読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

スティーヴン・キングの『アンダー・ザ・ドーム』(4)

2020年06月16日 | 読書

◇『アンダー・ザ・ドーム』(4)(原題:Under the Dome)
  
                     著者:スティーヴン・キング(Stephen King)
               訳者: 白石 朗    2013.11 文芸春秋社 刊

  

 <町民総会で惨劇> 
 チェスターズミル革命団。留置場からバービーとラスティを救出するロメオと
アーニーの二人、ブラックリッジ山の果樹園納屋にバービーらの隠れ処物資を運
ぶジュリアとクレア、少年探偵団3人のグループ、目くらましに町民総会に出る
リンダとクレア。役割分担が決まった。

 一方心臓発作も収まり意気軒昂のビッグ・ジムはシナリオ通りに総会で演説。
「我々はブレンダとレスター牧師殺害容疑でバーバラを逮捕した。若い女性2人の
殺害容疑もある。今度のドームは政府内の反主流派の陰謀で、我々は実験のモル
モットである。バーバラはその手先で、秘密裏に資金提供するために、ドラッグ
密造工場を建設し東海岸一帯に供給していた。その共謀者の一人は町政委員長の
アンディである」これで場内に驚きの叫びが上がる。
 「そしてバーバラの上司はアメリカ陸軍の大佐と称する人物だ。我々はバーバ
ラを処刑すべく町民総会の投票にかける。死刑の結果が出れば警察の銃殺執行部
隊によって処刑される」。

 ここで万雷の拍手が起こるが、薬を断って正気に帰った第3町政委員アンドレ
アが立ち上がり、この演説を全否定する反論を浴びせかける。
 ビッグ・ジムは絶句する。これを見た副官カーターはボスの意向を忖度し、ア
ンドレアを射殺する。場内騒然。町民は先を争って会場の出口に殺到する。

<バービーを殺しに行くジュニア>
 脳腫瘍の症状が悪化しながらもジュニアは警察署地下の留置場に向かい3人の
署員を射殺する。ジュニアはラスティには目もくれずバービーを銃で狙うが、口
撃で挑発され激高したジュニアの狙いはことごとく外れる。
 そこでジュニアは署に戻ったジャッキーに背後から撃たれ即絶命する。
 そして臨時警官の二人が署に戻った直後、漸く間に合ったロメオとアーニーは
バービーとラスティを救出に成功する。
 
<革命団山上に集結>
 バービーとラスティは無事にブラックリッジ山の果樹園納屋に到着した。
 黒い箱に手を触れたバービーらは各自の脳裏に侵入した奇妙な映像から地球外
知性体によって自分たちが標的とされ、観察されているのではないかと推論する。

<ドーム外の人たちとの対面・ラジオ局大爆発>
 いよいよドーム内の人たちと外の肉親や親類縁者たちとの再会対面が始まった。
その様子は上空とドームの外側に詰めかけた報道陣によって全米に報道され涙を
呼んだ。
 一方ビッグ・ジムはこの面会イベントの隙に麻薬製造の悪事をバービーにかぶ
せるべく、警察署長のランドルフに麻薬製造工場襲撃を命じたが、立てこもるシ
ェフとアンディに反撃され、しかも麻薬製造工場はシェフが用意していた35キロ
を超えるプラスチック爆弾と37,000Lのプロパンガスが一瞬のうちに爆発し爆風
がキノコ雲となって真昼の空を駆けあがっていった。

<死の町と化すチェスターズミル>
 町は死の海と化した。汚染された空気、熱風、酸素の欠乏で次ぎ次と死者が増
え、目を覆う惨事となる。大火が収まった時点で生きていた400人近い住民は、
夕刻には106人となり、あくる朝にはわずか32人だけになった。
 作者S・キングは独特のタッチで町を襲った地獄の阿鼻叫喚を克明に描写する。

 ビッグ・ジムと副官カーターは庁舎の核シェルターの避難するが、仲違いしビ
ッグ・ジムはカーターを殺す。ビッグ・ジムは外に出て悪性の空気を吸い死ぬ。

 バービーら革命団の面々は互いに支え合いながら山を下り、火勢の逆方向から
農場屋敷に向かい、辛うじてドーム越しにコックス大佐との対話に成功する。軍
は大型の扇風機で強制的にドーム越しにわずかな空気を送り込む。
 大佐は陸軍が用意した核ミサイルは発射時に事故を起こしドーム破壊に失敗し
たことを告げる。
 廃墟の上に残酷な赤い月がのぼった。 
 
<生存者たちの博打>
 バービーら革命団の面々も次第に何人か命を落とし、わずか数人になった。ジ
ュリアとバービー、サム、ロビンらは勇を鼓して再度山頂の黒い箱に向かう。
 ジュリアの発案で地球上の人間を蟻のように扱っている地球外知性体の連中に
懇願してみようというのだ。残された手立てはこれしかない。
 残った車のタイヤの中の空気を分け合いながら、黒い箱を介して意地悪をして
いる彼らXに「私たちを自由にして」というジュリアの真剣な願いが届いたらし
く憐憫の証としてドームの障壁が次第に上に上がっていった。

 廃墟の中で生きのびた人々は、新鮮な空気を思いっきり吸って、境界の反対側
にあった鮮やかな緑と紅葉の美しさを味わっていた。  
 
これはS・F若しくは大人のメルヘンと言っても良いのではないだろうか。

                          (以上この項終わり)




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