みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1196「いいなずけ」

2022-02-02 17:49:28 | ブログ短編

 父親は娘(むすめ)を前に、深刻(しんこく)な面持(おもも)ちで言った。「実(じつ)は、お前に話さないといけないことが…」
 娘は慌(あわ)てて、「ちょっと待ってよ。まさか、俺(おれ)の子じゃないとか、言うんじゃ…」
 母親は、「なに言ってるの。あなたは、あたしたちの子供(こども)よ」
「もう、ビックリさせないでよ。昨日(きのう)見たドラマで、そういうのやってたから…」
「まったく、話しは最後(さいご)まで聞くもんだ」父親は改(あらた)まって、「実は、父(とう)さんの会社(かいしゃ)の…」
 娘は飛(と)び上がるように、「倒産(とうさん)したの? どうすんのよ。あたしの学費(がくひ)は?」
 父親はため息(いき)をついた。母親が口を出した。「倒産なんかしてないわよ」
 父親は諭(さと)すように、「ちゃんと聞きなさい。実はな、父さんの勤(つと)めている会社の近くに喫茶店(きっさてん)が開店(かいてん)してな。そこの店主(てんしゅ)が、むかし、父さんと親(した)しくしてた――」
 娘は声を上げて、「愛人(あいじん)だったの?! お母さん、まさか離婚(りこん)とか考えてないよね」
 母親は、クスクスと笑(わら)い出した。父親は呆(あき)れた顔をして言った。
「そうじゃない。父さんの親友(しんゆう)だ。その親友には、お前と同(おな)い年の男の子がいてな。お前も小さいころ、何度も会ってるんだぞ。実はな、その男の子は、お前のいいなずけなんだ」
 娘はきょとんとして繰(く)り返した。「いいなずけ…。あ、あたし、そんなの聞いてないよ」
「お前、まだ好(す)きな人いないんだろ? 一度、会ってみないか。なかなかの好青年(こうせいねん)だぞ」
<つぶやき>これはビックリですよね。さて、どうするんですか? 会うだけだったら…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1195「しずく154~発砲」 | トップ | 1197「待ち人」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事