頭冷却期間中。
去年の音楽で気になったものを以前ここに書きました。
で、そのなかでも一番なのは?と聞かれたら(聞かれないけれど)、僕は迷わずこう答えたい。
サカナクション「目が明く藍色」
これ、絶対これ。
いやいや前回の記事で書いてなかったじゃないですか、と思う方もいるでしょう。
そんなね、ちまちました賞をこれにあげちゃ駄目ですよ。
僕はこの曲にレコード大賞をあげたいですよ。
1、全体の構成
本当は解説のひとつでもしたいですが、難しい。
この曲はサカナクションの頭脳である山口一郎の意匠がものすごく細かく凝らされている。
もはや彼はミュージシャンという名の「職人」であって、この曲はその職人が建築した巨大な建造物だ。
曲全体は7分ほどあり、いわゆるロックやポップスの一般的な長さから考えれば、非常に長い。
全体は大まかに分けると「A」「B」「A'+α」のようになっている。
「A」が2分弱、「B」が1分強、最後が3分ほど。
「A」と「A'」はロックバラードの調子で展開する。真中に挟まれている「B」はテクノの要素が色濃く、ビートも非常に速い。しかも、その後半はロックオペラ調でもある。
このように曲全体は若干、統合失調症的な雰囲気が漂い、それが歌詞の「記憶の森に迷い込んでしまった」感じとうまく合っている。
2、コード進行
とはいえ、一見複雑な構造に見えるものの、コード進行のパターンは大別すると二種類ほどで構成されているように思われる。
その前提として、この曲は全体が一貫して「E」のキーになっている。もちろん途中で短調(C#m)になるが、調合自体は変化しない。
①コード進行のひとつめのパターンは、| E F#m7 | E/G# A |の展開。
これはイントロ=A=A'で登場する。
②もうひとつの進行パターンが、C#m C#m/B AM7・・・(そのあと、C#のベースがきて、何かが乗って、D#m-5とかが続くのだと思うんだけど、よく分からなかった・・・残念)。
これはAの後半、B、曲の一番最後の部分(「きみの、声を聴く 息をすって すって」)で登場する。
コードのパターンが一貫しているので、音色やテンポが急激に変化しても、聴き手はそれほど振り回されすぎることがない。
ぎりぎりのところで調和がとれている。
それと、きわめて残念ながら、僕はコードの展開を明らかにできなかったが、ふたつめのパターンが絶妙で、これがこの楽曲の複雑な感情(狂気が入り混じった感じ)をうまく出している。
3、音色と、音の組合せ
しかし実のところ、この曲で重要なのは、むしろ音色と音の組合せだ。
サカナクションの特徴である、テクノサウンドの取り入れにおいて重要なのが音色だ。
テクノの最大のポイントのひとつが、音色にあるからだ。
電子音というのは、実際のところ、選べる音が無限にあると言っていい。
通常の楽器では考えられない選択肢が存在する。
テクノを取り入れるということは、どの音色、どの素材を使うかで相当考えないといけない。
この曲でも、おそらく山口は相当時間をかけざるを得なかったのではないかと推測される。
おまけに、サカナクションの楽曲はテクノ寄りではあるものの、この曲もそうだが、別に全てがテクノっぽいわけではない。
この曲の場合、ストリングスやコーラスと言ったロック・オペラ調の要素も入っていて、そこでも相当思考した跡が見られる。
4、歌詞
最後のポイントは歌詞だが、これもこの作品は非常に優れている。
題名の「目が明く藍色」がそもそも変わっている。
気になるのは「明く」だ。明るくなる、はっきりするという意味にも取れるし、開くという
意味にも取れる。
歌詞全体に何度も出てくるのは、「藍色」と「光」。
「明く」はこの「光」のニュアンスもあるし、目が開く、というクライマックスの展開も示唆する。
感情に特に訴えかけてくるのが「藍色」だ。
藍色は、ここでは夜が明ける時間帯の空を思わせるとともに、思春期を連想させる青ともつつながる。
この「藍色」の曖昧さと、少しひんやりしていて、でも衝動的でもある何かが曲の世界観を見事に表している。
そして、彼がこの曲の収録アルバムのタイトルとした「汽空域」ともつながる。
5、結論
要するに、この曲はあまりにも緻密に出来ている。
本当に緻密すぎる。
聴き手に確実に伝わるかたちで緻密である。
それはまさに職人芸であり、芸術家の作品である。
去年の音楽で気になったものを以前ここに書きました。
で、そのなかでも一番なのは?と聞かれたら(聞かれないけれど)、僕は迷わずこう答えたい。
サカナクション「目が明く藍色」
これ、絶対これ。
いやいや前回の記事で書いてなかったじゃないですか、と思う方もいるでしょう。
そんなね、ちまちました賞をこれにあげちゃ駄目ですよ。
僕はこの曲にレコード大賞をあげたいですよ。
1、全体の構成
本当は解説のひとつでもしたいですが、難しい。
この曲はサカナクションの頭脳である山口一郎の意匠がものすごく細かく凝らされている。
もはや彼はミュージシャンという名の「職人」であって、この曲はその職人が建築した巨大な建造物だ。
曲全体は7分ほどあり、いわゆるロックやポップスの一般的な長さから考えれば、非常に長い。
全体は大まかに分けると「A」「B」「A'+α」のようになっている。
「A」が2分弱、「B」が1分強、最後が3分ほど。
「A」と「A'」はロックバラードの調子で展開する。真中に挟まれている「B」はテクノの要素が色濃く、ビートも非常に速い。しかも、その後半はロックオペラ調でもある。
このように曲全体は若干、統合失調症的な雰囲気が漂い、それが歌詞の「記憶の森に迷い込んでしまった」感じとうまく合っている。
2、コード進行
とはいえ、一見複雑な構造に見えるものの、コード進行のパターンは大別すると二種類ほどで構成されているように思われる。
その前提として、この曲は全体が一貫して「E」のキーになっている。もちろん途中で短調(C#m)になるが、調合自体は変化しない。
①コード進行のひとつめのパターンは、| E F#m7 | E/G# A |の展開。
これはイントロ=A=A'で登場する。
②もうひとつの進行パターンが、C#m C#m/B AM7・・・(そのあと、C#のベースがきて、何かが乗って、D#m-5とかが続くのだと思うんだけど、よく分からなかった・・・残念)。
これはAの後半、B、曲の一番最後の部分(「きみの、声を聴く 息をすって すって」)で登場する。
コードのパターンが一貫しているので、音色やテンポが急激に変化しても、聴き手はそれほど振り回されすぎることがない。
ぎりぎりのところで調和がとれている。
それと、きわめて残念ながら、僕はコードの展開を明らかにできなかったが、ふたつめのパターンが絶妙で、これがこの楽曲の複雑な感情(狂気が入り混じった感じ)をうまく出している。
3、音色と、音の組合せ
しかし実のところ、この曲で重要なのは、むしろ音色と音の組合せだ。
サカナクションの特徴である、テクノサウンドの取り入れにおいて重要なのが音色だ。
テクノの最大のポイントのひとつが、音色にあるからだ。
電子音というのは、実際のところ、選べる音が無限にあると言っていい。
通常の楽器では考えられない選択肢が存在する。
テクノを取り入れるということは、どの音色、どの素材を使うかで相当考えないといけない。
この曲でも、おそらく山口は相当時間をかけざるを得なかったのではないかと推測される。
おまけに、サカナクションの楽曲はテクノ寄りではあるものの、この曲もそうだが、別に全てがテクノっぽいわけではない。
この曲の場合、ストリングスやコーラスと言ったロック・オペラ調の要素も入っていて、そこでも相当思考した跡が見られる。
4、歌詞
最後のポイントは歌詞だが、これもこの作品は非常に優れている。
題名の「目が明く藍色」がそもそも変わっている。
気になるのは「明く」だ。明るくなる、はっきりするという意味にも取れるし、開くという
意味にも取れる。
歌詞全体に何度も出てくるのは、「藍色」と「光」。
「明く」はこの「光」のニュアンスもあるし、目が開く、というクライマックスの展開も示唆する。
感情に特に訴えかけてくるのが「藍色」だ。
藍色は、ここでは夜が明ける時間帯の空を思わせるとともに、思春期を連想させる青ともつつながる。
この「藍色」の曖昧さと、少しひんやりしていて、でも衝動的でもある何かが曲の世界観を見事に表している。
そして、彼がこの曲の収録アルバムのタイトルとした「汽空域」ともつながる。
5、結論
要するに、この曲はあまりにも緻密に出来ている。
本当に緻密すぎる。
聴き手に確実に伝わるかたちで緻密である。
それはまさに職人芸であり、芸術家の作品である。
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