みちくさ茶屋

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。

女川・神輿担ぎ 後編

2014-05-15 | people
前編からの続き。

そんな感動的な出来事ばかりではない。
歩いていて気になったのは、ゴミだ。
明らかに最近捨てられた空き缶、お菓子の袋…
挙句の果てに私は道端のガムを踏んでしまい、ネトネトした足の裏を引きずりながら、
「こんなところまで来てガム吐くヤツがいるのか!」と本当に腹立たしかった。けしからん。
よそから来る人間がポイ捨てするのか、現地の人間なのか…定かではないが、住人はただでさえ町の復興に手をかけている真っ最中なのに、さらにこんな「ゴミ拾い」まで強いられているのである。
熊野神社の神様、ポイ捨てするような不届き者には、罰として口内炎のひとつふたつ作ってやってください。

昼食は、集会場にて。女川のお母さんたちが作ってくださったサンマのつみれ汁が、声を上げてしまうくらい絶品だった。
「このつみれ汁はここでしか食べられないんだろうなぁ」と惜しむように食べた。
祭りを終え、直会(なおらい)では新鮮なお刺身をたくさんいただいた。
ボランティアに来てこんなご馳走をいただくなんて、いいのだろうかと思うくらい美味しかった。
そのうえ、あのサンマのつみれ汁がまた出てきたので(大量に作ってあったらしい)狂喜した。
ありがとう、女川のお母さんたち。

ひとり参加の女性は私の他に2人いらして、直会までにある程度仲良くなっていた。3人で同じテーブルについていると、主催者数人から、「ひとりでよく参加されましたね!」というようなことを言われた。
私も他のふたりも、基本的にひとり行動がまったく苦でない(むしろ楽なことも)タイプなのだが、私の場合は「勢いで申し込んでしまった」というところが大きい。後から「あ、ひとりだけどダイジョブかな」と思わなくもなかったけど、「まあ、こういうところに集まってくるんだからきっとみんないいひとだ」という、いつになく楽観的な気持ちになれた。

友達や家族と一緒に来ていたら、それはそれで楽しかっただろうと思う。ただ、今回についていえば、私はひとりで参加できたことにとても意義があった気がしている。
ひとり参加同士、とても深い話ができたからだ。違う出会い方をしていたらできなかったかもしれない。

宿泊は「エルファロ」。


女川の復興シンボルでもあるトレーラーハウス型の宿泊施設である。


部屋の中。ひとり参加3人で相部屋だった。
私はアミダでロフトに。ロフトは高所恐怖症の人にはこわいかもしれないけど、下のベッドより暖かかったらしい。


朝食はこちらで。
デッキではコーヒーの無料サービスもあり。


翌日4日。
かまぼこの「高政」で工場見学。おもしろかった。


お店が併設されていて、試食しまくり、お土産をたくさん購入。
高台にある高政は運よく大きな被害に遭わず、町の復興を大きく支えている。


高政の駐車場に貼ってあった。
「おだづなよ」は「ふざけんな」の意。
忍耐強い東北のひとが「ふざけんな!」と勢いよく前を向いている。
このキャッチフレーズにはいろんな意見もあるようだが、私はすごく、いい言葉だと思った。


帰りのバスで、実際に被災されたSさんという名取市出身の男性のお話を聴くことができた。
PTSDと闘いながら東京に避難してきているSさんが、体験を話すのはとてもつらいことだったと思う。
それでも私たちに一生懸命伝えようとしてくださったその想いに、厚く感謝したい。

バスの中でご自身のことを語っていただき、私たちは全員でいったん名取市閖上に降りた。
テレビの報道で繰り返し放映されたあの場所だ。

「ここでは、写真を撮っていただいていいです。
聞きたいことがあったら、わたしに聞いてください」

Sさんにそう言われて、私はスマホのカメラを風景にあてた。
シャッターを押すことができなかった。
スマホ画面に切り取られた小さな枠の中には、なにひとつ、残せるものはないと思った。
私が今見ているものと、スマホ画面に映ったものは、まったく違う景色だったからだ。

そしてSさんに、聞きたいことはたぶんたくさんあった。
でも何も言葉にならなかった。

私は、40歳まで生きないだろうと思っていた時期がある。

43歳の私が今、こうして生きていて、Sさんも今、こうして生きていて、
同じ空間で大切な時間を、いっしょに過ごしている。
そのことがなんだかとてつもなく尊いことに思えて、会えてうれしい、ありがとう、そんな気持ちでいっぱいになった。

「自分に何ができるだろう?」
その問いの答えは、今のところ、
「やっぱり何もできない」
としか言えない。それが正直な気持ち。
無力な自分と、あらためて対面した。
そのことに落ち込んではいない。しっかり受け止めている。

ただ、今回、神輿担ぎに参加したことで、私にとって宮城は、女川は、特別な場所になった。
そして、大好きになった。もっと仲良くなりたいと思った。
空がきれいで、花がきれいで、タイルアートが素敵で、海の幸がおいしくておいしくて。
私が触れることのできたのは被災地のほんのごく一部だけれど、
東北の人たちには、笑っていてほしい。今はただ、そう願っている。


最後に、強く感じたこと。
ボランティア参加している人たちにも、それぞれの事情、それぞれの想いがある。
当たり前だ、人生だもの。
Sさんはお話の締めくくりに、とても大事なことを話してくださった。

「みなさんにお伝えしたい。どうか、無理はしないでください。ご自身の生活を守ってください。
その中で、ほんの少し、ほんの少し… 時間や気持ちに余裕がありましたら…
私たちに分けて下さったら、こんなにうれしいことはありません」


その言葉を、きちんと胸に留めていたいと思う。

私は今回、たまたまタイミングよく、この企画に参加することができた。
でもそれは、本当に「めぐりあわせ」のようなものだったと思う。
「現地に行くこと」がイコール「たいそうなこと、ご立派なこと」では全然ない、それも実感した。
次回、いつどんな形で現地に足を運べるかわからない。
でもそれでいい。無理はしない。自分の生活を守る。
そして、慌ただしい日々の中でふと、東北だけじゃなく「誰か」のことを、気にかけている自分でいたい。


女川名物、さんまパン♪
生地にさんまが練り込んであり、さんま風味なんだけど、どことなくほんのり甘い。
すごい日持ちするのでびっくり。オススメです。


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