『WEDGE』8月号に、「失敗を誰かのせいにするのはやめよう 会社も体も腐っていく 蔵元・寺田本家23代当主 寺田啓佐」という記事がありました。
『WEDGE』は、東海道新幹線のグリーン車に備え付けのビジネス雑誌です。
日本酒の蔵元、寺田本家に、寺田さんは25歳で婿入りしました。
それまで電化製品の販売会社に勤務していました。
「寺田本家」は、330年の歴史があり、千葉県神崎町にあります。
ちょうど日本酒が他の酒に押される時期で、婿入りの翌年1975年から売上げが落ち始めました。
寺田さんは、経営の効率化を打ち出します。
「いかに儲けて勝ち組になるか、そればかりを私は考えていました。利益を出すためなら、原価を安く抑え、手間暇かけずにコストダウンを図る。
だから、別にルール違反じゃなかったし、みんなもやっていたので、アルコールや添加物で水増しした酒を、手間を省いて造っていました」
経営は好転せずに借金がかさみ、居酒屋や蕎麦屋を開きますが、みな空回りします。
「こんな若造の下ではやっていけない」と杜氏や番頭が辞めていきました。
「お前ら何だ。自分だけが頼りだ」と、寺田さんは考え、ストレスで腹痛がし、人の問題、お金の問題、自分の体の問題、全部八方塞がりで、病院に行くと、直腸が全部壊死した状態で、即手術となりました。
35歳のときでした。
寺田さんは、病院のベッドで、自分はどう生きたいのか考えたのだそうです。
「そこで『発酵すれば腐らない』という大テーマに行き当たったんです」
自分の体も会社も「腐った」のは、発酵していなかったからだと、思い至ったのです。
「酒造りでは、麹菌、乳酸菌、酵母菌などが、自分の役目が来ると、それぞれの持ち味を発揮します。出番がないのに出しゃばったりせず、たくさんの微生物が争わずに共生しています。
そして微生物にとっては、そうすることが心地よくて楽しいからやっているだけです。『自分らしく』『楽しく』『仲良く』というのが微生物の生き方であり、自然に則った生き方です」
では、自分の持ち味が発揮でき、自分にとって心地よい生き方とは何か。
寺田さんにとっては、「人様のお役に立つ、飲んでくれた人が喜んでくれる、そんなお酒を造ること」でした。
日本酒を造るのに、米は無農薬米に、市販の乳酸を買ってきて短期で発酵させる『速醸(そくじょう)』から、『生酛(きもと)』(天然の乳酸菌で発酵させる)へと転換しました。
無農薬米は3倍の値段、手間は10倍になりましたが、インターネットの日本酒ランキングで全国50位以内(1万銘柄中)に位置するようになり、根強いファンが増え、業績は右肩上がりになりました。
「自然の法則に添って生きると神様が喜ぶ。だからツキもついてくる」
「矢印を自分に向けて、自分に問題の根源があると腑に落ちたとき、すべての問題は解決します」
その境地になるには、どん底を経験しなければ難しいですか?の問いに、
「そんなことないよ。後で気づいたのだけど、人間って愛の存在だと思うの。
優しさや思いやりがあって、人に喜んでもらえることに自分の喜びがあるのが、そもそもの人間です。
競争社会では、失うのが怖いから、愛に蓋をしているけれど、力も知恵も思いやりも、汗もお金も、持っているものを相手のために手放して空っぽになれば、いつか自分に入ってきますよ」
トラブルを、相手のせいにするのではなく、むしろ相手に悪かったなと思いやれた瞬間に、それを感じて相手が変わると寺田さんはおっしゃるのだそうです。
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効率第一の経営から、大きな変化だったと思います。
効率を知った人が、心の経営をするからこそ、人を惹きつける日本酒になれたのではと思いました。
『WEDGE』は、東海道新幹線のグリーン車に備え付けのビジネス雑誌です。
日本酒の蔵元、寺田本家に、寺田さんは25歳で婿入りしました。
それまで電化製品の販売会社に勤務していました。
「寺田本家」は、330年の歴史があり、千葉県神崎町にあります。
ちょうど日本酒が他の酒に押される時期で、婿入りの翌年1975年から売上げが落ち始めました。
寺田さんは、経営の効率化を打ち出します。
「いかに儲けて勝ち組になるか、そればかりを私は考えていました。利益を出すためなら、原価を安く抑え、手間暇かけずにコストダウンを図る。
だから、別にルール違反じゃなかったし、みんなもやっていたので、アルコールや添加物で水増しした酒を、手間を省いて造っていました」
経営は好転せずに借金がかさみ、居酒屋や蕎麦屋を開きますが、みな空回りします。
「こんな若造の下ではやっていけない」と杜氏や番頭が辞めていきました。
「お前ら何だ。自分だけが頼りだ」と、寺田さんは考え、ストレスで腹痛がし、人の問題、お金の問題、自分の体の問題、全部八方塞がりで、病院に行くと、直腸が全部壊死した状態で、即手術となりました。
35歳のときでした。
寺田さんは、病院のベッドで、自分はどう生きたいのか考えたのだそうです。
「そこで『発酵すれば腐らない』という大テーマに行き当たったんです」
自分の体も会社も「腐った」のは、発酵していなかったからだと、思い至ったのです。
「酒造りでは、麹菌、乳酸菌、酵母菌などが、自分の役目が来ると、それぞれの持ち味を発揮します。出番がないのに出しゃばったりせず、たくさんの微生物が争わずに共生しています。
そして微生物にとっては、そうすることが心地よくて楽しいからやっているだけです。『自分らしく』『楽しく』『仲良く』というのが微生物の生き方であり、自然に則った生き方です」
では、自分の持ち味が発揮でき、自分にとって心地よい生き方とは何か。
寺田さんにとっては、「人様のお役に立つ、飲んでくれた人が喜んでくれる、そんなお酒を造ること」でした。
日本酒を造るのに、米は無農薬米に、市販の乳酸を買ってきて短期で発酵させる『速醸(そくじょう)』から、『生酛(きもと)』(天然の乳酸菌で発酵させる)へと転換しました。
無農薬米は3倍の値段、手間は10倍になりましたが、インターネットの日本酒ランキングで全国50位以内(1万銘柄中)に位置するようになり、根強いファンが増え、業績は右肩上がりになりました。
「自然の法則に添って生きると神様が喜ぶ。だからツキもついてくる」
「矢印を自分に向けて、自分に問題の根源があると腑に落ちたとき、すべての問題は解決します」
その境地になるには、どん底を経験しなければ難しいですか?の問いに、
「そんなことないよ。後で気づいたのだけど、人間って愛の存在だと思うの。
優しさや思いやりがあって、人に喜んでもらえることに自分の喜びがあるのが、そもそもの人間です。
競争社会では、失うのが怖いから、愛に蓋をしているけれど、力も知恵も思いやりも、汗もお金も、持っているものを相手のために手放して空っぽになれば、いつか自分に入ってきますよ」
トラブルを、相手のせいにするのではなく、むしろ相手に悪かったなと思いやれた瞬間に、それを感じて相手が変わると寺田さんはおっしゃるのだそうです。
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効率第一の経営から、大きな変化だったと思います。
効率を知った人が、心の経営をするからこそ、人を惹きつける日本酒になれたのではと思いました。
思いました。
やっぱり人の心って、効率だけを追求しても駄目なんですよね。
心の経営、いい言葉だと思いました。
人を相手にする仕事だからこそ、心がなければ
誰のための物づくり、サービスか分かりません。
私はデスクワークですけれど、どこかに心を込めることが
出来るかも知れないなぁ、と思いました。
それがその人らしさになるのかも知れません。
寺田さんも、効率の経営で行き詰ったからこそ、いろいろなことを考えられたのだろうと思いました。
心遣いのあるサービスや物は嬉しいですね。