１００１「進化したい」

「俺(おれ)、進化(しんか)しようと思うんだけど…」
　変なことを言いだした男。それを聞いた女は首(くび)をかしげた。男は続けた。
「だから、進化だよ。猿(さる)が人間になったように…、俺も、別のものになろうと思うんだ」
　女は、「ちょっと待って。分かんないなぁ。なに言ってるのか…」
「だから、この俺じゃない、別のものに進化するんだよ」
「あのね、進化ってすぐに変われるもんじゃないのよ。進化には何万年とか、すっごく長い時間がかかるの。それ、分かって言ってるの？」
「えっ、そうなのか？　だったら…、俺は、どうすればいいんだよ…」
　女は呆(あき)れて、「ほんとバカね。で、あなたは、何になりたいわけ？」
　男は言いにくそうに、「だから…。お前に…ふさわしい男にさ。俺…、お前に、ぷ、ぷろ…ぽー、しようと思って――」
「はい？　何それ。まったく、しょうがないわね。だったら、ちゃんと勉強(べんきょう)しなさいよ。言っとくけど、あたし、バカな男って好きになれないから」
「べ、勉強かぁ…。俺の一番苦手(にがて)なものじゃないか…。う～ん、でもなぁ…」
「その程度(ていど)？　あたしにプロポーズするんでしょ。だったら死(し)にもの狂(ぐる)いでやりなさいよ」
「そ、そうだな。でも…、勉強って…何をすればいいんだよ」
＜つぶやき＞何だかんだと言っても、女は男のことが気に入っているのかもしれませんね。
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