読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ロバート・クレイスの『約束』

2017年06月23日 | 読書

◇『約束』(原題:THE PROMISE)
      著者:ロバート・クレイス(Robert Crais)
      訳者:高橋 恭美子    2017.5 創元社 刊 (創元推理文庫)

  

   既報『容疑者』の続編。警察犬マギーとハンドラーのスコットが新しい勤務地、
 ロサンゼルス警察犬隊で活躍する。しかも今回はクレイスの「コール&パイク
 シリーズ」のメンバーが加わり(17年ぶりとか)面白味を増した。とはいえコー
 ルというハードボイルド調のキャラクターが派手に立ち回るかといえばそうでもな
 く、警察犬マギーの聴覚とIT機器のフル活用という現代調でしっかりとまとめ上げ
 ている。
  多分愛犬家にとっては『容疑者』で傷心のマギーがスコットという新しいハンド
 ラーを得て、強い絆を結び、再びかつて輝きを取り戻したときのような感動的なシ
 ーンは望めないものの、最終章ではパートナー・スコットの危機を感じ取り渾身の
 体当たりで彼を救う場面で締めくくったので、一応満足できるだろう。
  ただ2兎を追っている無理は多少感じざるを得ない。筋が輻輳してテンポはよい
 がうるさい感じなのである。

   冒頭、得体のしれないロビンスという男と、エイミーという女性、チャールズと
 いう男性が、薬物なのか爆薬なのか、とにかく違法な取引をめぐって談合している
 ところから物語が始まる。
  そこは何かのアジトのような家で、別の取引の使い走りが警察の追跡車を連れて
 現れる。ロビンスはアジトに警察を連れてきたドジな男を殺す。
  金もブツも残しロビンスは逃げ去る。そこにちょうど窃盗犯を追っていたマギー
 とスコットが来合せロビンスを目撃する。これがスコットのライン。

  もう一つのラインは私立探偵コールが請負った仕事。コールは化学会社上級管理
 職のメリルという女性から同僚の部長職のエイミーという女性を探してと頼まれ、
 彼女がかつて住んでいたという家を監視中であった。そこで犬を連れた捜査官から
 逃げ出した男をつい追跡したことから警察から容疑者としてしつこく取り調べを受
 ける羽目になる。スコットとコールはここで初めて接点を持つわけだが、この家で
 マギーが大量の爆薬や武器を発見したことから事件はどんどん複雑な様相を呈して
 いく。ロス市警重大犯罪課をはじめ、アルカイダなどテロ集団への武器弾薬供与取
 引の疑いから、国土安全保障省、国家安全保障捜査局、FBI、ATFなど多様な司法
 関係機関が関与することになる。

  コールが探している女性エイミーは、フリーの記者であった最愛の息子ジェイコ
 ブをナイジェリアの自爆テロで失っている。犯人の捜索など国務省に実態の調査を
 求めてもさっぱり動かなかったことで失望し、独自の方法で復讐を遂げようとして
 いる節がある。武器弾薬の取引を通じてテロ集団から情報を得ようとしているので
 はないか。取引の相手がさっぱりつかめない。
 
  実はメリルは偽名で国土安全保障省の主任捜査官ジャネット・ヘスであることを
 コールが知ったところから話は俄然興味を増す。どうやら国保省に裏切り者はいる
 らしい。

  コールはパートナーのパイクに加えて元<デルタフォース>の一員であったジョ
 ン・ストーンもチームに加えてエイミーの隠れ家の監視盗聴・盗撮を続ける(ジョ
 ンは監視目的を外れるのでエイミーがブラジャーを外すときはちゃんと目をそらす
 という節度を示す)。
  
  一方ロビンスは自分の姿を見たマギーとスコットを殺そうと躍起になっている。
 マギーに毒を盛ったミートボールを与えようとしたがアライグマが身代わりになっ
 てマギーは命拾いする。
  マギーはエイミーが借りた貸倉庫に爆薬と爆破装置を発見する。
  
  さてエイミー失踪事件の真相は…。これから読んでみようという読者の興味を殺
 ぐことになるので、スコットが悪役ロビンソンに拳銃をつきつけられ、絶体絶命の
 危機に陥った時、持病の腰痛をものともせず猛進しスコットを救ったことと、どう
 やらジョンが自爆テロ使嗾犯を始末したとエイミーに手紙で知らせてきたという朗
 報で事件が大団円となったことを記すに止めよう。

                             (以上この項終わり)

 


 
 


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コメント (2)
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