みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0033「公園友達」

2017-05-18 19:19:37 | ブログ短編

 明日香(あすか)は公園(こうえん)のベンチに座(すわ)り、ぼうっとしていた。そこへ犬(いぬ)を連れた男がやって来て、
「こんにちは」と声をかけた。でも彼女が気づかないので男は横に座り、「どうしたの?」
「あっ…、いやだ。山田(やまだ)さん、いつからいたんですか?」
 この二人は公園友達だった。この公園で何度か挨拶(あいさつ)を交(か)わすうち、仲良(なかよ)くなってしまったのだ。お互(たが)いどんな仕事(しごと)をしているか知らないし、どこに住んでいるのかも聞くことはなかった。ただこの公園で会うだけの関係(かんけい)。でも、明日香にとってはとても居心地(いごこち)のいい付き合いだった。山田には、なぜか心のもやもやを何でも話せてしまうのだ。
「あのね」明日香は笑いながら切り出した。「彼と、別れたの。もう、最悪(さいあく)。彼ったら、他の女を私の部屋に入れたのよ。これまで何度も浮気(うわき)して。私、知らないふりしてたけど、もう限界(げんかい)。彼に、出てけって言っちゃった」
「そうですか。それは大変(たいへん)でしたね」山田は悲(かな)しげな顔をして、「大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」
「うん、平気(へいき)よ。私、こういうことにはなれてるの。だって、悲しくても涙(なみだ)なんか出ないし…。あーあ、何で私には変な男ばっかり寄(よ)ってくるんだろう」
「僕(ぼく)も変な男かもしれませんね。こうして、あなたの悩(なや)みごとを聞いてるんだから」
「あっ、山田さんは違いますから…」と明日香は笑ったが、なぜか涙があふれてきた。
<つぶやき>辛(つら)い時、何でも話せる人がいるといいですね。見つけるのは大変ですけど…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 0032「戦場の架け橋」 | トップ | 0034「幻の美容師」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事