2週間朝日新聞で”桜特集”がありました。そのお話は、私にとっては知らない、驚くことばかりで素晴らしい連載でした。死生観からお菓子に至るまで、こんなにも多くの人々に影響を与えているものかと改めて知らされました。そして感動しました。その一部(要約)をここにご紹介します。
その1,「桜男」と呼ばれた笹部新太郎、1887年大阪の大地主の次男坊、東大法学部出身だがそのエリートコースを捨てて「好きな桜の保護と育成に没頭して91年の生涯を終えた」。1960年早春、当時の通産相高崎達之助は御母衣ダムに水没する村の桜の移植を笹部氏に依頼した。最初は拒わられたが熱意に押され引き受けた。2本の桜は「荘川桜」とよばれ、ダムのほとりに毎年花を咲かせている。笹部は、御母衣ダムに沈む運命の荘川桜を救ったのである。移植が完了したあと、無事に根づいたかどうかを京都の庭師佐野籐右衛門親子に頼んだ。子の16代佐野籐右衛門は、笹部の衣鉢を継いで毎年一度の御母衣通いを欠かしたことはないという。
その2,笹部にほれ込んだ批評家小林秀雄は、桜好きで知られている。文芸春秋編集長だった薄井氏を介して笹部と会い、作家水上勉に笹部の存在を教えた。水上も笹部と会い、その人柄に魅かれ、ひたむきに桜を守り育てる人々を描いた傑作「桜守」(さくらもり 新潮文庫)として結晶した。
その3,「淡墨桜」(うすずみざくら)は、岐阜県の根屋村(現本巣市)にあり、樹齢は実に1500年という。淡墨桜は、昭和に入ってから2度枯死の危機をのりこえた。1度は戦争で放置され樹勢は衰えたが、盆栽の名人であり医師前田利行の手で見事に回生させ、満開の花を咲かせた。しかし昭和59年(1984年)伊勢湾台風による痛手でまた衰えてしまう。作家宇野千代は、淡墨桜の枯死を待つばかりの老残に心を痛めた。前田氏の遺徳に共感し、随筆で「もう一度花を咲かせたい」と訴えた。岐阜県知事にも書簡を送り、ついに宇野の熱意が行政を動かし、手厚い保護が加えられ、淡墨桜は再びよみがえった。宇野は、後に小説「淡墨の桜」をあらわした。
その4,京和菓子の老舗「末富」の3代目ご主人山口富蔵は、「桜前線」というお菓子を発案した。桜前線が野山をかけめぐるさまを、茶巾しぼりの和菓子にして命名した。花の便りが聞え始める3月上旬から店に出し、桜が咲くころに仕舞いにする。山口は、発想がわくと色鉛筆でスケッチして、色と形を記憶にとどめる。茶巾絞りの「夜桜」は、20年前、展覧会で横山大観の同名のびょうぶ絵を観てひらめいたという。
私たちは、春を待ちわびて毎年桜を愛で、各自いろいろな思いを桜に託しています。来年また美しい桜に出会えることを願って・・・。
その1,「桜男」と呼ばれた笹部新太郎、1887年大阪の大地主の次男坊、東大法学部出身だがそのエリートコースを捨てて「好きな桜の保護と育成に没頭して91年の生涯を終えた」。1960年早春、当時の通産相高崎達之助は御母衣ダムに水没する村の桜の移植を笹部氏に依頼した。最初は拒わられたが熱意に押され引き受けた。2本の桜は「荘川桜」とよばれ、ダムのほとりに毎年花を咲かせている。笹部は、御母衣ダムに沈む運命の荘川桜を救ったのである。移植が完了したあと、無事に根づいたかどうかを京都の庭師佐野籐右衛門親子に頼んだ。子の16代佐野籐右衛門は、笹部の衣鉢を継いで毎年一度の御母衣通いを欠かしたことはないという。
その2,笹部にほれ込んだ批評家小林秀雄は、桜好きで知られている。文芸春秋編集長だった薄井氏を介して笹部と会い、作家水上勉に笹部の存在を教えた。水上も笹部と会い、その人柄に魅かれ、ひたむきに桜を守り育てる人々を描いた傑作「桜守」(さくらもり 新潮文庫)として結晶した。
その3,「淡墨桜」(うすずみざくら)は、岐阜県の根屋村(現本巣市)にあり、樹齢は実に1500年という。淡墨桜は、昭和に入ってから2度枯死の危機をのりこえた。1度は戦争で放置され樹勢は衰えたが、盆栽の名人であり医師前田利行の手で見事に回生させ、満開の花を咲かせた。しかし昭和59年(1984年)伊勢湾台風による痛手でまた衰えてしまう。作家宇野千代は、淡墨桜の枯死を待つばかりの老残に心を痛めた。前田氏の遺徳に共感し、随筆で「もう一度花を咲かせたい」と訴えた。岐阜県知事にも書簡を送り、ついに宇野の熱意が行政を動かし、手厚い保護が加えられ、淡墨桜は再びよみがえった。宇野は、後に小説「淡墨の桜」をあらわした。
その4,京和菓子の老舗「末富」の3代目ご主人山口富蔵は、「桜前線」というお菓子を発案した。桜前線が野山をかけめぐるさまを、茶巾しぼりの和菓子にして命名した。花の便りが聞え始める3月上旬から店に出し、桜が咲くころに仕舞いにする。山口は、発想がわくと色鉛筆でスケッチして、色と形を記憶にとどめる。茶巾絞りの「夜桜」は、20年前、展覧会で横山大観の同名のびょうぶ絵を観てひらめいたという。
私たちは、春を待ちわびて毎年桜を愛で、各自いろいろな思いを桜に託しています。来年また美しい桜に出会えることを願って・・・。
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最後は、庭園にある「尚庵」というお店で緑と椿を眺めながらおぜんざいで一服し至福のひとときを過ごしました。
これから日本各地は、みずみずしい若葉と躑躅やショウブなどの花が咲きそろい、最も美しい季節をむかえますね。
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