徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:中山七里著、『逃亡刑事』 (PHP文芸文庫)

2023年05月22日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行
商品説明
県警内部、全員敵⁉
「どんでん返しの帝王」が贈る、息をもつかせぬノンストップ・ミステリー。
単独で麻薬密売ルートを探っていた刑事が、銃で殺された。千葉県警刑事部捜査一課の高頭班が捜査にあたるが、事件の真相にたどり着いた警部・高頭冴子は真犯人に陥れられ、警官殺しの濡れ衣を着せられる。
自分の無実を証明できるのは、事件の目撃者である八歳の少年のみ。
少年ともども警察組織に追われることになった冴子が逃げ込んだ場所とは⁉ そして彼女に反撃の手段はあるのか⁉

施設で日常的に虐待を受けている8歳の少年・猛が、麻薬中毒の治療中である母の入院先の病院を目指して夜中に家出することで、警官殺しの現場を目撃してしまいます。
高頭冴子警部は少年に事情を聴き、似顔絵を作成しようとしますがうまくいかず、少年が帰ろうとするときに警察署の廊下ですれ違った男、それが犯人だった。少年の証言だけでは足りないため、証拠固めをしようと動き出すが、相手の方が上手で、冴子は麻薬押収品の横流しと警官殺しの濡れ衣を着せられてしまう。そのまま冤罪で追い詰められないようにするために逃亡を図り、大切な承認を口封じから保護するため、少年を連れて行く。
協力者は、他作品でもお馴染みの宏龍会の渉外委員長・山崎。
潜伏先は日雇い労働者やホームレスが多く、警察署が焼き討ちに遭うような治安の悪い大阪の一地区。
そこのホームレスたちの生態描写が興味深い。反権力の彼らは、警察に追われる冴子と猛を受け入れ、何くれと手助けしてくれる。

この作品の対立構造は、千葉県警組織対冴子・猛&ヤクザとホームレスという変則的な様相を呈しており、それにより警察内部の腐敗が浮き彫りになります。しかし、腐敗しているのは一部だけで、組織内には冴子の主張を信じる者、少なくとも耳を傾け、きちんと調べようとする者も存在しており、警察もまんざら捨てたものではないと思わせる読後感です。



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