久し振りに犬を描く画家、佐藤さんの個展です。
実は犬だけを描く作家ではないのです。
初めて彼の絵との出会いは(当館でも当時陳列しましたが)もうだいぶ前に
なります。第一印象というのは強く印象に残るものです。
その個展ではすべてが犬の絵だったのです。
同氏は犬の絵を追及する作家というイメージが強烈に残ってしまったのです。
その後の個展で、素晴らしい静物や風景画に接したのですが、私の老いて頑迷な
頭からはどうしてもその残像が抜けないのです。
本日御覧のように、心象的な具象画で技巧を凝らした素敵なムードのある作風の
本格的な洋画家さんなのです。
実は、私はこの方の奥さんのフアンで、その水彩画のタッチ、色使い、作風は
とても好きなのです。お二人とも美術大学出でまさしく絵描き夫婦といったところです。
しかし時には人には言えぬ、互いの葛藤やら競争心などがあるものなのでしょうか。
さて会場奥の正面、この会場で一番目に付くメインの場所に100号位の大きな
雲の絵がドーンと鎮座して、まずは眼を奪われます。なかなか心憎い粋な陳列です。
そして全てに、題名が無題ではなく無いのです。これは私も初めて見ました。
面白いアイデアだと思います。
ギャラリーの詩心、感情、思考や性情に任せて、好きなように見てくださいという
わけで、これは見る人の創作心、想像心、ノスタルジャーから哲学から人生観までを
思い起こさせる様で、いたく心がくすぐられます。