みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0429「バーチャルリアリティ」

2019-01-08 18:41:16 | ブログ短編

 涼子(りょうこ)は会社(かいしゃ)からの帰り道、見知(みし)らぬ男性に声をかけられた。その男性はいきなり彼女の手をつかむと、「君(きみ)は僕(ぼく)らの救世主(きゅうせいしゅ)だ。未来(みらい)を照(て)らす光だ。絶対(ぜったい)、負(ま)けないで下さい!」
 涼子は男の手を振(ふ)りはらい、「何なんですか? 私には何のことか…」
 その時、涼子は気づいた。周(まわ)りにいた他の人たちが、立ち止まって自分(じぶん)のことを見つめていることを。そして、誰(だれ)が言うともなく、ひそひそと声が上がる。
「救世主だ」「本当にいるんだ」「ウソ、信じられない」などなど…。
 涼子は近づいて来る人たちを見て恐怖(きょうふ)すら覚(おぼ)えた。彼女はその場から逃(に)げ出した。だが、どこまで逃げても、大勢(おおぜい)の人たちが追(お)いかけてくる。涼子は携帯(けいたい)で友達に助けを求(もと)めた。その友達は、ネット上に涼子の目撃情報(もくげきじょうほう)が流れていることを教えてくれた。だから、どこへ隠(かく)れてもすぐに見つかってしまうのだ。友達は涼子に言った。
「あたしが偽情報(にせじょうほう)を流すから、追(お)っ手がいなくなったらあたしの家まで来て」
 偽情報のおかげか、涼子は何とか友達の家までたどり着けた。友達は涼子を招(まね)き入れるとドアを閉(し)め、後ろ手にガチャリと鍵(かぎ)をかける。そして、友達は嬉(うれ)しそうに言った。
「ありがとう、あたしの所(ところ)に来てくれて。さあ、あなたのバトルを見せてちょうだい」
 部屋の中にあったパソコンにはゲームの場面(ばめん)が表示(ひょうじ)されていて、その主人公(しゅじんこう)が涼子とそっくりだった。友達は言った。「今、すっごく流行(はや)ってるのよ、このゲーム」
<つぶやき>知らない間(あいだ)に、こんなことになっちゃって。彼女は勝(か)つことができたのか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 0428「魔法の使い方」 | トップ | 0430「しずく1~芽生え」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事