに救われ、ミセス・コトルの養女となり、ジェロームというやはり養子の男の子と一緒
に成長する。
そんな経緯から幼い子の行方不明者の発見を天命のように思っている。

 この度の依頼は森にクリスマスツリー用の樅の木を採りに行った際に両親とはぐれて行方不
明になった5歳の少女マディソンを探しだすこと。あらゆる手を尽くして探し回り3年経ってし
まった。そして子供探し屋のナオミに辿り着いたのだ。

 探し屋の仕事はうまく探し出せることがあるし、死んでいることが確認されるだけのことも
ある。また誘拐犯人に捜索を悟られて、次の日に子供が死体で発見されたこともあった。
 ナオミは3年も経ってマディソンは死んでいるかもしれないが、絶対探し出したいと心に決め
る。


 次いで洞窟の地下室に囚われたスノウガールと称する少女の語りになる。
 スノウガールを捉えた男は洞窟の主。耳が聞こえず話ができない罠猟師(ミスター・Bと呼
んだ)。怒ると暴力を振るう。スノウガールは囚われる以前の記憶が全くない。しかしスノウ
ガールが想像の世界で作り上げたおとぎ話ではマディソンという少女が登場する。(小説とし
てはここがやや奇異に感ずるところであるが、最終壇でその趣旨<複雑性PTSD>が明らかに
なる)

 スノウガールの囚われの日々、罠猟師との無言の対決とマディソンを探すナオミの探索過程が
交互に語られる。つまり探す側の大人の様子だけではなく囚われた子供の心理が巧みに捉えられ
ているのが本書の特徴である。

 マディソンが姿を消した森はナオミやジェロームが養子として育った地に近い。ナオミは森林
監視事務所のレンジャー・デイブと一緒に、入植者の小屋や怪しげな過去を持つ男、最近不自然
な買い物をした人物などを調べ上げ、ようやく渓谷の洞窟に潜む犯人に迫る。

 ところが犯人の罠猟師はナオミらの急迫を察知し、罠を仕掛けてナオミやレンジャー・デイブ
を殺そうとするが逆に
スノウガールの手によって死んだ。スノウガール:マディソンは両親の下
に帰った。

 実はこの罠猟師は少年時代の頃、或る罠猟師に誘拐され森の中で虐待を受けながら育てられた
過去があった。
 またナオミは養子同士のジェロームとの間に恋愛感情が芽生えていたが、自分の過去を思い、
正面から向かい合うことができなかったが、粘り強いジェロームがその束縛から解放してくれ
て二人は心身ともに強く結ばれた。

 ナオミは世界の悲しみの側を歩いてきて夜明けを見た人々の一人である。

 次作の、やはりナオミが主人公である『The Butterfrly Girl』の邦訳出版が楽しみである。

                                (以上この項終わり)

 

  

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レティシア・コロンバニの『三つ編み』

2019年12月02日 | 読書

◇『三つ編み』(原題:La tresse)

                               著者: レティシア・コロンバニ(Laetitia Colombani)

                                 訳者:斎藤 可津子   2019.4 早川書房 刊

 

 「・・・指が綴る編みと紡ぎの物語。これは私の物語。」プロローグでの著者の語り。
 三人の女性。スミタ(インド)、ジュリア(シチリア)、サラ(カナダ)。これが
 三つ編み。3人がどこでどう紡がれるのか。
<スミタ>
 不可触民であるスミタは、娘のラリータにだけは自分と同じような人生は送らせない、
学校にやろうと頑張る。字を読んで書けるように。しかし学校でラリータは虐げられた。
スミタは糞尿処理の軛から逃れるるために敢然と村脱出を図る。ヴィシュヌ神の聖地へ
向けて、バス・鉄道を乗り継いで飲まず食わずの1千キロの旅。スミタとラリータはテ
ィルパティの寺院で、古来からの伝統に従い髪を剃ってヴェンカテスワラに捧げる。
<ジュリア>
 高校で優秀だったジュリアは100年近く続く一家の生業である父の「かつら」の仕事
を引き継ぐ覚悟で学校を辞めた。父は脳梗塞で寝込んだ。倒産の危機が目前に。家族や
従業員の生活のすべてがジュリアにのしかかってきた。そんな中、ターバンを巻いたイ
ンド人の男と知り合い、深い仲になる。彼カマルは、シチリア人の髪にこだわる家族の
反対を押し切り、インド人の髪を輸入して家業の再起を図る提案をしてくれた。
<サラ>
 サラはバツ2ながら、人も羨む有名弁護士事務所のアソシエイト弁護士、マネージ
ングパートナーの椅子を狙ってしゃにむに働いている。
 ある日法廷で倒れ、病院で検査を受けた際に乳がんを発見される。しばらく前から胸
が痛かったのだ。弁護士事務所はサラの病を知ったとたんに排除に動き始める。失意の
どん底に陥ったサラはそれでもがん克服のために最後の挑戦をする。
 化学療法の副作用で髪が抜けた。自分らしさを取り戻すためにサラはかつらを身に着
けることにする。それはヴィシュヌ神に捧げるために剃ったサラとラリータの髪だった。

 さて『三つ編み』の読みどころ。 
 インドとカナダとイタリアのシチリアという、地理的にも社会的にもおおきくかけ離
れた3人の女性の人生が、どこで交錯するのか。興味津々で読み進むのであるが、さす
がに脚本家。ラストで巧みに三つ編みを紡ぎ読ませる


 3人を紡いだ糸は髪の毛だった。髪は女性としての尊厳や女性性の象徴。いずれも懸
命に自分の意志を貫く強さを持った女性の戦いぶりに感嘆しつつエールを送る。

                            (以上この項終わり)

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