【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

伝わる?

2019-07-07 07:45:57 | Weblog

 「伝える」と「伝わる」は、まったく別物です。それが一番わかるのは、学校のテストでしょう。もし「伝える」だけで「伝わる」のなら、テストは全員100点満点のはず。

【ただいま読書中】『revisions1』木村航 著(原作 S・F・S)、 早川書房(ハヤカワ文庫JA1352)、2018年、800円(税別)

 7年前、小学生の時に「事件」に巻き込まれた仲良し5人組。そのとき窮地を救ってくれたミロという女性は5人の中の大介(泣き虫)に「いつか危機が訪れたとき、皆を守るのはあなた」と告げます。その言葉をまともに信じ込んだ大介は、体を鍛え、サバイバルの準備をし、4人につきまといます。「守る」ために。しかしそれは、思い込みの激しい人間のストーカー行為でもありました。
 そして、渋谷を異変が襲います。大介たちが通っていた学校も含めた渋谷駅周辺の一帯が、まるで「漂流教室」のように切り離されて荒野の中に存在しています。さらにそこに怪物が襲ってきます。まるで昆虫採集をするように学校の屋上に集まった生徒たちを捕まえて腰のケースに入れたり潰して殺したり。皆を守るはずの大介はショックで何もできません。そこに現れたのが、ミロ。しかし彼女は大介のことを知りませんでした。
 有無を言わせぬ疾走感で、読者は異世界に容赦なく放り込まれます。
 大介に与えられた武器は、装着型のパワードスーツ「パペット」、敵はリヴィジョンズ(の中の人間捕獲を主任務とするシビリアン)。習うより慣れろでパペットに乗せられた大介は、高層ビルの廃墟の上から、荒野の中に渋谷駅を中心とした半径1kmの「生きた街」がはめ込まれているのを見ます。時は2388年。「未来」を相手にした戦いが始まります。時間難民となった渋谷区の住民(と一時滞在者)数十万人をなんとか「現在」に戻すため、そしてそれが可能になるまでの間できるだけ多くの人の命を守るための戦いです。
 もっとも、脳天気な筋肉バカの大介は、そんなややこしいことは考えていません。目の前の敵をまっすぐ撃破するのみ。あらあら、あっさりミエミエの囮に引っかかってしまいました。ただ、主人公(の一人)を早々に殺すわけにもいかないでしょう。救援隊がやって来ます。
 ただ、大介(や他の人)専用にチューニングされたメカがこの世界(大介の時代の未来)にあらかじめ用意されているって、未来の人はどうやって「将来過去の人間が戦うためにやって来る」ことを知り、さらにその個人データまで揃えることができたのでしょう? 不思議です。
 そして、一合戦、いや、二合戦あって、そこでリビジョンズの代表が交渉(というよりも通告)にやってきます。渋谷を未来に移転したのは人類を救済するためで、過去に戻りたければ武装を解除しろ。そうしたら一部の人間は帰してやる、と。この手の話にありがちな、頭は足りないけれど権力は持っている人間が、ほいほいとその話に乗ってしまいます。
 リビジョンズの意図はなんとなくわかってきますが、それに敵対するミロ(が属する組織)が大介たちに助力する理由はまだわかりません。ミロは、リビジョンズとはまったく違った方法で人類の未来を守ろうとしています。しかしその「人類」に大介たちが含まれているかどうかは、不明なのです。
 全3巻のようですが、さて、続きを読みたいかどうか、私には不明です。読んでいてそこまでわくわくしないものですから。もしかしたら、年を取って高校生に感情移入がしにくくなっているのかもしれません。