みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0812「するのか?」

2020-02-21 18:22:32 | ブログ短編

 彼は、何時(いつ)もなら行かないような高級(こうきゅう)レストランに彼女を連(つ)れて来た。二人は付き合い始めて、もう数年たっている。そろそろ…、あれをしてくれるんじゃないかと、彼女の期待(きたい)は高まっていた。でも、彼女はそういうことを顔に出すようなことはしなかった。
 食事(しょくじ)をしている間、彼は時々(ときどき)もぞもぞとテーブルの下へ手をやっていた。何をしているのか、彼女は気になった。さり気なく様子(ようす)をうかがうと、彼の上着(うわぎ)のポケットが膨(ふく)らんでいるのを発見(はっけん)した。彼女は、心の中で――。
〈これは、もしかしたら指輪(ゆびわ)? 婚約(こんやく)指輪を用意(ようい)してるのね。そうよね、それがなくちゃ話しにならないもの。でも、大丈夫(だいじょうぶ)かしら? 私の指(ゆび)のサイズ分かってる?〉
 彼と目が合った。彼女は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んで、「これ、美味(おい)しいわね」
「そうだろ。前に来たとき、とっても美味(うま)かったから、君(きみ)もきっと気に入ると思って」
「前に…? えっ、誰(だれ)と? いつ来たのよ? まさか一人ってことないわよね」
「ああ…、友だちだよ。友だちと来たんだ。もう、何年前だったかな…」
「このお店、去年(きょねん)開店したのよ。私、知ってるんだから…。で、誰と来たんだって?」
「だから…、友だちだよ。おかしいなぁ、去年だったかなぁ」
 気まずい空気(くうき)が一瞬(いっしゅん)流れた。でも、彼女はそれ以上追及(ついきゅう)しなかった。だって、あれがあるから…。彼女は満面(まんめん)の笑(え)みをうかべた。それを見た彼は――、ちょっとびびってしまったかもしれません。さて、彼はあれをするのでしょうか?
<つぶやき>ここは、もらうものをもらって…。それから、友だちの話を聞きましょうね。
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