さすらうキャベツの見聞記

Dear my friends, I'm fine. How are you today?

地獄に落ちた男 (1)

2012-01-24 23:00:30 | Sunday 聖書
     「地獄に落ちた男(1)」
     「地獄に落ちた男(2)」
     「地獄に落ちた男(3)」


      *************


 前もって断っておきますが、

「この世(地上)で生きていることが、地獄だ」とか、

「そもそも、オレタチって、生きているの? 本当に、今、自分は存在しているの?」という

辛い感覚や切実な問いかけは、申し訳ありませんが、ここでは脇に置かせていただきまして。。。




 これは、

 いわゆる、この世の後の世界の話。
 人が死んだあと行く、ここではないどこかの話。


 ある男が、「地獄」に落ちたときの話。by Holy Bible

        ***********


(続く)

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地獄に落ちた男 (2)

2012-01-24 22:54:29 | Sunday 聖書
     「地獄に落ちた男(1)」
     「地獄に落ちた男(2)」
     「地獄に落ちた男(3)」


「地獄に落ちた男(1)」の続き)

         ***************

 ある男がいた。 1)
 彼は、地獄(じごく)にいた。
 それは、火と硫黄(いおう)の池だという。 2)

 彼は、焔(ほのお・炎)の中で、
 もだえ苦しんでいた。


         ***************


 火に焼かれるとはどんなものか。

 やけど、ならある。

 …足の一本とそこら、やけどを負ったことがある。
 (一晩中、のた打ち回っていた。)
 …マイナス196℃の液体窒素で、肌をほんの少々焼いたこともある。
 (激痛だった。)

 どちらにせよ、もう味わいたくないものだ。


         ***************

 火を味わった人がいる。

 魔女狩りで、火あぶりにあった女性たち。
 殷の紂王の炮烙(ほうらく)。  3)
 古代ローマの「ぺリルスの牛」。 4)
 江戸時代の「温泉岳地獄」。   5)
 1998年のジャカルタ(コタ)で起きた暴動…暴行後、燃え盛る火の中に投げ入れられ、炭化した遺体。
 ・・・等々。

 「死んだ方がましだ」という気がする。
 彼らは、死によって、この世の地獄と別れられた。

 だが、死さえ、もはや憩(いこい)とはならない。

****************

(なぜなら、)

彼は、すでに死んでいる。


****************



 そんな激しい、逃れようのない苦しみの中、
 彼は、あることを願った。


(続く)



【注】
1)新約聖書・ルカの福音書16章19-31節参照。

2)新約聖書・ヨハネの黙示録20章10節。
  西洋だろうと東洋だろうと、「地獄」「ハデス」のイメージの多くは、「炎」らしい。


3)炮烙(ほうらく):猛火の上に多量の油を塗った銅製の丸太を渡し、その熱された丸太のうえを罪人に裸足で渡らせるもの。


4)ぺリルスの牛:古代ローマにおける、真鍮(しんちゅう)でできた巨大な牛の姿をした処刑器具。

  牛像の胴体部分の扉をあけ、罪人を中に押し込めて錠をおろすと、中からは二度と出られない。
  そして、牛の下で薪を積み上げて火を焚くと、真鍮のためすぐに牛像は高熱を帯び、真っ赤に焼ける。
  中でいぶされる罪人は苦しみのあまり絶叫するが、その声は牛の吠え声そっくりに聞こえるという。

  シチリア王パラリスの命で、ぺリルスが発案したが、発案者自身が最初の犠牲者となった。
  最近では、映画『赤ずきん』(ハードウィック監督)にて、パロディのひとつとして登場する。



5)温泉岳地獄:江戸時代のキリシタン弾圧で使用された拷問。
        雲仙岳の硫黄泉に信者を浸して、転宗を迫るもの。

  まず、キリシタンを裸にして両手両足をしばり、地獄谷の池に立たせ、背中を断割って、傷口に熱湯をひしゃくで注ぎ込む。
  次に、硫黄がたぎっている中に、キリシタンの全身を浸けたり、引き出したりするのを、繰り返す。体中がただれ、皮膚がやぶれ、つぎつぎと苦しみながら息絶えていくという。
  この拷問にあって棄教したものが60数名、殉教したものは33名にのぼった。

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地獄に落ちた男 (3)

2012-01-24 22:49:19 | Sunday 聖書
     「地獄に落ちた男(1)」
     「地獄に落ちた男(2)」
     「地獄に落ちた男(3)」


「地獄に落ちた男(2)」の続き)


         ***************


「父アブラハムよ、我を憐(あわれ)みて、ラザロを遣(つか)わし、その指の先を水に浸して 我が舌を冷やさせ給(たま)え」          (ルカ16:24、文語訳)


         ***************


 彼の願いはふたつあった。
 ひとつは、この苦しみが和らぐこと。


         ***************


 だが、その願いは、叶えられなかった。

 アブラハムは言う。
「ここ(天国)とそこ(地獄)との間には、大きな淵(ふち)があるのだ」
と。そして、行き来することはできないのだ、と。

 …蜘蛛の糸 1)はないらしい




         ***************


 そこで、男は、もうひとつ願った。

「さらば父よ、願わくは 我が父の家にラザロを遣わ給え」(ルカ16:27)
と。
 自分には、兄弟が5人いるのだ、と。
 こんな耐えがたい苦しみのところへ来なくていいように、
 彼らに言い聞かせてほしい、と。

 誰かが甦り、「あの世はこうなんだよ」と言ってあげたら、
 悔(く)い改めるに違いない、と。

 彼は、兄弟を想い、切にそう願った。


         ****************


 だが、アブラハムの答えは、こうだった。

「もし モーセと預言者(=聖書)とに聴かずば、

 たとえ死人の中(うち)より甦る者ありとも、

 其の勧めをいれざるべし」
  
         (ルカ16:31)


 確かに・・・。 2)





  彼のもう一つの願いが叶うかどうかは、私たち自身がどう歩むか、だ。



【注】
1)蜘蛛の糸:芥川龍之介『蜘蛛の糸』参照。

2)たとえ、「私は1万年先から来ました。これから先、この世界はこうなります」とさえ言われても、確かに、信じがたい。
いわんや、死後の世界をや。
  (たとえ、私らの先祖や友人、愛する人々や様々な方々がそう願っていたとしても、結局、もともと、聖書やら何やら聞いていなければ、「死後の世界」から使者が来ても信じられるわけがない。)

   無に帰する?

   それはそれで、虚しい。

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