私は結婚(けっこん)して、彼と二人で暮(く)らすことになった。――新婚(しんこん)生活はとても楽しくて、私は幸せを感じていた。でも、しばらくして、私は彼の変(へん)なところに気がついた。
彼は、会話(かいわ)の端々(はしばし)で、〈で?〉を付けるようになったのだ。どうやら、何かを求(もと)めているようなのだが、私にはそれが何なのか理解(りかい)できなかった。適当(てきとう)に返事(へんじ)を返すと、彼は何だが不満(ふまん)そうに黙(だま)ってしまう。どうしたのって訊(き)いても、ちゃんと答えてくれなかった。
その理由(わけ)が何となく分かったのは、彼の実家(じっか)へ二人で遊(あそ)びに行った時だ。彼はまっ先(さき)にお母さんのところへ行って、まるで子供のように傍(そば)にくっついていた。彼が、これほどのマザコンとは今まで気づかなかった。
彼は、お母さんにいろんなことを…、細々(こまごま)としたことまで話していた。私といる時よりもおしゃべりだ。何で? 何で、そうなるのかなぁ。ちょっと嫉妬(しっと)を感じた。
お母さんは、食事の支度(したく)の手を止めるわけでもなく、彼の話を聞いていた。そして、〈そうなの、すごいね〉〈やるじゃない〉〈頑張(がんば)ったね〉と、彼のことを褒(ほ)めていた。そのたびに、彼は嬉(うれ)しそうな顔をした。
これだ――。彼は、私にも褒めてもらいたかったんだ。彼が求めていたのはきっとこれなんだ。私は納得(なっとく)し、これからのことを考えると、面倒(めんど)くさいと思ってしまった。
<つぶやき>彼の意外(いがい)な一面(いちめん)を知っちゃたんですね。それを良しとできれば、この先(さき)も…。
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