読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

メアリー・H・クラーク『魔が解き放たれる夜に』

2018年09月13日 | 読書

◇ 『魔が解き放たれる夜に』(原題:Dady's Little Girl)
              著者:メアリ・H・クラーク(Mary H.Clark)
              訳者:安原 和見    2004.5 新潮社 刊(新潮文庫)

  

     主人公エリーは過去に殺人事件で姉を失ったレポーター(犯罪調査報道記者)。姉のアンド
 リアを殺したロビン・ウェスタフィールドが22年の刑を務め、いま仮釈放されようとしてい
 る。あの悪魔のような男が自由に歩き回るなんて許せない。しかもロビンは真犯人は別にいる
 と裁判やり直しを求めるという。エリーは仮釈放委員会の重鎮に認めないよう訴えるが、結局
 ロビンは仮釈放された。

  事件は22年前保守色濃い街で起こった。エリーが7歳の時、16歳の姉アンドリアは街の重鎮
 で富裕の一家、ウェスタフィールド家の長男ロブ(ロビン)と付き合っていた。
  ある夜友人と勉強すると出かけたアンドリアは友人の家を出たまま行方が分からなくなった。
 懸命な捜索の末に、エリーのがウェスタフィールド家のガレージをを探し姉の死体を見つけた。
 実はエリーはその夜姉がロブとガレージで落ち合う約束をしていたことをことを知っていたが、
 姉との約束を守ってそこにいるかもしれないことを父母に話さなかったのだ。
 「もっと早くそのことを話してくれていたら」両親は嘆く。エリーもそのことを終生悔やむこと
 になる。

  ハンサムながら傲慢で狡賢く暴力的なロブは状況証拠、物証が固く、有罪となって服役した。
 多くの人は裁判でロブが言い立てたポーリーという近所の少年の犯行かも知れないと信じており、
 新たな目撃者が現れたので裁判で身の潔白を晴らすというロブの企てを何としても阻止しなけれ
 ばならないと、エリーは生まれ故郷に帰りロブの悪行を洗い出すことに奔走する。

  犯罪調査報道記者となった30歳のエリー。彼女には父に愛されていないのではないかという切
 ない記憶がある。アンドリアを溺愛していた父は殺人事件の後エリーと妻を捨てて家を去り、2
 年後に再婚し男の子をもうけたという。エリーそんな父を許していない。

  私にとって本書の魅力はストーリーのミステリックなところよりは、いつも父を畏敬しながら
 姉を溺愛する父は、自分を愛していないのではというエリーの複雑な心裡の推移にもある。腹違
 いの弟がエリーの身の危険を案じ警護を申し出たときも容易に心を開かなかった。しかし頑なだ
 ったエリーの心も次第に和らぎ、父を受け入れようという気持ちになっていく。


  故郷で「あの殺人事件の被害者の妹」という四面楚歌の中でロブの過去の事件からその暴力性
 などを抉り出す調査・聞き取りなど進める。物証の一つロブがアンドリアに与えたというロケッ
 トをめぐる真相解明は最後まで困難を極めた。
 
  物語りはテンポよく進む。
  エリーは過去のロビンの悪行を抉り出し、ネット公開し始める。ロブ側は執拗な脅迫、放火、
 車の故障、追突事故などでエリーを威迫する。

  最後はエリーの目差すところに落ち着き、父との宥和もあり、友人の―ポリーともめでたく結
 ばれるなど、めでたしめでたしの終わり方でよかった。

                                 (以上この項終わり)

 

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