前回1964年の東京オリンピックの時、美貌と気品に満ちあふれたベラ・チャスラフスカの体操演技が印象的だった。著者がその後の彼女の人生について、関係者にインタビューしてまとめたのが本書である。
共産党一党独裁体制のチェコスロバキアに生を受け、その後の政治変革の波に翻弄され、家族の思いがけない不幸にも見舞われながらも自分の信念を貫いた生き方に感動を覚える。
1968年8月ソ連・東欧軍による民主化への介入に際して、改革路線を支持する「2000語宣言」に署名した彼女は断固として節を曲げない。様々な迫害を受けるもそれを貫きとおす。
89年11月ベルリンの壁が壊されソ連が崩壊、チェコもビロード革命と呼ばれる体制変換があり、彼女も復権して政府の要職に就くことが出来た。それも束の間、家族に不幸が襲う。(本書の初版は、2004年7月)。
彼女同様に信念を貫き通したルーマニア(同じく共産国)の白い妖精といわれたナディア・コマネチ(1976年モントリーオール五輪)、歌手のマルタ・クリシュヴァ(チェコスロバキア)にもインタビューしていて、これも読み応えがある。
2006年6月時点で、彼女はプラハ市内の医療氏施設を伴った老人ホームに入居していて、痩せてはいるが健康状態は落ち着いている、と、あとがきにある。