それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

NHK・Eテレ「ねほりんはほりん」:第一回目から伝説的

2015-07-02 21:11:17 | テレビとラジオ
NHKのEテレ、それは今最も進んだ番組をつくるテレビ局。

そのEテレが放送した「ねほりんはほりん」は、NHKというよりスカパーなみにディープな番組だった。

「ねほりんはほりん」は、ぬいぐるみが話をする。つまり、マペット放送局的な番組である。

しかし、それはインタビュー番組である。

実名や顔を出せない人がインタビューに答える。インタビューアーは南海キャンディーズの山ちゃんとYOU。

ふたりはモグラのキャラクターに扮して、ゲストのブタさんから話を聞きだす。



最初のゲストは「プロ彼女」。

まず、この選択がすごいのである。

「プロ彼女」とは、能町みね子さんが考え出した概念で、芸能人やスポーツ選手などの男性と付き合うために様々な努力をする「素人」の女性のことである。

よくニュースで俳優や芸人さん、スポーツ選手が「一般女性と入籍」などと報道される。

では、この一般女性とは一体誰なのか?

「プロ彼女」の概念はその謎に見事に答えてくれる。

それは特別な「素人」なのだと。

元グラビアアイドルとか元モデルとかの経歴だが、インターネットで検索しても名前が出てこない。

スタイルや顔立ちが美しく、料理も得意で、気立ても良い女性。

この概念には皮肉が込められているように思える。

これはもはや「一般女性」ではないのだ、と。

そして、そんな摩訶不思議な生き方をする「プロ彼女」とは一体なんだろう、と。

有名人をねらう、という姿勢だけ考えれば、なんだかとても計算高いように見えてしまう。



ところが、である。

このNHKの「ねほりんはほりん」は、そうした私の先入観を打ち破ってくれた。

ゲストはスポーツ選手と結婚したばかりの「元プロ彼女」。

彼女は、スポーツ選手と知り合う手段について熟知し、スポーツ選手が必要とする料理や栄養学の知識を学んでいる。

もちろん、スタイルにも気を付けており、それを相手に見せる方法にも気を配っている。

さらに、スポーツ選手の仕事以外の趣味を丁寧に、そして秘密裏に調べ上げ、偶然を装って話を合せるのだ。

なぜ、そんなことをするのか?

彼女は言う。自分は誰かに認めてほしかった。親や同級生から疎外されてきた人生のなかで、自信を持ちたかったのだと。



YOUはこう言った。話を聞くまでは反感を持っていたが、聞いてみるととても気持ちが良い。女性はすべからくそうしたことをやっている生き物だ。やっていないで恋人が欲しいと愚痴る女性は多いが、それは努力が足りないだけだと思う、と。

私もそう思った。

いいじゃない、そういう生き方もいいじゃない。立派じゃない。

ある目標を持ったら、よく調べ、考え、努力し、天命を待つ。それはどんなものにでも当てはまる。

恋愛はまるで運命と奇跡から出来ているように思えるが、実際には意志と因果律と偶然の作用である。

だから、プロ彼女のやり方を非難する理由を私は見つけられなかった。



だが、同時に大事なことがある。

プロ彼女をもてはやしてはならない。

それは間違っている。

プロ彼女という概念はやはり皮肉なものだ。

モノ好きな人もいるなあ、という距離感がある。

それでいいのだ。

有名人と結婚することを女性の目標だなどと言い始めたら、社会は終わりなのだ。

人間の生は多様で、当然、善き生が何であるかは、それぞれの人が人に迷惑をかけない程度で決めれば良い。



話しは番組に戻る。

要するに、こういうことをNHKのEテレが取り上げる意味は何か。

もうEテレのEは単なる「教育 education」のEではない。

それはもはや「啓蒙 enlightenment」のEである。

「ねほりんはほりん」は、現在の日本の社会と人間を掘り下げようとする啓蒙的番組なのである。

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