「共喰い」田中慎也
今さらですが感想です。
ネタバレ満載です。
ストーリーとしては、本当にむごい。
絶対に映像化してほしくありません。
いくら芝居でも、演じる女優陣がどの人もかわいそうすぎる。
女の人には特にきつい話だと思う。
だから、私はこの本、誰にもお勧めしません。
性的にえぐい場面を受け付けない方は、この先のレビューも
読まないほうがいいと思います。
概要だけ聞いていたら私も絶対に手を出さなかったであろう、
忌むべき内容です。
が、
私はなぜか、読んでしまったのです。
「うへえ、なんてひどい話だ」と思いながらも、
途中で放り出すことなく、結末を知りたくて最後まで読まされてしまったのです。
そこが、田中さんの作家としての才覚なんだろうなと思いました。
ひとことで言って、「ぬらぬらした小説」。
ぬらぬらしたものばっかり出てきます。
うなぎもカタツムリも、殴られて血を流す女たちも、お父さんや17歳の主人公の性器も、
みんなぬらぬらしています。
そして締めくくりに生理の話。
お父さんは女の人を殴ります。DVというより、性癖です。
私は「どうして琴子さん(現妻)も仁子さん(元妻)もそれを受け入れているんだろう」
ということがずっと不思議でした。そのあたりはあまり心理描写がないので
私にはよくわかりません。そういう人もいるのかもしれない、と思います。
琴子さんは妊娠をし、お父さんから逃亡します。
子供を守るためです。
仁子さんは二度目の妊娠をしたときに堕胎していますが、
これも、人間に触られた赤ん坊を食べてしまうウサギみたいな、
母親の本能のような行動に感じます。
「あいつの子供としてこの世に生を受けないように」葬ってしまうのです。
仁子さんは、最終的にお父さんを殺してしまいます。
きっかけは、お父さんが主人公のガールフレンドに手をかけたことです。
仁子さんは、自分にされた仕打ちよりも、ずっと許せなかったのだと思います。
全世界の女を代表して、仁子さんはお父さんを「成敗」したのです。
私はこの小説の誰にも感情移入ができませんでしたが、
読み終わってから数日のあいだ、登場人物それぞれの気持ちを
思い巡らせていました。
それくらい、あとを引く小説でした。
読後感がさわやか、とかいうのではぜんぜんないのですが、
読書をしたな、という充実感がありました。
いつも読ませていただいています。
ねねこと申します。
実は私もあんな内容だとは
詳しく知らずに読んでしまったのです。
下関の方言で書かれていると
聞いていたし
受賞のときのいろいろが話題になってたので
なんとなく…
ストーリーだけでなく
風景描写もなにもかもが重くて暗いと感じました。
最後まで読んだけど最後の最後が
いまいち理解できなかった。
私の読解力不足なのですが
読み返す気にはなれない不思議な作品です。
女性は好きになれない作品だと思います。
コメントありがとうございます。
正直に言って、あの受賞式が取り上げられなかったら
私は本を手にとることもなかったかと思います。
(現に他の受賞者の本は読んでない)
田中さんにはそんな狙いはなかったと思いますが宣伝効果はあったでしょうね。
この時代の日本をふつうに38歳で生きている男性に
書ける話ではないなぁと思いました。
ネットも携帯も持たない、働いたこともない、
ただただ(おそらく昔の)本を読み漁り
小説を毎日書き続けた人の作品だと思います。
良い悪いではなくて、田中さんだけの中で
世界が完結している気がします。
女性にはつらい話ですね。
仁子さんの「たくましさ」がなおさら痛いです。